Q. 国際学会参加のための研究資金はどう調達するか? 松川:大学院生時代、2011年に神戸で行われた国際犯罪学会(World Congress of Criminology)に参加した時、日本国内の参加者に対する助成があったので申請した。また、過去には指導教員の研究費枠で国際学会に同行したこともある。私としては機会を逃さないために、学会報告にはお金を使おうと思っている。 相良:初めて参加した国際学会は、2015年にドイツで行われたヨーロッパ犯罪学会(European Society of Criminology)だった。その時には科研費が獲得できていたので、渡航費に充てることができた。科研費は研究課題の内容はともかく、申請書類の書き方にポイントがあるので、その点についても若手研究者の皆さんと共有していきたい。 相澤:近年は所属機関の研究費をベースに国際学会に参加してきた。また、研究費をもっていない院生時代には、先生方の科研費の協力研究者に加えていただいて、学会に限らず海外に行く機会をもらってきた。先生方はぜひ若手研究者に目をかけてあげて欲しい。
Q. 国際学会の参加で生まれたコネクションとその後の展開は? 丸山:自身の発表内容について後日問合せが来るなど、少しずつ興味を持ってくれる方が増えていった。また、はじめはミーハーな姿勢で参加しても良いと思う。有名な先生であっても積極的に話しかけていけば、気さくに若手の質問に答えてくれることがある。 相澤:私は消極的なタイプなので、自分から話しかけていくことがなかなか出来なかった。ただ、同じ国際学会に3回続けて参加したところ、さすがに顔見知りになって、韓国の若手研究者が来日した時には一緒に食事に行くようになった。参加し続けることで、繋がりが深まることもあると思う。 相良:2019年に参加した香港の学会(The 1st Asia Regional Meeting of the International Society for the Study of Drug Policy)はアットホームな雰囲気で交流が進み、各国の状況を知る上で非常に為になった。 ブルースター:確かに学会によって雰囲気は随分違う。 丸山:コネクション作りについて、15年ほど前に浜井浩一先生(龍谷大学法学部)に教わった裏技がある。欧州で有名な研究者でもアウェイのアメリカの学会では、一人ポツンとしている時があるので(逆もまた然り)、そこで話しかけると気さくに対応してくれる、というものだ。実際にトライしてみると、たしかに良い反応が得られた。
Q.国際学会で人気の研究領域、日本との違いは? 松川:日本の学会と海外の学会とでテーマの違いを強く感じる。たとえば、私が属する災害に関する研究領域では、日本はこれまで理工(土木)系が報告の中心だったが、近年は社会科学領域がようやく注目されるようになった。一方、アメリカの同領域の学会では社会科学の報告が中心で、「災害=社会問題へのアプローチ」という捉え方が普及している。そうした点でも、ギャップを感じる。 丸山:海外の犯罪学領域の学会で驚くのは、同時に20、30のテーマセッションが行われるので、自分が興味を持つテーマセッションを見つけやすい状態になっていること。たとえばDPA(Drug Policy Alliance)が主催する薬物合法化のカンファレンス(International Drug Policy Reform Conference)の「薬物合法化」のテーマセッションの中には、研究者でありドラッグユーザーでもある人々が円陣を組んで語るというものも開催され、日本ではまず目にできないようなもので、とても興味深かった。
Q. 過去の自分へのアドバイス、次の国際学会への参加に向けての意気込みは? 相澤:過去の自分へ伝えたいのは「(国際学会へ)はよ行け!」ということ。2016の初参加の時に感じたことを、もっと若いうちに体験できれば良かった。 相良:大学院生の時に横浜で行われた社会学領域の国際会議(The 18th World Congress of Sociology)に参加しなかったことを未だに後悔している。学生や若手研究者には資金面の懸念があると思うが、「ホームアドバンテージがある時には参加すること」をおすすめしたい。尻込みせずに自分の発表をしっかりとして、その反応を見てみることが必要。 都島:現在のような大学教員としてではなく、「学生の身分の時に国際学会に参加したら良かった」と思う。資金面については、指導教員に相談することができるかもしれない。
また、プレゼン資料については、海外の機器によってパワーポイントが文字化けしてしまうことがあるので、PDFデータを持参することを強くおすすめしたい。 松川:過去に参加した学会に関して、1つずつもっと丁寧に準備をしておけば、相手に伝わるような報告や、議論を深めることができたように思う。国際学会で発表するハードルはあるが、海外は学術的な広がりのレベルが日本よりも高く、国際的な視点を獲得できる貴重な機会だと思う。異なる視点の獲得や経験を多く積むことが大事なので、これから国際学会での初報告を目指す学生には、とにかく「頑張れ!」と言いたい。 丸山:「迷ったらやる!」ということを若い方々に伝えたい。また、やはり誰しも自分の学会報告に対しての反応が無いと寂しいものなので、大学院生や若い人には他人の報告にも積極的に質問やコメントするなど、どんどん参加して自らコミュニケーションをとって欲しい。
▼宮澤会長からのアドバイス
(丸山さんが指摘された通り)前提となる日本の状況や文化的背景が理解されていないことには、国際学会では報告が理解されにくい状況がある。現状として、日本の犯罪学研究が国際的に流通していない、とりわけ英語での出版点数が少ないという問題点がある。最近では、多くの出版社がアジアの研究成果を発表するようになってきており、アジア犯罪学会で最優秀図書賞に選出された研究者たちは、アメリカやイギリスで執筆した博士論文を何年もかけて改定して単行本として出版している。しかし日本人がいきなりその段階に上がることは難しい。日本の状況をデータとして世界に共有するために、若手世代の研究者には英語論文の執筆・投稿を強くおすすめすると同時に、学術論文として出版することを提案したい。
アジア犯罪学会では、Asian Journal of Criminologyに掲載されている論文の中から最優秀のものを、1000ドルの賞金付きで表彰している。今年は日本の研究者の論文が受賞したが、日米でデータを集めて既存の犯罪学理論に対して発言するという内容だった。日本の理論やデータだけではなく、他国の理論やデータとどう関係があるかまで言及すると、海外の研究者にももっと読んでもらえるのではないか。