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【本件のポイント】
・農学部4学科の有志がそれぞれの視点でおこなった「姉川クラゲ」に関する研究報告をあわせて実施
・姉川流域で食べられていた「姉川クラゲ」を練り込んだ蕎麦の試食会
・そば粉に姉川クラゲを加えるとそばのコシが強くなり、美味しいそばができることが判明

 龍谷大学農学部(滋賀県大津市)は、2018年から4学科を横断して「『姉川クラゲ』配合食品の商品化に向けての取り組み」という研究プロジェクトを始動させました。
 「姉川クラゲ(イシクラゲ)」とは、ネンジュモ科に属する陸棲ラン藻類の一種で、湿った地面に自生するワカメのような生物です。姉川流域(滋賀県)で過去に食用にされた記録が残るため「姉川クラゲ」と呼ばれていたこともあります。しかし、現在は地元の方の多くは食べておらず、消えつつある食文化と言えます。
 一方、「姉川クラゲ(イシクラゲ)」は、植物界のクマムシと言われるように過酷な環境状況で生き延びることができ、また、多くの生理活性物質を有しています。そのため地域資源として再活用できないかと考えたことが、配合食品の開発を目指した本プロジェクト立ち上げのきっかけです。さらに、農学部では4学科の1、2年生が学科の垣根を越えて実習を行う「食の循環実習」が開講されおり、それを研究レベルでも拡張し、学部教育につなげたいという意図もあります。
 この度、食品栄養学科朝見准教授による研究によって、「姉川クラゲ」の特性を活かし、コシの強い蕎麦の開発に成功しました。試食会当日は、「姉川くらげそば」の解説や試食、これまでのイシクラゲに関する調査・研究について、遺伝子解析、栽培実験、食味検査、蕎麦の特性、栄養分析、食文化・歴史など文理を融合した多角的な視点から報告します。
 ※一般の方の参加も歓迎します。

1.日時:2020年2月18日(火)11:00~(1時間程度)

2.場所:龍谷大学瀬田キャンパス 9号館1階オープンキッチン

3.内容:「姉川くらげそば」の試食会およびその研究報告

4.説明者:
 農学部植物生命科学科    教授  古本 強
 農学部資源生物科学科    講師 玉井 鉄宗
 農学部食品栄養学科     准教授 朝見 祐也
 農学部食料農業システム学科 講師 坂梨 健太
 農学部学生有志

問い合わせ先 : 学長室(広報) 橋本  Tel 075-645-7882


ソーシャルインクルージョンユニットの研究会として
下記の通り、研究会を開催いたします。

参加を御希望される方はLORC(lorc@ad.ryukoku.ac.jp)に
2月15日までにお知らせください。

日時:2020年2月17日(月)16:00〜18:00
場所:龍谷大学深草キャンパス 和顔館4階会議室2
講師:窪田亜矢先生(東京大学大学院工学系研究科教授)
タイトル:「計画論における反実仮想の可能性 〜東日本大震災とその後の経験とは何か?」


 ボランティア・NPO活動センターでは、ボランティア活動など課外活動に取り組む学生向けに「ボランティアリーダー養成講座」を年間2回実施しています。2020年2月3日(月)に今年度第2回目として、公益財団法人京都YMCA 中村 彰利氏を講師にお迎えして、学生団体のマネジメントについて、ワークショップを交えながら学びました。

 ワークショップの前半は、グループに分かれて「自分たちのチームを運営する上での悩みや困りごと」についてディスカッション。リーダーに負担が集中する、メンバーの活動に対する熱量やモチベーションがちがう、活動に消極的なメンバーにどのように声がけしていけばいいのか、などの意見が出されました。
 後半は、前半に挙げた困りごとに対する解決策を考えました。中村氏から、京都YMCAでの経験をふまえた工夫、取り組みをお話しいただきました。あげていただいたチーム作りチェックポイントは、今後の活動に生かすことができることでしょう。
 チーム作りで大切なこと(抜粋)
 ○役割を振ること
 ○続けること
 ○楽しめること
チーム作りチェックポイント(一例)
 ○メンバー各自に役割がありますか?
 ○先輩は後輩を支えていますか?
 ○互いに信頼できていますか?
 

【参加学生の感想】
・チームにおける先輩の立場について学びがあった。来年度は後輩が入ってくるので、後輩が過ごしやすい場所をつくっていきたい。一人ひとりの積極性、お互いの信頼関係がチーム作りには大切だということがわかった。(文学部1回生)
・ボランティア・NPO活動センターにおける日ごろの悩みを出し合い、共感し合えた。また、解決のためにあれやこれやとメンバーで考えるのが楽しかった。(国際学部3回生)
・普段、活動に追われてしまって、「チームづくり」をおろそかにしていることに気が付いた。自分の所属するグループ、団体について振り返って考えることができた。(農学部1回生)
・この一年、上回生として悩んできたことの解決策がたくさんあった。ほかのメンバーの課題も自分の悩みに置き換えて考えることができた。来年は後輩を支える立場として、自分のすべきことを考えていきたい(社会学部2回生)







2020年1月25日、本学深草キャンパス和顔館において、「龍谷大学ATA-net研究センター キック・オフ・シンポジウム」が、ATA-net JST/RISTEX定着支援事業採択記念として開催されました(犯罪学研究センター共催)。
【イベント概要>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-4692.html
【第1部レポート>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-5035.html

和顔館B210で行われた第2部では、「メディアスクラムとソーシャル・インクルージョン〜当事者の位相、支援者の位相、協働の位相〜」をテーマに、課題共有型(課題解決指向型)円卓会議“えんたく”*1が行われました。

はじめに、石塚伸一教授(本学法学部、犯罪学研究センター長、ATA-net 代表) による趣旨説明が行われました。石塚教授は、「私たちは、アディクションや依存症問題を『孤立』の問題と考えている。そのため、大勢の人が寄り添い、問題を抱えている当事者と同じ目線で考える機会が必要だ。本日の”えんたく”では、多様な立場の人が関わり、お互いが共感しあえる場を作り上げていきたい」と述べました。

“えんたく”のセンターテーブルには、司会の石塚教授をはじめ、後藤弘子教授(千葉大学/摂食障害・クレプトマニア班)、藤岡淳子教授(大阪大学/性問題行動班)、加藤武士氏(木津川ダルク/保護司/ATA-net研究センター招聘研究員)、近藤恒夫氏(日本ダルク/ATA-net 顧問)、古藤吾郎氏(日本薬物政策アドボカシーネットワーク事務局長/ソーシャルワーカー)が集まりました。



今回の“えんたく”では、薬物使用や依存に対するメディアスクラム*2、とソーシャル・インクルージョンの実現について議論されました。現在、日本では、薬物使用者に対する厳しいまなざしや批判の声が絶えません。メディアの報道では、薬物を使用した「行為」にばかり焦点が集まります。しかし、当事者がなぜそうなってしまったのか、薬物使用の「原因」や「背景」について社会の側が思い馳せることができるような情報や機会が十分ではありません。薬物使用の当事者は、自分の悩みや苦しみが周囲に理解されず、結果として社会で孤立してしまう。そうすると適切な支援が受けられず、再び薬物や行為に依存するようになるといった負の連鎖に陥ってしまいます。
センターテーブルの登壇者の話を通じて、「どうすれば一人でも多くの人が薬物使用の背景にある問題に気付き、当事者に手を差し伸べることができるか」ということが課題に挙がりました。


石塚伸一教授(龍谷大学/同ATA-net研究センター長/ATA-net 代表)

石塚伸一教授(龍谷大学/同ATA-net研究センター長/ATA-net 代表)


近藤恒夫氏(日本ダルク/ATA-net 顧問)

近藤恒夫氏(日本ダルク/ATA-net 顧問)


後藤弘子教授(千葉大学/ATA-net摂食障害・クレプトマニア班)

後藤弘子教授(千葉大学/ATA-net摂食障害・クレプトマニア班)


藤岡淳子教授(大阪大学/ATA-net性問題行動班)

藤岡淳子教授(大阪大学/ATA-net性問題行動班)


加藤武士氏(木津川ダルク/保護司/龍谷大学ATA-net研究センター招聘研究員)

加藤武士氏(木津川ダルク/保護司/龍谷大学ATA-net研究センター招聘研究員)


古藤吾郎氏(日本薬物政策アドボカシーネットワーク事務局長/ソーシャルワーカー)

古藤吾郎氏(日本薬物政策アドボカシーネットワーク事務局長/ソーシャルワーカー)

こうした現状課題を踏まえて、加藤氏は、当事者の目線から薬物依存に陥った体験談を語りました。加藤氏は「薬物を使用する仲間からの誘いを断ち切れなかった」と振り返りました。薬物を使用することが危険な行為と分かっていても、当時の自分にとって、薬物を使用する仲間との関係が居場所になっていたと説明しました。
加藤氏は「家庭でも社会でも安心できる場所がなく、孤立していたことが問題だった。人は誤って犯罪のコミュニティに入ってしまうと、なかなか抜け出せない。薬物依存から回復するには、薬物だけでなく、自分にとって悪影響を及ぼす関係も断ち切らなければならない」と述べました。
一方で、加藤氏は「薬物依存から回復するにあたり、居場所となったのがダルクであった。つまり、人は生きていくうえで、安全で安心に生活できる居場所が欠かせない。その確保には、どうすれば良いか考えることが必要ではないか」と問題提起しました。

その後、フロア参加者が3人1組のグループとなって、「あなたにとって、安心で安全な居場所は?」をテーマにディスカッションし、意見を用紙にまとめました。回収された用紙は沢山のアイデアで埋め尽くされていました。たとえば、「あるがままの自分を受け入れられ、分かち合える場所」や「年齢・性別関係なく同じ思いを持つ人たちの集いの場」、「信頼できる人間関係」などのアイデアが挙がりました。


※画像はオーディエンスから寄せられた紙の一部

※画像はオーディエンスから寄せられた紙の一部


“えんたく”の結びでは、各登壇者が「薬物使用の非犯罪化」、「国を挙げての治療支援」など、具体的な薬物政策について言及しました。しかし、大きな政策の実現には、まず人と人とが対話を重ね合うこと、そして、社会の中で実現できそうなことから一つずつ取り組む姿勢が大切です。登壇者から、一人ひとりが当事者意識を持ち、様々な角度から薬物問題、依存症問題を議論することを呼びかけ、”えんたく”は大盛況に終わりました。


閉会式では、西村直之氏(認定NPO法人RSN/(一社)日本 SRG 協議会代表理事/ATA-net ギャンブリング班)、橋元良明氏(東京大学/ATA-net インターネット・携帯電話班)、横田尤孝氏(NPO法人アパリ顧問/弁護士/長島・大野・常松法律事務所顧問/元最高裁判所判事/元法務省矯正局長・保護局長/ATA-net 顧問)によるあいさつがありました。


イーサン・ネーデルマン(Ethan A. Nadelmann)氏

イーサン・ネーデルマン(Ethan A. Nadelmann)氏

そして、イーサン・ネーデルマン氏に再びご登場いただき、「本日の“えんたく”は大変刺激的だった。誰もが薬物を使用した人間に対し、攻撃することのない社会に変わることを願っています」という言葉で本シンポジウムは締めくくられました。

参加者のアンケートでは、以下のコメントが寄せられました。
・今まで薬物とは、小・中・高の授業ぐらいで触れることしかなかった。そのため、自分にとって薬物とは、ほど遠い存在だった。しかし、イーサンさんの講演以外にも、“えんたく”で実際に施設で暮らしている人と対話ができた。普段では絶対できない経験をすることができた。
・イーサンさんの講演で、「欧米では福祉が充実しているので、非犯罪化支援につなげようとした」発言しているのが印象的だった。今の日本で福祉に任せて大丈夫なんだろうかと思い、福祉家として見直す機会となった。
・ニコニコ動画で、一般市民に伝えていくのはすごいと思った。依存症という言葉で限定せず、障害と社会モデルとして捉える。薬物使用を自己責任ではなく、社会法理として捉えることが自然だと思う。医療者や専門家が語るだけでは伝えられないので、とても勇気があって有意義なプロジェクトだと思った。
・普段、言葉にならない生きづらさを言葉にしてくれたような会だった。
・大学という場所で、このようなテーマを扱っていただいて、新しい風を感じた。人権問題であることを、もっとたくさんの人に、色んな立場の人に知って欲しい。イーサンさんのpassionに触れられて感動した。
・薬物の非犯罪化のためには、支援のプログラムを充実していかなければならないと思う。現在、まだDARCのプログラム以外の支援の場、方法論が未熟だと思う。これから、多様な支援を作り、お互いを励まし合う場につなげることが重要だと思います。その機会を作ってくださり、ありがとうございます。

シンポジウム終了時には、ニコニコ動画の視聴者アンケートを実施。「薬物使用・所持の非犯罪化についてどう思いますか?」という問いに対し、賛成が43.9%、反対が56.1%という回答でした。また「今日の番組を見て考え方が変わりましたか?」という問い対しては、変わったが29.6%、変わらないが70.4%でした。
※いずれもシンポジウム終了直後の数値。最終数値ではありません。


「薬物使用・所持の非犯罪化についてどう思いますか?」

「薬物使用・所持の非犯罪化についてどう思いますか?」


「今日の番組を見て考え方が変わりましたか?」

「今日の番組を見て考え方が変わりましたか?」

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【補注】
*1 課題共有型(課題解決指向型)円卓会議“えんたく”
“えんたく”は、依存問題の解決に際してどのような問題や課題があるかを共有することを目的としている。アディクション(嗜癖・嗜虐)からの回復には、当事者の主体性を尊重し、回復を支える様々な人が集まり、課題を共有し解決につなげるためのゆるやかなネットワークを構築していく話し合いの「場」が欠かせない。ATA-net(代表・石塚伸一)では、この「課題共有型(課題解決指向型)円卓会議」を「えんたく」と名づけ、さまざまなアディクション問題解決に役立てることを目指している。
https://ata-net.jp/

*2 メディアスクラム
放送局・全国紙・スポーツ新聞・週刊誌などの全国に渡って情報を配信することが可能なメディアによる報道関係者が大人数で取材対象者・対象地域に押しかけて執拗に付きまとい、必要以上の報道合戦を繰り広げることの意味で用いられる。集団的過熱取材などとも表現される。

*3 ソーシャルインクルージョン
ソーシャル・インクルージョン(英:social inclusion)は、1980年代にヨーロッパで興った政策理念で、社会的に弱い立場にある人々を排除・孤立させるのではなく、共に支え合い生活していこうという考え。「社会的包摂・包容」等と訳される。


2020年1月25日、本学深草キャンパス和顔館において、「龍谷大学ATA-net研究センター キック・オフ・シンポジウム」が、ATA-net JST/RISTEX定着支援事業採択記念として開催されました(犯罪学研究センター共催)*1。当日は、230名にものぼる参加者をはじめ、ニコニコ動画の生配信においても1万を超える方に視聴していただき、たいへん盛況となりました。
【イベント概要>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-4692.html
【第2部レポート>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-5036.html

当日は、2部構成で行われました。第1部は「動きはじめた世界の薬物政策」と題し、薬物政策問題の第一人者であるイーサン・ネーデルマン(Ethan A. Nadelmann)氏 *2を迎え、「薬物使用と非犯罪化 ―再使用と回復支援」について講演いただきました。講演の後、「「いま、あなたに問う〜薬物使用は、犯罪か?」と題し、ネーデルマン氏とジョー横溝氏 *3による対談が行われました。第2部は、「メディアスクラムとソーシャル・インクルージョン〜当事者の位相、支援者の位相、協働の位相」をテーマに課題共有型“えんたく”が行われました。



最初に、指宿信教授(成城大学/同治療的司法研究センター長)があいさつに立ち、「刑罰から治療・福祉へ」というスローガンを提示しました。つぎに石塚伸一教授(本学法学部/ATA-net研究センター長/ATA-net代表)によるイベントの趣旨説明が行われました。石塚教授は「薬物を刑事法的に厳しく規制する厳罰主義は古いやり方。薬物問題が深刻な海外諸国では、薬物事犯(単純所持・使用)を刑事手続きから外す“ダイバージョン”を利用している。また昨今、ヨーロッパにおいては福祉・経済的観点から“ハーム・リダクション”を推し進めて非犯罪化する政策が定着し始めている。日本においてもこの非犯罪化への政策転換のきっかけへのイメージを持ってもらうために今回のイベントを企画した。そして、アメリカにおける“ハーム・リダクション”への方向転換の動向に重要な役割を果たしたネーデルマン氏を招聘した。このアイディアをどう生かすのかが私たちの課題だ」と述べました。


指宿 信教授(成城大学/同治療的司法研究センター長)

指宿 信教授(成城大学/同治療的司法研究センター長)


石塚伸一教授(本学法学部/ATA-net研究センター長/ATA-net代表)

石塚伸一教授(本学法学部/ATA-net研究センター長/ATA-net代表)

第1部 動きはじめた世界の薬物政策


イーサン・ネーデルマン(Ethan A. Nadelmann)氏

イーサン・ネーデルマン(Ethan A. Nadelmann)氏


イーサン・ネーデルマン氏は、はじめに科学的な知見がどのように薬物政策に変化をもたらしたのかについて説明し、その後に世界的な動向、特にオランダにおける薬物政策である“ハーム・リダクション”の重要性について述べました。人は有史以前より体内に様々な物質を服用して生活を営んできました。現在、お酒とタバコは合法であるけれども薬物は違法です。ネーデルマン氏は、「薬物を違法化してきたここ100年の政策は、闇市場における薬物取引を盛況にさせ、かつ、流通している違法薬物の品質が粗悪であるゆえに被害を深刻化させてきた」と説明しました。違法薬物とされる大麻と合法的に入手できるタバコやお酒はこの点において大きな違いがあります。しかし、科学的な知見によれば、健康被害をもたらす度合いは、大麻よりもお酒やタバコの方が深刻であるとされています*4。ネーデルマン氏は、「薬物は管理しながら安全に使用できる状況にしなければならない」と主張します。世界的な動向として、薬物の危険性よりも薬物がもたらす利益に目が向けられ始めているのです。注目されているのは、さまざまな難病の症状を緩和するために医療目的で大麻を使用することです。これらは科学的エビデンスに基づいて行われています*5。たとえエビデンスがあり医療的に有効であったとしても、文化的・宗教的な背景を理由に、薬物は道徳的な観点から違法でありつづけるかもしれません。しかし、「このような状況と世論は変えていくことができる」とネーデルマン氏は述べました。オランダにおける薬物政策の転換は、法律で禁止しても違法薬物使用者が減らないことから試みられました。「法律違反者に対する刑罰的制裁」から「依存症を患っている人への福祉的・医療的なサポート」へという転換です。その転換はオランダの経済、社会状況にも好影響を与え、その結果として、ヨーロッパにおいて“ハーム・リダクション”が注目されるようになりました。薬物に依存している人が抱えている問題をどのように解決していくのか、その人が受けている害をどれだけ和らげることができるのか、それが“ハーム・リダクション”の姿勢です。ネーデルマン氏は「個人がより良い生活を送れるように寄り添う政策が必要だ。薬物政策は、科学、思いやり、健康、そして人権を重んじたものでなければならない」と強調し、講演を終えました。


左:イーサン・ネーデルマン氏/右:ジョー横溝氏

左:イーサン・ネーデルマン氏/右:ジョー横溝氏


講演後、ネーデルマン氏とジョー横溝氏の対談が行われました。「アメリカと日本の薬物に対する世論の問題」、そして「薬物政策を変えるというメッセージを強く社会に打ち出すためには何が必要なのか」について、対談を通して議論を深めていきました。

まず、横溝氏からネーデルマン氏に対して「アメリカの世論は薬物政策の転換に対してどのような反応を示しているか」という質問がなされました。ネーデルマン氏は、「アメリカ世論は非常に多様で複雑である」と述べ、その背景を説明しました。1980〜90年代のアメリカにおいて、厳しい薬物政策下でも受刑者は増えるばかりで解決の見通しがつかなかったこと、人種差別の問題、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)の問題などが顕在化したことによって、厳罰派であった共和党ですら薬物政策を健康の問題として捉えざるを得なくなりました。他方で、自助グループに所属し依存からの回復を目指す途上にいる人の中には、自分たちがそれまで行なっていた活動に、「国の政策が“ハーム・リダクション”に移行することによって悪い影響を及ぼすのではないか」と不安視する声もありました。ともすれば、「ハーム・リダクション=ドラッグを使っても良い」というメッセージに捉えられたからです。しかし、「回復に向かう途上は人によりさまざまです。薬物を使用しないで済むようにするアプローチには、柔軟でいろいろな手段があった方が良いのではないかということで、“ハーム・リダクション”に対する理解がアメリカでは進んでいる状況です」とネーデルマン氏は述べました。
これに対し横溝氏は、日本における薬物に対する拒否反応と、公に薬物について議論する場がなく、タブー視されている状況を紹介しつつ、「アメリカでは薬物政策の転換に向けて、どのようなメディアが先陣を切ったのか」と質問をしました。ネーデルマン氏は、情報を発信するというツールに関してインターネットの誕生と影響力の大きさを挙げ、「新しいストーリー、新しい市民運動、政治運動を作ることが鍵となった」と述べました。いろいろな背景を持つ人々、難病を患っている本人や家族(特に難病を患う幼児の両親)は、医療用大麻の使用を巡って決して諦めず、議会やテレビ局に赴いて発言を繰り返しました。そうした活動がアメリカ社会に大きな影響を及ぼし、メディアが薬物の問題について取りあげるようになったのです。また、ネーデルマン氏は、ヨーロッパにおける薬物政策の変革を促した個人の活動を紹介しながら、「ひとりの人間が勇気を持って声をあげることが変革につながる」と主張。その後も一度に大勢の人と意識を共有するツールとしての音楽をはじめとする芸術の可能性の話など、多彩な話が交わされ、対談が終了しました。
_______________________________________
【補足】
*1 本イベントは、下記の団体の主催・共催・後援により行われた。
主催:
- 龍谷大学ATA-net研究センター
- JST/RISTEX(社会技術研究開発事業)「安全な暮らしをつくる公/私空間の構築」研究開発領域「多様な嗜癖・嗜虐行動からの回復を支援するネットワークの構築」(ATA-net)
共催:
- 龍谷大学 犯罪学研究センター(CrimRC)
- DARS(Drug Addicts Recovery Supports)
後援:(順不同)
- 龍谷大学矯正・保護総合センター 刑事司法未来プロジェクト(金子武嗣基金)
- 一般社団法人京都社会福祉士協会
- NPO法人京都ダルク
- NPO 法人アパリ
- 木津川ダルク
- 京都市
- 寝屋川市
- 京都弁護士会

*2 イーサン・A・ネーデルマン(Ethan A. Nadelmann)氏
ニューヨーク生まれ。ハーバード大学で博士号を取得。政治学者としてプリンストン大学で教鞭を執り(1987-1994)、リンデスミスセンター(1994-2000、ジョージ・ソロス氏からの資金的援助を受けて設立された薬物政策研究所)を創設後、ドラッグ・ポリシー・アライアンス(DPA)を創設し、2000 年から2017 年まで代表を務めた。
アメリカ月刊誌「ローリング・ストーン」では、薬物政策改革運動の「先鋒」であり、「真の薬物政策の指導者」と紹介され、1980 年代後半からアメリカをはじめグローバルに、薬物政策改革運動の主要な役割を担ってきた。
TED トーク「なぜ私たちは薬物との戦争を終わらせる必要があるのか」は、まもなく200 万ビューに達し、日本語を含めた28 言語に訳されている。
http://digitalcast.jp/v/22690/(TED)

*3 ジョー横溝氏
ライター/ラジオDJ/MC
2017年まで『ローリングストーン日本版』シニアライターを務める。
2019年1月まで『DAYS JAPAN』編集長を務める。
現在は、音楽はもとより、ファッション、カルチャー、社会問題に関するインタビュー・取材・執筆も行い、新聞、雑誌、WEBメディアでの連載・執筆も多数。ラジオDJとしてはInterFM897『THE DAVE FROMM SHOW』『LOVE ON MUSIC』他にレギュラー出演中。
MCとしてはニコニコ動画でレギュラー番組2本『ジョー横溝チャンネル』『深堀TV』を持つ他、『中津川THE SOLAR BUDOKAN』をはじめとするロックフェス、音楽イベントや討論番組のMCも担当している。
著書に「FREE TOKYO~フリー(無料)で楽しむ東京ガイド100」「ボブ・ディラン語録―静寂なる魂の言葉」『永遠の言葉 LUNA SEA』他。

*4 The Global Commission on Drug Policy(GCDP)が公開しているレポート
“CLASSIFICATION OF PSYCHOACTIVE SUBSTANCES: WHEN SCIENCE WAS LEFT BEHIND”
http://www.globalcommissionondrugs.org/reports/classification-psychoactive-substances
参考記事:「アルコールやたばこ、大麻より有害」と指摘した国際NGOリポートの中身
https://globe.asahi.com/article/12708952(The Asahi Simbun GLOBE+ 2019.9.18)

*5 「GREEN ZONE JAPAN」
ネーデルマン氏は、医療大麻に関する科学的エビデンスに基づいた正しい知識を日本で紹介しているとして「GREEN ZONE JAPAN」について触れた。
http://www.greenzonejapan.com/about/(GREEN ZONE JAPAN)


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