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龍谷大学生物多様性科学研究センターの伊藤 玄客員研究員をはじめとする研究グループは、重信川水系の自然再生プロジェクトの効果を評価するためのより現実的な魚類群集組成の目標を設定することを目指して、環境DNAメタバーコーディング法の効果的な利用方法を提案する論文を、国際科学ジャーナル「Global Ecology and Conservation」に発表しました。

【発表論文】
標題:Using eDNA metabarcoding to establish targets for freshwater fish composition following river restoration
和訳:環境DNAメタバーコーディング法を用いた河川改修後の淡水魚組成の目標設定について
著者名:伊藤 玄(責任著者)a b, 山内 寛c, 重吉 美和c, 芦野 洸介c, 與那城 千恵c, 朝見 麻希b,  後藤 祐子b, Jeffrey J. Dudad, 山中 裕樹a b
所 属:a龍谷大学先端理工学部・b龍谷大学生物多様性科学研究センター・ c中央復建コンサルタンツ株式会社・d米国地質調査所・西部漁業研究センター
掲載誌:Global Ecology and Conservation /Volume 43, June 2023(Elsevier B.V.社)
URL:https://doi.org/10.1016/j.gecco.2023.e02448
 ※ 2023年3月31日(金)Web掲載(現在は2023年4月6日記録版)

従来、生物の新しい生息場所を造成する自然再生プロジェクトの評価は、周辺での過去の生物捕獲記録を参照するのが一般的です。今回、環境DNA分析によって、現実的に求めうる生物種構成の目標設定の有効性が明らかになりました。
詳細は、以下のPress Releaseをご覧ください。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-12585.html

今回の研究の背景や着眼点、今後の展望について、論文の責任著者である伊藤 玄研究員のコメントを紹介します。

Q1. 今回のご研究テーマは、どのように思いつかれたのでしょうか?
 自然再生プロジェクトとして生物の新しい生息場所を造成するということは、様々な場所で行われていますが、その新しい生息場所にどんな生物が戻ってきたら事業は成功したといえるのか、という目標設定は、現在のところその周辺での過去の捕獲記録を参考に決めることが普通です。今までの方法では、戻ってきそうもない種が設定されていたり、逆に本当は戻ってくる種が取りこぼされているかもしれません。私たちが研究している環境DNA分析は、広範囲の生物の分布を簡単かつ高感度に把握することができます。環境DNA分析によって、現在も周辺に生息していて、現実的に戻ってくる生物種構成を目標として設定できるのでは、と考えて研究を始めました。


伊藤 玄研究員(生物多様性科学研究センター, 本学先端理工学部)

伊藤 玄研究員(生物多様性科学研究センター, 本学先端理工学部)

Q2. ご研究の対象地域として、愛媛県・重信川水系が選ばれた理由をご教示ください。
 重信川水系に位置する開発霞(かいほつかすみ)で自然再生事業があり、共同研究者の中央復建コンサルタンツ株式会社さんによって、魚類のモニタリングが行われていました。開発霞は、かつては良好な湿地環境だったのですが、近年の都市化や堤防整備により、生物の生息環境が劣化していました。


愛媛県・重信川水系の中流域に位置する自然再生エリア(開発霞)の調査地域イメージ。※図内の丸印は、2020年に実施した環境DNA調査の重信川水系における採水地を示し、5地点(K1~K5)では、魚の捕獲調査も同時に実施。

国土交通省の事業の一環で、開発霞を多様な生物が生息できる環境に再生しようという事業が行われ、この事業のモニタリングの一環で環境DNAを取り入れよう、となったのが始まりです。
重信川水系では、1994年からの河川水辺の国土交通省による捕獲調査によって収集された膨大な魚類の分布データがありましたし、環境DNA分析の結果の答え合わせも容易だと考えて、重信川水系で研究を始めました。

Q3. 今回の環境DNA分析(メタバーコーディング法)の結果、事前の仮説とおり、捕獲調査よりも有益な点が見出されています。調査・分析にあたって、もっとも困難に感じた点を教えて下さい。
 環境DNAメタバーコーディング法では、環境中から得られたDNAを塩基配列として読み取るのですが、このデータは種内の遺伝的系統を見分けるためには解像度が低く少し苦労するデータです。日本の河川には、淡水魚として馴染み深いドジョウが生息するのですが、実はドジョウには日本在来の系統と中国由来の外来系統が生息しています。

先行研究により、重信川水系にも在来・外来のドジョウがどちらも生息していることがわかっていましたので、環境DNAデータからなんとか在来・外来のドジョウを区別できないかと考えました。結果的に、環境DNAメタバーコーディングのデータ(12s rRNA領域)と、先行研究で明らかになっている塩基配列データ(シトクロームb領域)を橋渡しするようなデータとしてミトゲノム配列を利用することで、在来・外来系統を見分けることができました。


【補足】環境DNA分析には、種ごとの検出と全種の網羅的な検出(メタバーコーディング)の2つの方法があります。メタバーコーディング法は、環境中から決定したDNAの塩基配列をバーコードのように使って種を網羅的に判別・検出する技術で、「生物種間で共通しつつ、少しずつ異なる配列」をターゲットにしてDNA配列解読を行います。

Q4. 今回のご研究で得られた知見は、社会や環境(魚類の新しい生息場所の造成など)にいかに資することができるとお考えでしょうか。
 開発霞と同じような、接続している河川があって魚類が自力で戻ってくることが想定されるような自然再生地では、環境DNA分析による目標種の設定が効果的だと思います。現実的な目標種の設定により、事業の成功が正しく評価されることで、生物多様性の保全に寄与する事業が増えてほしいと思っています。

Q5. 今後、今回のご研究をさらに発展させていくご予定はありますか?発展させていく場合、どのような点を深めていかれますか?
 今回のドジョウのように、種内系統を識別することが多くの魚種で可能になれば、日本国内の他地域由来の外来種(国内外来種)や、最近問題になっている人工改良品種由来の外来種(第3の外来種)の早期発見にも寄与すると思います。一筋縄ではいかない研究ですが、種内系統を識別することができるようになれば、より現実的な目標種の設定が可能になるので、取り組む価値のある研究だと思います。



【本件のポイント】

  • 自然再生プロジェクトの効果を評価するためのより現実的な生物種構成(ターゲットイメージ)の目標設定に関して、環境DNAメタバーコーディング法 の効果的な利用方法を提案
  • 愛媛県・重信川水系の調査地域 において、コップ一杯の水から生態系情報を明らかにする環境DNA分析は、捕獲調査よりも包括的かつ現実的な短期的対象種の推定を可能にし、さらに種内系統の検出による高解像度のモニタリングが可能であることが判明
  • 大学が進める産学連携の一環として、中央復建コンサルタンツ株式会社 と共同で研究を実施
  • 本研究成果は、生態学と保全生物学分野の国際科学ジャーナル『Global Ecology and Conservation』誌に掲載


【本件の概要】
 龍谷大学 生物多様性科学研究センター の伊藤 玄客員研究員をはじめとする研究グループは、重信川水系の自然再生プロジェクトの効果を評価するためのより現実的な魚類群集組成の目標を設定することを目指して、環境DNAメタバーコーディング法の効果的な利用方法を提案する論文を、国際科学ジャーナル「Global Ecology and Conservation」に発表しました。
 現在、河川などの環境修復の一環として魚類の新しい生息場所を造成する事業が各地で実施されていますが、その新しい生息場所にどんな魚類が戻ってきたら事業は成功したといえるのか、という目標設定は、周辺での過去の生物捕獲記録(歴史的情報)を参考に決めることが普通です。
 本研究では、愛媛県・重信川水系の中流域に位置する自然再生エリア(開発霞)を対象に、2020年に採水による環境DNA調査と捕獲調査を実施。環境修復の効果を追跡するために、環境DNA分析の適用が目標種選定にさらなる効果をもたらすかどうかを検証しました。分析の結果、環境DNAメタバーコーディング法は、捕獲調査よりも包括的かつ現実的に求めうる短期的目標種(生物種構成)の推定を可能にし、さらに捕獲調査では見逃されたドジョウMisgurnus anguillicaudatusの種内系統の存在を確認できたことから、高解像度のモニタリングが可能であることが示されました。自然再生プロジェクトにおける環境DNA技術の有効な活用を提案するという点で、重要な論文です。
 

 

1.発表論文(英文)
標 題:Using eDNA metabarcoding to establish targets for freshwater fish composition following river restoration
和 訳:環境DNAメタバーコーディング法を用いた河川改修後の淡水魚組成の目標設定について
著者名:伊藤 玄(責任著者)  a b, 山内 寛c, 重吉 美和c, 芦野 洸介c, 與那城 千恵c, 朝見 麻希 b,  後藤 祐子 b, Jeffrey J. Duda d, 山中 裕樹  a b
所 属:a 龍谷大学先端理工学部・b 龍谷大学生物多様性科学研究センター・ c 中央復建コンサルタンツ株式会社・d 米国地質調査所・西部漁業研究センター
掲載誌:Global Ecology and Conservation /Volume 43, June 2023(Elsevier B.V.社)
U  R  L : https://doi.org/10.1016/j.gecco.2023.e02448
※    2023年3月31日(金)Web掲載(現在は2023年4月6日記録版)

 


2.用語解説
①  環境DNAメタバーコーディング法
環境DNA分析とは、生物を直接サンプリングせずに、水や土などの環境媒体に含まれているDNAの情報(生き物が糞や粘液として放出したもの)を基に、そこに生息する種の分布や多様性、量を推定する分析手法です。生物を捕獲することなく「水から」検出できる簡便さから、生物多様性の観測や水産資源の管理に革命をもたらすとされます。また、環境DNA分析には、種ごとの検出と全種の網羅的な検出(メタバーコーディング)の2つの方法があります。メタバーコーディング法は、環境中から決定したDNAの塩基配列をバーコードのように使って種を網羅的に判別・検出する技術で、「生物種間で共通しつつ、少しずつ異なる配列」をターゲットにしてDNA配列解読を行います。


②  調査地域:自然再生エリア(開発霞)
今回の調査地域は、愛媛県中央部に位置する幹川流路延長36㎞におよぶ一級河川・重信川水系に位置する「開発霞(かいほつかすみ)」です。開発霞は、かつては良好な湿地環境でしたが、近年の都市化や堤防整備により生物の生息環境が劣化していました。そこで、2014~2019年に同エリアで国土交通省による自然再生事業が実施され、共同研究者が所属する中央復建コンサルタンツ株式会社によって、魚類のモニタリングが行われていました。また、重信川水系では、1994年からの河川水辺の国土交通省による捕獲調査によって収集された膨大な魚類の分布データが存在し、環境DNA分析の結果との比較検討が容易であることから、今回の研究が実現しました。
※図内の丸印は、2020年に実施した環境DNA調査の重信川水系における採水地を示す。また5地点(K1~K5)では、魚の捕獲調査も同時に実施した。


③  中央復建コンサルタンツ株式会社
創業70年を超える総合建設コンサルタントのパイオニアです。国内外の鉄道・道路・橋梁などの社会インフラの計画や設計、三次元化技術、社会インフラマネジメント、まちづくりコーディネートなどの総合的な分野で、社会のニーズを先取りし、安全で豊かな未来を切り開いていきます。環境分野では、環境アセスメントや環境保全のための対応策の提案、より良い環境の創造などに取り組んでいます。
本社所在地:大阪市東淀川区東中島4-11-10

④  龍谷大学 生物多様性科学研究センター
当センターは、これまで生物種の検出のみならず、種内の遺伝的多様性も「水から」の分析を可能にしてきました。近年では「生物の状態」まで知ることを狙い、環境RNA(環境中に含まれる生物の核酸で、DNA上の遺伝情報を有す)分析も開始したことで、総合的な生態系情報の分析へと発展しつつあります。これによりDNAだけではわからない、繁殖活動や病原菌への感染といった情報まで得られるようになると期待されます。本学の研究グループは世界的にも最古参に近く、世界をリードする研究を推し進めています。
センター所在地:滋賀県大津市瀬田大江町横谷1番5(龍谷大学瀬田キャンパス内)

 


3.問い合わせ先:
龍谷大学 研究部(生物多様性科学研究センター)
Tel 075-645-2154 E-Mail  ryukoku.biodiv@gmail.com
HP https://biodiversity.ryukoku.ac.jp/

中央復建コンサルタンツ株式会社(環境・防災系部門 環境グループ)
Tel 06-6160-4150 E-Mail  yamauchi_h@cfk.co.jp
HP https://www.cfk.co.jp/


4月22日(土)に放映されたブラタモリ(NHK)#232「下北沢」の取材協力者として、政策学部の服部圭郎教授がクレジットされました。

服部教授のコメント
「龍谷大学政策学部では現実で何が起きているのか、社会がどのようになっているのか、などについても研究しています。そういう研究結果が、タモリさんに関心をもっていただいたことは学部としても嬉しいかなと思います。ただ、タモリさんに会える!と思って取材協力をしたのですがお会いできず、その点はがっかりでした。」

「ブラタモリ(NHK)」番組紹介はこちら


降誕会とは、親鸞聖人のお誕生をお祝いする法会です。また、今から101年前の1922(大正11)年5月20日に、龍谷大学が大学令による大学として認可されたことから、翌21日を創立記念日としてお祝いしています。
法要は、大宮、瀬田、深草の3キャンパスでおこないます。大宮キャンパスでは学長法話、瀬田キャンパスと深草キャンパスでは記念講演があります。是非ご参加ください。

■親鸞聖人
親鸞聖人のお誕生は1173年5月21日(承安3年4月1日)とされています。源平の戦乱の世にあって、まさに「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり……」と語られたような栄枯盛衰の激しい時代でした。下級公家に生まれられた親鸞聖人は幼くして両親と別れ、9歳にして出家、比叡山での20年間におよぶ求道の末、「よきひと」法然上人と出遇い、そして浄土の真宗 -選択本願念仏- の道に出遇われました。以後、念仏者として如来の恩徳を、教えに問い、身に確かめつつ、人間の闇を見つめ、本願の救いを顕わし続けられたご生涯でした。
→親鸞聖人のご生涯については「龍大はじめの一歩」にも掲載しています。

■■■2023年度創立記念・親鸞聖人降誕会法要■■■
開催日 : 2023年5月21日(日)

■大宮キャンパス
 時間 9:00~9:40
 場所 本館講堂
 勤行 三奉請、讃仏偈、短念仏、回向
 法話 学長 入澤 崇

■深草キャンパス
 時間 10:30~12:00
 場所 顕真館
 勤行 (音楽法要)
    真宗宗歌、献香偈、敬礼文、三帰依、慶讃文、さんだんのうた、念仏、恩徳讃
 記念講演 「法然と親鸞:二人の功績を考える」
 講師 平岡 聡さん(京都文教学園学園長・京都文教大学教授・前学長)
 配信 https://youtube.com/live/AvKPIqKcjJY
 資料 ページ下部のPDFをご覧ください。

■瀬田キャンパス
 時間 10:00~11:00
 場所 樹心館
 勤行 三奉請、讃仏偈、短念仏、回向
 記念講演 「浄土真宗の源流」
 講師 佐々木義英さん(浄土真宗本願寺派司教・龍谷大学非常勤講師・中央仏教学院講師 )

★リンク:学生主催「第102回創立記念降誕会」


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資料PDF:法然と親鸞:二人の功績を考える


 2023年4月19日(水)、龍谷大学経営学部の眞鍋ゼミと株式会社京伝びとの共同企画によるトークイベント“第1回 IKIZAMA session”が、龍谷大学深草キャンパス成就館1F 「Café Ryukoku&」にて開催されました。“IKIZAMA session”のコンセプトは「本気で生きるを考える」。いま第一線で活躍されている情熱を持った実践者をゲストにお迎えし、その経験を語っていただく中で、学生自身がこれからの生き方やキャリアを考えるきっかけを提供することを目指すものです。
 第1回のゲストは株式会社ENERGIZE代表取締役の秦卓民氏。秦氏は、トップアスリートのコーチングや一部上場企業経営陣へのコンサルティングを手がけておられます。
 イベントは、株式会社京伝びとの代表取締役である梅原英哉氏とのクロストークの形で行われ、秦氏が普段から大切にしている考え方として「事実と解釈を分けて考えること」や「過去−未来の軸と、成功−失敗の軸のバランスの取り方」などが共有されました。その後に続いた質疑応答では、学生からの「大学生の時にやっておいた方が良いこと?」や「頭ではわかっているがなかなか行動に移せない。何かアドバイスはいただけないか?」といった質問に対して、秦氏からは、「どんなに小さなことでもよいので、とにかく一番を目指すこと」、「重要なのは、決断すること。人生は後戻りもできないし、1つの道しか選べない。後悔せずに、決断した道で幸せになろうと努力すること。」が大切だといったアドバイスをいただきました。
 イベントの終了後も秦氏に質問が相次ぐ風景からは、学生が将来設計に有意義な時間を過ごしている様子が伺えました。次回は,5月29日(月)に第2回を予定しています。







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