学名は、採集地の村の名前にちなんで、ランダンギメダカ(学名:オリジアス・ランダンギエンシスOryzias landangiensis)と名付けられました。この新種は、最も近縁のドピンドピンメダカ(学名:オリジアス・ドピンドピンエンシスOryzias dopingdopingensis)に比べ、(1)胴部が長く、(2)体高が低いなどの特徴で区別されます(図3)。ゲノム上の8,854遺伝子座の塩基配列の情報からも、これら2種は遺伝的にも大きく分化した完全な別種であることがわかりました(図4)。
興味深いことに、ランダンギメダカが生息するチェレカン川と、ドピンドピンメダカが生息するドピンドピン川は、河口域で接する一つの水系に属する河川です(図1右)。つまり、ランダンギメダカとドピンドピンメダカは、河口域を介して2つの川を往来できる状況に理論的にはあります。にもかかわらず、これら2種は、5万年以上もの間ほぼ交雑していないことが、8,854遺伝子座の塩基配列情報を用いた集団動態履歴の推定で明らかになりました(図5)。
5万年前というと、海水面が100メートル以上も下がったとされる、最終氷期最盛期(2万6千年〜1万9千年前)よりはるか昔です。海水面が100メートル下がれば2つの河川は淡水域で接続していたでしょうから、現在の接続部に広がる汽水域が、ランダンギメダカとドピンドピンメダカの往来を妨げるバリアになっているとは考えられません。
5万年前というと、我々ホモ・サピエンスがアフリカから出てきたかこないかの時期に相当します。チェレカン川とドピンドピン川という目と鼻の先ほどの距離にいる2種のメダカの往来を、そんなにも長い間妨げてきたものは一体何でしょうか? それを明らかにすることよって、この島にメダカ科魚類の多様性のホットスポットが形成された謎に迫れるものと期待されます。
<論文情報>
(1)論文タイトル:Deeply divergent freshwater fish species within a single river system in central Sulawesi
(2)雑誌名:Molecular Phylogenetics and Evolution
(3)著者:Ilham V. Utama, Ixchel F. Mandagi, Sjamsu A. Lawelle, Kawilarang W. A. Masengi, Keiichi Watanabe, Naomi Sawada, Atsushi J. Nagano, Junko Kusumi, Kazunori Yamahira
(4)DOI番号:10.1016/j.ympev.2022.107519
(5)アブストラクトURL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1055790322001324
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