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2022年1月27日18 :00より龍谷大学犯罪学研究センターは、第30回CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会として「〔鼎談〕『再犯防⽌推進法の功罪ー当事者・実務家・研究者の視点』〜再犯防⽌って何だろう?当事者・実務家・研究者が現場の最前線を語る〜」をオンラインで開催し、約160名が参加しました。
【イベント情報:https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-9824.html
主催:犯罪学研究センター


本研究会は、2021年12月18日に開催した第29回CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会「〔鼎談〕刑務所で再犯防止はできるか?〜刑務所出所10年の苦難と希望、そして、これからの道のり〜」につづく内容です。
【実施レポート:https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-9796.html

今回は、「再犯の防止等の推進に関する法律(再犯防止推進法)」に基づいて、2018年から2022年の5年間にわたって行われている「再犯防止推進計画」により与えられたインパクトについて、出所者支援に取り組むNPO代表、法務省矯正局幹部、犯罪学・刑事政策を専門とする研究者が三者三様の視点から話し合う」という趣旨で開催されました。


研究会のタイトルスライド

研究会のタイトルスライド


司会は森久智江教授(立命館大学法学部)、登壇者は五十嵐弘志氏(NPO法人マザーハウス理事長)、中島学氏(法務省札幌矯正管区長)および石塚伸一教授(本学法学部、犯罪学研究センター長)でした。
ここでは鼎談内容のごく一部を抜粋してご紹介します。

森久教授:まずは中島さんに、再犯防止推進法について、あるいは、再犯防止をメインにして行われている施設内での取り組みについて、何かご発言をお願いできませんでしょうか。

中島学氏による話題提供


中島学氏による話題提供の様子

中島学氏による話題提供の様子


中島氏:再犯防止推進計画の基本理念の中で、再犯防止について社会で啓蒙する必要があると言われているので、こういった取り組みがいろいろなところにつながっていけばいいと思っています。今までにない新しい取り組みが始まっています。私は2019年度にPFI刑務所、美祢社会復帰促進センター(山口県)の刑務所長を務めました。その際、立ち上げたプロジェクトの一つが「満期出所者支援」です。美祢という施設は日本初のPFI方式、官民協働の刑務所で、いわゆるスーパーAの方々(初犯で、かつ就業経験や出所後の身元引き受けなども問題がなく、社会復帰にいろいろなリスクを抱えていない受刑者)がたくさん集まっている施設です。一般的に、これらの方々は仮釈放の対象ですが、例外的に、満期釈放される方もいます。これらの満期釈放者の半数以上が再犯をしてしまっています。そこで、「満期出所者支援」プロジェクトを立ち上げました。その際には2つの課題がありました。
 1つはスタッフに、満期出所者への社会的支援は矯正の施設内処遇の枠組みからはみ出しているのではないかというマインドがあることでした。一方で、満期出所者のカウンターパートナーとなる更生保護官署にも温度差があり、これらの調整がなかなか難しく、1つ目の大きな課題でした。
 もう1つの課題はご本人の意識でした。当初、美祢では100%全員に仮釈放を出すということになっていましたが、いろいろな事情で、結果として満期釈放となる方がいました。「自分は仮釈放で出るんだ」という意欲を持っていたのに、急に立場が変わって、「今までの努力はどうなるんだ」と不満の声があがりました。また、年末に出所する予定の方に、「お休みの時でも保護観察所に行けばいろいろな手当てがある」「どこに泊まるの」など、呼びかけても、「ちゃんと私一人でできますので心配しないでください」と、心のシャッターを下ろしてしまったまま出所していった方もいます。このあたりも、サポートが難しいところだと考えています。
 今話したのは私の2年前の経験ですが、昨年と今年度、他の矯正管区では、保護、検察、あとは自治体も含めてチームを作って、満期出所者への支援体制を構築しつつあり、サポート体制が少しずつ進んできています。矯正施設ではなかなか選択肢が少なくても、管区単位でやっていけば、満期出所者をそのスキームにのせることができます。そういった形で新しい再犯防止推進に向けての取り組みが展開されています。

森久教授:中島さん、どうもありがとうございます。今のお話に対して、五十嵐さん、あるいは石塚さんから何かリアクションがありますか?

再犯をめぐる現状
石塚教授:再犯までの期間に関するデータ(犯罪白書)を見ると、令和2年の入所受刑者のうち、再入者の再犯期間が1年未満の者の割合は約35%です。*1 言い換えれば、3分の1くらいの人たちが1年未満で再犯しているので、ここがやはり一番危険な時期ですよね。出所者を地域福祉などの支援にシームレスに繋ぐにはどうすればよいかということでしたが、中島さんのお話では、仮釈放であれば、保護観察所に行って身元引受人に繋げられるけれども、満期釈放だと保護観察所に行かなくてよいので、再犯が起きてしまう危険性が上がるという理屈でしたよね。
 しかし、刑法は、人間は刑務所の中にいるときに改善されなければならないという考え方です。再犯加重*2というものが存在し、5年以内に再犯をすると刑期が倍になります。「刑務所で良い人間になった。良い人間は悪いことをしない。出てきてまた悪い人になった」ということで、刑期が倍になります。果たしてそうなんでしょうか。例えば、僕たちも法律を勉強して頭では理解しているけれど、実務となると何もできないですよね。実務に就いて、現実とぶつかり合う中で、いろいろとトライアンドエラーを繰り返している。つまり、再犯した人もトライしてエラーになっただけじゃないですか。ところが、再犯で刑が重くなってしまう。この刑法の構造自体が少し時代遅れになっていると思います。

中島氏:石塚先生がおっしゃった通り、矯正施設にまとめられている法学上の枠組みは、結局個人モデルですよね。再犯防止推進計画では円滑な社会復帰に重きが置かれていて、本人と本人を取り巻く環境、そして、住居や職業などの環境を整えていくといった、ある種の生活モデルにシフトしてきているのではないかと考えています。私は、これを再犯防止推進計画の功罪の「功」の方だととらえています。いくらご本人が施設で頑張って社会性を身に着けても、外に出てブラック企業で働かされ、一人ぼっちで、他の人との関係性も会話もなく、ストレスや生きづらさが増幅されていくことはあり得えます。なので、シームレス、もしくは社会の中の受け皿をターゲットに置いた処遇の展開が、再犯防止推進計画によって可能となるだろうと思っています。
 一方でまだまだ改善されるべき点があり、例えば、基本理念の掛け声はすごく厳しい言い方をしています。3条では「犯罪の責任等を自覚すること及び被害者等の心情を理解すること並びに自ら社会復帰のための努力すること」とあげられているのですが、ご本人だけに絞り込んでいいのかというのが、私が常々思っている課題です。そこはもう少し違うシフト、もしくは違う枠組みの中の対応というのがあり得るのではないかなと考えています。

五十嵐氏:再犯防止推進法は当事者が不在だと感じてなりません。まず、仮釈放申請するためには身元引受人や帰住地を確保することが大事です。マザーハウスが身元引受人を希望してもことごとく不許可になるので、行き場のない方が出てくるのです。これまでにマザーハウスが関わった150名以上の方々が今も再犯をせず社会で頑張っています。私は受刑中に被害者感情に関する教育を受けたいと申し出ましたが、刑務所側からダメだと言われました。もっと当事者の意思を主体に考えて欲しいと思います。

森久教授:ありがとうございます。今までのお話の中で気になったのは、中島さんがお話された処遇に関わるスタッフの問題がまずあって、それから外に対して前向きに考えられなくなるという本人の意識の問題がある一方で、五十嵐さんのお話では、前向きな意識があっても、施設の中での処遇になかなか繋がってないと。それこそ再犯防止推進法ができたことによって、こういう施設の中の現状が変わりうる可能性、変わってきているというような状況はあったりしますか?中島さんいかがですか?

中島氏:矯正処遇の中の改善更生、改善指導という枠組みが拡充していくことは間違いないです。一方で、ニーズに応えられているかというとまだまだです。また、これから新自由刑(拘禁刑)*3 になり、作業以外を刑として実行するとすれば、受刑者がやりたいことをやらせるということになるのかなと思います。しかし、なんでも希望すればできるのかというと、刑務官のマンパワーと時間の問題が出てきます。刑期は応報であって処遇の時間ではありません。時間を長くすれば十分なケアはできますが、必要最低限の刑罰として刑期があるので、処遇とどう切り分けて、もしくはうまく融合しながら積み上げていくのか、課題は大きいです。
 一方で、五十嵐さんのおっしゃる通り、動機づけしなくても学ぼうと思っている人がいたら、それはチャンスなので逃さないほうが良いと、私も思っています。

森久教授:ありがとうございます。社会は、犯罪をした人が刑務所に入ることによって、何かが変わるような教育が行われるとか、懲らしめによって本人の意識が変わることを、素朴に期待している部分があると思います。しかし、今中島さんがおっしゃったように、そもそも刑期は本人の教育や処遇を予期して決められていないわけです。むしろそこに踏み込みすぎるという問題の方が、従来かなり指摘されてきたと思います。
先ほど石塚先生がおっしゃったように、刑務所に入っている間十分に教育を受けられなかったとしても、満期後には、本人が好むと好まざるとに関わらず、どんどん教育や支援がなされるべきではないかということが、従来から課題としてみなされてきたところもあったように思います。その中で、再犯にできるだけ至らないような対応や関わり方を、改めて意識せざるを得ないような立法が再犯防止推進法だったのではないかという風に思います。


鼎談の様子(写真左上:石塚教授/右上:中島氏/左下:五十嵐氏/右下:森久教授)

鼎談の様子(写真左上:石塚教授/右上:中島氏/左下:五十嵐氏/右下:森久教授)


質疑応答

経験とそれぞれの当事者性
森久教授:参加者から「当事者が集まって、対案をつくってマスコミに流布してみたらどうか」というコメントがありました。当事者の話を聞いて我々も考えることで、これから先の立法に関わる権利を持っている者として、どんな制度をつくれば良いのかを考えられるのではないか。五十嵐さんがされているように、刑務所にどのような問題があるのかをシェアする活動によって初めて知ることが沢山あるということを、改めて理解できると思います。
また、「統計に基づいた論理的合理的な意見交換を求めます。個人的な感性のあれこれなどは経験者に求めていません」というコメントも頂きました。確かに論理的・合理的な意見は私も研究者として重要だと思います。同じく研究者である石塚さんも中島さんもそれを理解し、前提としています。しかし、経験からしか分からないことも当然あるわけです。感性も個人によって違うわけですから、誰か一人の感性だけに基づいた経験のみで話をするのは不十分なため、様々な人の感性や経験をとらえる必要があることも事実です。それぞれの人がその物事を考える時に、統計的なことも含めて論理的・合理的な意見形成をどうやってしていけばいいのかを考える必要があります。その意見形成を行う前段階となる問題意識を持てていないということが現状あるため、今日はその一つの機会としてこの話を広めてもらえればなと思います。

石塚教授:キーワードの「当事者性」については、①自分の今いる場所での当事者性と②法を変えたり、作ったりする主権者としての当事者性があります。それぞれが違う立場に立っていますが、今刑務所で起こっている問題は②主権者としての面では誰もが当事者となっている。刑務所の問題は私たちの問題となるのです。少なくとも私はそう思っているので、起こっていることへの距離の違いがあることや五十嵐さんの話を聞くととても胸が痛む。そういうことが起こっていることについて、主権者である私たちは何らかの責任を負っているだろうと思います。その責任の取り方をどうするかといった時に、直接何も出来ないなら投票する時に関与するとか、近くで困っている方を手伝うとか、そうした関わりを持つような「責任の連帯感」が必要です。その連帯感というものをどう作ったら良いのか、という過程で、まずは現状を理解して問題の共有を行うことが必要になってくる訳です。

刑務所と社会との関係、就労支援
森久教授:「本人の改善は前提だけれども、社会の変容も必要という話が記憶に残っています。社会の変容には教育が必要とのことでしたが、他には何か良い方法はないのでしょうか。例えば修復的司法は地域との修復も果たせないのでしょうか?それによって社会が受刑者を受け入れる姿勢を見せるかも知れないということはないのでしょうか」というコメントを頂いておりますが、皆さんいかがでしょうか。教育が主たる目的でなくても良いのではということでしょうけれども。

中島氏:常々、今度の新しい拘禁刑における作業のあり方を考えていて、美祢社会復帰促進センターでも実践していた、塀の中にいても社会と繋がっていくような活動や交流が必要になってくると思います。地域の伝統工芸などを塀の中で確保することで、地域の人と交流するというようなことです。たとえば、美祢ではユリの球根を栽培するのですが、本来捨てる花を町のあちこちに配ることで地域と交流をしています。そうすると、刑務所の中にいるのは普通の人だと分かって、偏見が無くなり、受刑者や刑務所のイメージが変わってくるのではないかと思います。ビジネスモデルの話でもありましたが、労働力の提供と直結する形でない方が良いと思っています。儲けはないかも知れないけれど、社会との関係性が構築できるような場をもっと増やすべきだと思います。また仮にビジネスをするなら、林業などは刑務所と親和性が高いと思っていて、美祢は奈良県とコラボして林業家を養成して、吉野杉の保全を行っています。このように地域のニーズにあった地域貢献をして社会と交流することが社会を変えることに繋がるのではと思っています。

森久教授:ありがとうございます。ダイレクトな労働力の提供を主目的にするのでは無くて、ご本人のスキル取得や社会貢献のきっかけになることが重要であると思います。労働力の提供を主目的とすると歪んできてしまうのではないかと思います。

石塚教授:前に府中刑務所に行ったときと比べると格段に良くなっていると思います。公開性も高まりましたし、PFIで民間の人が入ったことで、内部の情報もよりオープンになりました。公開性が高まって、とんでもないことは出来なくなっています。かつて名古屋刑務所であった「箱締め」と言って拘束具を用いて痛みを加えて懲罰をするというのは今の刑務所ではもうやらないです。外の目があると、中の人達は恥ずかしいことはしないでおこうとなります。先ほどソーシャルビジネスに関するコメントが参加者から出てきましたが、むしろ、達成出来る感覚を共有して頂けたらなと思います。目標到達までは険しく長い道のりなので、小さな達成感を多く積み重ねることが大事だと思います。若い人たちはクラウドファンディングなどでお金を集めて何かを達成することが出来るので、そうした小さな達成感や満足感を多く経験して自己評価を上げるなどして今後に繋げてもらいたいです。おじさんには難しいんです笑。若い人たちに色々な事を考えて欲しいと思います。また、透明性が高まっているとはいえ、高校生になったら、刑務所と裁判所、少年院へは必修で社会科見学に行ったらどうかと思います。心配になる親御さんの気持ちもわかりますが、見せしめとかじゃなくて、世の中には必死になって生きている人が、人生をやり直そうとしている人がいるんだ、ということや、犯罪をした後の事後処理がこうやって行われるのだ、ということを見てもらいたいです。

五十嵐氏:僕は各自治体で再犯防止をテーマに“えんたく”*4を行えば良いと思います。一般の方も巻き込んで受刑者が何を考えているかなどを共有して、問題を分かち合い、地域の人が知っていくということが重要だと思います。

まとめ 再犯防止推進法の功罪
森久教授:再犯防止推進法の功罪という面で言うと、「功」の部分は確かに多いと思います。今までは身近に思えなかった出所者や受刑者の皆さんを身近なものだと感じて、彼らについて考える人が増えてきたことも「功」として挙げられます。皆さんがこうして集まって議論することもこの法律のおかげだと言えるかも知れません。一方で、「功」の部分が多いからこそ今まで隠されていて見えてこなかった問題や課題が見えてきます。問題がわかることはある意味で「罪」と言えるのかも知れませんが、それは新たな「功」に繋がるきっかけになりますし、見えなかったものが見えることは悪いことではありません。この「功」と「罪」のサイクルを回していきながら、「功」の部分を増やしていけるようになれば良いのではないでしょうか。本日はありがとうございました。
 

参加者アンケートの感想(一部抜粋)
○それぞれの視点からのお話はどれも印象深く感じました。とくに社会と当事者・現場とで隔たりがあるなか、当事者の声を聴くことや実態について情報を収集して社会と共有することの重要性を訴えられていたことが印象的でした。
○政策と現実がかみあっていないことが実感できた。また、社会の意識の問題は、毎回大きいと感じる。なぜ、犯罪者は自己責任を強く要求され、レッテルを張られ続けるのか。
○社会が加害者を受け入れにくいのが現実です。被害者支援は賛同を得られ、加害者支援には理解がない。どのような事象も本人と周りの環境の交互作用でおこる、とソーシャルワーカーは熟知しています。
○今回は刑務所・刑務官側の事情や悩みもいろいろ聞くことができたのがよかったです。みんな一人の人間なんだということを、つい忘れて役割で「べき」を語ってしまう。決めつけずに対話できるようになっていきたいと思います。
○再犯防止推進の目標、課題、現状について、理解が深まりました。他者の存在、孤立について、民間の協力が欠かせないものなら、塀の中の人たちが、わたしたちと変わらない、躓かざるを得ない事情をかかえた人たちだという情報を、エピソードとして塀の外にも投げかけることが必要だと思います。

【補注】
*1 再入者の再犯期間:
前回の刑の執行を受けて出所した日から再入に係る罪を犯した日までの期間をいう。詳細は、令和3年版犯罪白書「第5編 再犯・再非行」を参照のこと。
https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00049.html

*2 再犯加重
再犯者に対し、その犯罪について定められている刑よりも重刑を科すること。〔刑法(明治一三年)(1880)〕

*3 日本における新自由刑「拘禁刑」
2022年3月8日、政府は、明治時代から続く禁錮刑を廃止し、懲役刑と禁錮刑を一本化した新たな刑罰「拘禁刑」の創設を閣議決定した。
刑務所などに収容して自由を奪う「自由刑」のうち、懲役刑は刑務作業を義務付け、禁錮、拘留には作業を義務付けていない。拘禁刑は、受刑者を刑事施設に拘置するものの、刑期の過ごし方に柔軟性を持たせ、作業を行わせたり、指導を受けさせたりできるようにする。
関連ニュース:
「拘禁刑」一本化 龍谷大法学部・浜井浩一教授に聞く 「開かれた刑務所」社会が受容を

*4 “えんたく”:
ATA-netが考案した討議スキーム。当事者の主体性を尊重し、その当事者の回復を支えうるさまざまな状況にある人々が集まり、課題を共有し、解決に繋げるための、ゆるやかなネットワークを構築していく話し合いの場。
https://ata-net.jp/


本学における新型コロナウイルス感染者の発生状況についてお知らせします。

2022.3.24確認者数
学 生  5名

※ 当該学生のうち2名は、学内に入構していますが、既に、濃厚接触者は特定されています。
※ 感染が確認された方の一刻も早い回復を念じております。
※ 感染者やそのご家族の人権尊重・個人情報保護にご理解とご配慮をお願いします。
※ 本学では、引き続き感染予防の啓発と全学的な感染防止対策を講じてまいります。


2022年3月5日13:00より龍谷大学犯罪学研究センターは、「犯罪学研究センターシンポジウム(私立大学研究ブランディング事業 最終報告会)」を龍谷大学深草キャンパスとYouTube配信にて開催しました。6年間の研究活動の成果と展望を発表する今回のシンポジウムには、会場の参加者が約40名、配信の視聴者が約70名、計110名が参加しました。
【イベント情報:https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-9976.html

私立大学研究ブランディング事業の成果*1を発信するシンポジウムの後半であるセッション2では、「グローカル展開 〜犯罪学は地域に何をもたらすのか〜」と題し、3つのテーマをとりあげたトークセッションをおこないました。


CrimRCは、龍谷犯罪学ブランドとして「人に優しい犯罪学」を掲げ、犯罪予防と対人支援を基軸とした研究活動を展開してきました。「人に優しい犯罪学」が目指すところは、犯罪の原因を社会的な孤立ととらえ、人を孤立させる社会構造のメカニズムを究明するとともに、孤立している人に対して効果的な支援が行われる体制を構築することです。CrimRC は、研究者のみならず、さまざまなステークホルダー(実務家・ジャーナリスト、NPO 等団体職員など)を招聘し、ともに研究に取り組んできました*2
トークセッションでは、「差別と孤立」「再犯防止」「コロナ下における大学教育」をテーマにとりあげ、それぞれにモデレーター、話題提供者、そしてスピーカーを配置。これらの登壇者は、広域・重層的なネットワークを構築してきたCrimRCの成果の一端を示すものです。

1.「犯罪学をめぐる差別と孤立」
なぜ、CrimRCは差別と孤立の問題を重要視するのか、これまでの犯罪学や日本社会はどのようにこの問題と対峙してきたのかについて、はじめに、赤池一将教授(法学部/CrimRC「司法福祉」ユニット長)が話題提供を行い、それを受けて、金尚均教授(法学部/CrimRC「ヘイトクライム」ユニット長)、牧野雅子氏(CrimRC博士研究員)、加藤武士氏(木津川ダルク代表/CrimRC「治療法学」ユニットメンバー)の3名が意見を述べました。モデレーターは石塚伸一教授(法学部/CrimRCセンター長)が務めました。


赤池一将教授(法学部/CrimRC「司法福祉」ユニット長)

赤池一将教授(法学部/CrimRC「司法福祉」ユニット長)

赤池教授は、まず「なぜ人は犯罪をおかす(逸脱する)のか」を考察する犯罪原因論のこれまでの理論状況を整理します。「逸脱というのは社会秩序(一定の人々の合意)に反する行為である。社会化の推進(家庭・学校・地域社会)、社会統制の整備(警察・司法・矯正)がうまく作用する(制度的手段)ことで犯罪を減らすことができ、必ずや犯罪を消滅させることができるという仮説がたてられた。社会秩序は、逸脱者の問題(行為者の内的属性や動機)とは全く関係していないと考えられていた」とし、つづけて1960年代のアメリカの政策を紹介します。アメリカ政府は、犯罪の原因を取り除くために、教育制度に莫大な予算を投入し、社会政策(人種・宗教・階級・性差に関わる差別の撤廃のための改革、社会保障など)を多様に企画し、実践してきました。ところが、残念なことに犯罪はかつてない増加を遂げることになります。赤池教授は「社会秩序が完璧に機能すれば、逸脱はなくなるという仮説は本当なのか(「原因論の危機」)という疑問から、ラベリングアプローチ(社会的慣習がラベルを貼ったものが犯罪になるのだという考え方)が生じた。逸脱者と社会との関係の中で両者の境界維持のメカニズム、すなわち、どのような相互作用があるのかということが関心事になった。今日ここで取り上げるヘイトクライム、ジェンダー、アディクションそして自殺も含めた問題は、いわば今まで地下に沈められていたものが浮かび上がってきたものだ。犯罪化・非犯罪化という観点からも、犯罪学では大変重要な研究・検討対象になる」と述べました。

赤池教授の報告を受けて、石塚教授は「日本の犯罪学は差別と偏見の問題から目を背けてきた。これはいわゆる被差別部落の問題を筆頭にタブー視されてきた傾向がある。CrimRCはそういうタブーを廃しようと、いろいろなユニットがこの問題に取り組んできた」と補足しました。

これを受けて、金教授は、社会におけるマジョリティや力のあるものが偏見や憎悪に基づいてマイノリティに対して攻撃を仕掛ける「ヘイトクライム」をとりあげ、「誰も『私は差別をする』という意識を持って差別をするわけではない。むしろ、被害感情と防衛意識のもとに差別が行われる」と指摘。その背景には、ファクトやエビデンスではなく、感情によって世論を形成していく「ポストファクト時代」や、「差別、差別というけれども、差別される側にも理由がある」として「フェイクニュース」が量産される状況があります。


金尚均教授(法学部/CrimRC「ヘイトクライム」ユニット長)

金尚均教授(法学部/CrimRC「ヘイトクライム」ユニット長)

金教授は「龍谷大学は『仏教的SDGs』を唱えている。その中に『2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、出自、宗教あるいは経済的地位その他の状況に関わりなくすべての人々の能力強化および社会的、経済的、政治的な包含を促進する』とある。ヘイトクライムの問題を解決するためには、まさに今、私たちの社会とこの龍谷大学が、どれだけ一人の人間を単に属性や集団として見ずに個人として尊重し、その尊厳を互いに認め合うことができるか。私たちの人権感覚と相互の承認感覚が試されている時だと思う」とコメントを寄せました。

これを受けて、石塚教授は「目の前で偏見や差別が暴走しているときに、”やめろ”というには勇気がいる。そのな状況の下で一人ひとりが”やめろ”と言えるかどうが試されているのだと思う」と述べました。

つづいて、性暴力について研究を行っている牧野氏は、性暴力問題から見えてくる社会や犯罪学の課題を共有しました。牧野氏は、性被害・加害が、日本で長い間軽視されてきた状況を説明しながら「性暴力という言葉は、これは性行為ではなく暴力なのだ、という被害者の実感を伝える言葉でもある。このような当事者の思いや現実を背負った概念、あるいは用語によって学術研究を行っていくことは、当事者の問題を学術研究によって解決する方法を模索するということであるとともに、これまでのアカデミックな議論に対する挑戦でもある」と述べます。また、ジェンダーについて、女性が差別的な状況に置かれていることを問題にする場面で使われていることが多いため、ジェンダーとは女性にまつわる問題を扱うものだと思われている風潮があることを指摘し、「男性/女性」の権力配分の不均衡の問題だけではなく、性差にまつわる認識に着目することの重要性を強調します。


牧野雅子氏(CrimRC博士研究員)

牧野雅子氏(CrimRC博士研究員)

そして、「学術研究におけるジェンダーの視点の導入の必要性が叫ばれて久しいが、それは、これまでの犯罪学が差別に無自覚ではなかったかが問われているとともに、私自身も含めて、犯罪学やそれに関わる研究者が、自らの差別性に向き合うことが求められているということでもある。こうしたジェンダーの視点による犯罪学研究が、学術研究で新たな知見を提供するだけではなく、差別そのものの解消に貢献するのではないか。今後の犯罪学の研究、あるいは教育に、引き継がれる課題として期待したい」とコメントを寄せました。

牧野氏の提言を受けて、石塚教授は「権力配分の問題として、黒人の若い少年の非行を対象に、白人のステータスの高い人が『彼らもかわいそうだね』という視点からラベリング理論は出発している。そうではなくて、犯罪学者の中にある、物事をパワーで捉えようとする思考の男性性ないし権威性に対して、80年代くらいから非常に強い批判がされるようになったきっかけが、犯罪学での被害者の問題やジェンダーの問題であった。今の牧野さんの提起を、どう受け止められるか、犯罪学の大きな課題だ」と述べました。

加藤氏は、差別と孤立というテーマに関して、薬物問題を抱えている者、薬物を使用した者がどのように社会から扱われてきたかについて共有しました。加藤氏は、京都ダルク反対運動の際に、地域住民から「薬物依存者なんてどこか離れ小島で生活しろ」「山の中に作れ」「遠い田舎に行け」などの言葉を浴びせられたことに衝撃を受けました。加藤氏は「実際に薬物を使うこと、それ自体が本当に罪なのか」という大麻使用罪創設の議論や、コロナワクチン接種の有無で発生している差別や偏見を例示しながら、ラベルを付与することで特定の属性の人たちを排除する社会に疑問を呈します。「薬物を使用した人たちの背景には様々な要因、貧困や虐待や家庭の事情、社会構造の中での居場所のなさがある。その人自身だけの問題ではなく、社会の構造がそのようにさせているのだと、視点を少し変えて一度考えれば、「薬物を使った人=罪な人たち」であるとは言えないはずだ。例えば、お酒を飲むこと自体は違法ではないが、お酒を飲んで車を運転すれば、人に危害を加えるリスクが高くなるので罰せられる、それと同じように捉えることはできないのか。


加藤武士氏(木津川ダルク代表/CrimRC「治療法学」ユニットメンバー)

加藤武士氏(木津川ダルク代表/CrimRC「治療法学」ユニットメンバー)

薬物乱用防止教育の影響もあり、薬物を使っている人に対するイメージは最悪であるが、実際に薬物を使っている人の8割以上は当たり前の生活を送っている」と指摘します。そして、犯罪学に期待することとして「薬物や依存の問題についての犯罪学の研究成果が社会にもっと共有されることで、各人が教育の中で持ってしまった固定観念が解消され、薬物を使った人たちの居場所を作って、依存症と向き合って生きることを支えてくれる、思いやりのある地域が増えることを望む」とコメントを寄せました。

これらのコメントを受けて赤池教授は、戦前の国家主義や現在につづく家制度、日本の雇用体制に触れながら「社会秩序というものは無味乾燥にあるわけではなく、歴史の上に成立しているということを改めて痛感した。社会秩序は静的なものではなく、現実にある相互作用によって構築されていくので、不安を感じながら孤立していく人たちがいる。これからも、それぞれの研究の中の課題としてやっていかなければならないことだろう」と述べました。
さいごに石塚教授が、「ここで取り上げたテーマが出発点だ。私たちの問題が、まだ全然解決していないということが明らかにされた。犯罪学でとりあげるべき研究、これからやっていかなければならない領域が多種多様であることを提示できた。差別や偏見は歴史的なものであるからこそ、現在の中で語るということをしないと、次の行動に結びつかない。これは、マーカス=フェルソンの「日常活動理論(Routine Activity Theory)」における最大の発見、「人間は日常生活にあるちょっとした機会によって犯罪をおこなう」という犯罪学的な相互作用論の帰結からも言える。それまで犯罪学者は、お金持ちになると、そして、社会が豊かになれば犯罪や差別は減ると考えていたが、統計を見る限り豊かになればなるほど犯罪も差別現象も増える。豊かになっているはずなのに。なぜそうなるのかを考えるのが犯罪学の魅力である」と述べ、テーマセッション1を終えました。


2.「再犯防止と地域社会、そして地域の保水力へ」
セッション2については、下記概要編レポートで紹介しました。ぜひ参照ください。
>>開催レポート概要編:【新時代の犯罪学構想のグローカルな展開〜人に優しい犯罪学は地域社会に何をもたらすのか?〜】


3.「コロナ下における大学の内と外、いま教育に何が求められるか」

新型コロナウィルス感染症の世界的な流行は、大学教育に大きな影響を及ぼしました。この新たな状況においてどのようなことが求められ、どのように対応してきたのか。はじめに、札埜 和男准教授(岡山理科大学教育学部/CrimRC「法教育・法情報」ユニットメンバー)が話題提供を行い、それを受けて、斎藤 司教授(法学部/CrimRC「性犯罪」ユニット長)、入澤 崇学長(文学部教授)、丸山 泰弘教授(立正大学法学部/CrimRC「治療法学」「犯罪社会学」「意識調査」ユニットメンバー)が、それぞれの見地からトークセッションを展開しました。モデレーターは、津島 昌弘教授(社会学部/CrimRC研究部門長)が担当しました。


トークセッション3のようす

トークセッション3のようす

模擬裁判を通じた法教育の研究・実践をしている札埜准教授は、コロナ下における高校生を対象としたオンラインの「模擬裁判選手権」を運営して得た気づきについて報告しました。芥川龍之介『藪の中』を題材とした模擬裁判を実施したところ、オンラインであっても高校生らが教材の内容を深く理解するために国語だけでなく、歴史、数学、生物、保険体育など他教科の教員に話を聞くなど探究的な学びを行っており、熱を感じる瞬間があったというプラス面を指摘しました。一方、事前学習のための動画をYouTubeでアーカイブ配信したところ、平均視聴時間が10分という結果となり、高校生たちの学びをめぐる耐性が低くなっていること、「実際の裁判ではどうなのか」といった正解を求める質問が出るなど年々、正解主義の傾向が強くなっているというマイナス面もあったことが報告されました。


札埜 和男准教授(岡山理科大学教育学部/CrimRC「法教育・法情報」ユニットメンバー)

札埜 和男准教授(岡山理科大学教育学部/CrimRC「法教育・法情報」ユニットメンバー)

また、ある高校へ模擬裁判の現地指導に行った際のエピソードとして、SDGsに関する学びに取り組んでいる生徒らに対して、札埜准教授がSDGsはかえって環境を悪化させるという見方もあることを伝えたところ、そのようなことは聞いたことはなかったと生徒がパニックに陥った例を紹介しました。選手権終了後には生徒が「(今回の訪問指導は多様な視点で考える契機となって)よかった」と述べていたことを紹介しつつ、札埜准教授は「高校でも大学でも、教員が生徒や学生をどれだけ“葛藤”させられるかがポイントだと思います」とむすびました。

札埜准教授の報告を受けて、教務主任をつとめている斎藤教授は、オンライン授業への移行によって、大学の授業が時間・場所・一緒に受ける学生から全く切り離され、いつでも、どこでも、誰とでも授業を受けられるようになったことを指摘しました。これは学生から好意的に支持されていたとのことでした。また、授業が動画として記録されることで、何度も視聴することができるようになり、試験も1回だけの実施ではなくなった点も指摘しました。これは意欲のある学生にとっては良い影響があったとのことでした。他方で、斎藤教授は、授業が様々なものから「切り離された」結果、授業が「情報コンテンツ」となったことで、良くも悪くも“軽い”ものになったと指摘しました。

さらに正解主義の根底には学生の消費者意識があり、消費者だから教員に正解を提供してもらいたいと考えるのだと思う、と説明。また学生の正解主義傾向と消費者化はむすびつきやすい、そしてこの傾向と「情報コンテンツ」としての授業がむすびつきやすいと思うが、私たちはそれがむすびつかないように、コンテンツとしてパーツになった授業をしっかりと組み合わせて伝えていくことを考える時代に来ていると思うと述べました。


斎藤 司教授(法学部/CrimRC「性犯罪」ユニット長)

斎藤 司教授(法学部/CrimRC「性犯罪」ユニット長)


入澤 崇学長(文学部教授)

入澤 崇学長(文学部教授)

対面授業からオンライン授業への切り替えなどコロナ下での変化への対応について分かったこととして入澤学長は、「我々には正解が分かっていない」という点を指摘しました。これまでの教育は問いがあって答えを出すということに焦点を当ててきたが、コロナのような未知なる現象には正解がなく、未知なるものにどう対処するかということを、コロナが教えてくれたように思うと述べました。そしてコロナだけではなく、これから、我々が経験していないことが増えてきたときに、どう行動してどう考えるかが重要になると指摘しました。一方で、コロナ下で不安を感じつつも、この状況をいかに乗り越えるかということを真剣に考えている学生もいて、これからの未来社会において非常に大きな財産になるだろうと述べました。さらに、コロナの影響を受けている学生を支援したいという卒業生や活動したいという学生もいて、期待が持てる部分もあると述べました。

丸山教授は、オンライン授業はマイナス面が目立つが、オンライン上にあればすぐにアクセスできるという利点があると指摘しました。一方で、図書館で目当ての本以外にも出会えるように、対面だからこそ気づき出会えるものがあると述べました。正解主義傾向が強まっていることについては、早く答えを出すための知識をつけることが主眼になっている受験勉強の影響もあると指摘しました。そういった影響で「勉強とはそういうものだ」と思ってしまっている子どもたちには、そもそも唯一の答えがなかったり、それぞれの視点からみると違う答えになったりすることもあるということを教えていく必要があると述べました。また、札埜准教授の報告にあったSDGsのエピソードに触れ、SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」という対象には罪を犯した人など入っていない人がいることを指摘し、SDGsの内容を含めて是非を見直し、考えていけるような取組みができればSDGsについて学ぶ意味もあると思うと述べました。


丸山 泰弘教授(立正大学法学部/CrimRC「治療法学」「犯罪社会学」「意識調査」ユニットメンバー)

丸山 泰弘教授(立正大学法学部/CrimRC「治療法学」「犯罪社会学」「意識調査」ユニットメンバー)

津島 昌弘教授(社会学部/CrimRC研究部門長、 「犯罪社会学」「意識調査」ユニット長)

津島 昌弘教授(社会学部/CrimRC研究部門長、 「犯罪社会学」「意識調査」ユニット長)

津島教授は3名のスピーカーの意見を受けて、オンライン授業と対面授業を経験し、人それぞれが問題を抱えているという気づきを得たこと、授業科目によってはオンライン授業が効果的だったことを紹介しました。そして立場の違いによって見え方が違う、ということは社会学にも通じるものだと指摘しました。それぞれ視点が違っていて、ほかの視点からは違う景色がみえるかもしれないという想像力(社会学では「社会学的想像力」)が大切だと思うと述べました。
さいごに、札埜准教授は、教員も学生も「分からない」ということでは地続きだと述べ、トークセッション3は終了しました。

総括・コメント
3つのトーク・セッションを終えて、最後に、石塚伸一教授および黒川雅代子教授(本学・短期大学部、CrimRC副センター長)より総括および閉会の挨拶が行われました。

黒川教授は「犯罪学という切り口で他分野の研究者が協働で研究を進めていったこの6年間は、お互いを研鑽する場であり、龍谷大学ならではの試みであった。海外との交流、若手育成、外部資金の獲得は当センターの強みであった。昨今の無差別殺傷事件の背景には社会的孤立が挙げられている。2022年4月より社会的孤立回復支援研究センター(SIRC)が本学に設立される。CrimRCで蓄積された成果を、今度は社会的孤立という切り口で龍谷大学らしい研究成果が報告できればと考えている」と述べました。


黒川雅代子教授(短期大学部/CrimRC副センター長)

黒川雅代子教授(短期大学部/CrimRC副センター長)

石塚教授は、まず本シンポジウムと私立大学研究ブランディング事業の6年間について謝辞を述べたあと、「正解主義の弊害が話題にのぼったが、刑事政策において、焦って答えを出して良かったことが、あった試しがない。大きな事件が起きると世間は震撼し、政治家は稚拙な規制を作りたがる。正しい知見を世に提供することは難しいが、やればできると思っている。ただし、工夫は必要だ。コロナ下でICT化が進んだことは、プラスの側面もある。今日のシンポジウムは、科学の目をもって研究をする犯罪学の強みを示すことができたと思う。嬉しいことに今年のゼミ生の卒業論文に、データに基づいて、常識に疑問を呈する犯罪学らしい論文が複数あった。観察を通して仮説を立て、仲間と議論して、仮説の正しさを検証する。常識を疑い、科学に徹し、ついには常識を覆すことが犯罪学の醍醐味です。」と当シンポジウムを締めくくりました。


石塚伸一教授(法学部/CrimRCセンター長)

石塚伸一教授(法学部/CrimRCセンター長)

CrimRCは、犯罪をめぐる多様な「知」を融合する新たな犯罪学を体系化し、その知見をベースに多様な政策群を科学的に再編し、時代の要請に応える刑事政策の担い手を育成することを目的としてきました。2022年3月にCrimRCの私立大学研究ブランディング事業が終了しますが、4月からは新たな体制で、新時代の犯罪学創生プロジェクトへの挑戦がつづきます。

【補注】:
*1 犯罪学研究センター「私立大学研究ブランディング事業 最終報告書」(2022年3月発行)は以下ページにて公開している。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-10084.html

*2 CrimRCは、総勢 114名(本学専任教員22名、PD1名、RA2 名、学内協力員8名、学外協力員5名、客員研究員2名、嘱託研究員74名)の研究スタッフを中心とし、これに加えて、事務職員、広報担当スタッフ、学生等アルバイトスタッフの協力を得て、私立大学研究ブランディング事業を遂行した。

 
当日の配信動画(【セッション2_「グローカル展開 〜犯罪学は地域に何をもたらすのか〜」】)は、YouTubeにてご覧いただけます。


2月24日に勃発したロシア軍によるウクライナ侵攻について、本学の見解は2月28日に「ロシアによるウクライナ侵攻にかかる声明」を学長名並びにグローバル教育推進センター長名で発出したとおりです。

2021年度から、ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンターは「RYUKOKU CINEMA」と題し、社会的なテーマを題材にした映画と、龍谷大学の先生方や外部の講師の方による、テーマに関連したミニレクチャーで学ぶイベントを開催してきました。

今般、ウクライナ情勢の緊迫化を受け、ウクライナ情勢について理解を深めるための映画を紹介するとともに、各教員によるミニレクチャーを配信します。


入澤 崇 学長(文学部教授)からのメッセージ


ウクライナ紛争の読み方とその意味(国際学部 清水 耕介 教授)


プーチン政権によるウクライナ攻撃に接して―憲法学の視点から(政策学部 奥野 恒久 教授)


【学内者対象】3/25(金)15:00~ 国際学部瀧口順也准教授「ロシア・ウクライナ関係の歴史的経緯と現在(1917-2022)」

2022年4月8日公開
(画像から公式ページにリンク)

「親愛なる同志たちへ」​(2020年、121分)

1962年6月、冷戦下のソビエト。物価高騰と食糧不足が蔓延する中、ウクライナ国境近くに位置するノボチェルカッスクの機関車工場でストライキが勃発。政権が、ストの鎮静化と情報遮断を進める中で起きたのが市民を巻き込んだ無差別銃撃事件。この事実は、ソ連崩壊後の1992年まで30年間国家に隠蔽されてきた。ロシア人映画監督が描く祖国の姿とは…


NETFLIX(画像からリンク)

「ウィンター・オン・ファイヤー: ウクライナ、自由への闘い」(2015年、98分)

国家のよりよき未来を願う平穏な学生デモが、過激な暴力革命、そして大規模な公民権運動へと変貌していったウクライナの93日間を追ったドキュメンタリー。


amazon primeで視聴可能

ウクライナ・クライシス(2019年、120分)

2014年に起きたウクライナ紛争を舞台にした戦争アクション。 親ロシア派が占拠したイロヴァイスク市をめぐる、ウクライナ義勇軍と親ロシア派政府軍の凄惨な戦いを描く。 2014年、ウクライナの領土と見なされていたクリミアをロシアが併合したことによって両国が対立。


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赤い闇 スターリンの冷たい大地で(2019年、118分)

1933年、ヒトラーに取材した経験を持つ若き英国人記者ガレス・ジョーンズには、世界恐慌のなか、なぜスターリンが統治するソビエト連邦だけが繁栄しているのか疑問を抱いていた。当局の目をかいくぐり、ウクライナ行きの汽車に乗り込んだジョーンズが目の当たりにした想像を絶する悪夢のような光景は……。

■参考情報
龍谷大学「ロシアによるウクライナ侵攻にかかる声明」
ロシアによるウクライナ侵攻に反対する龍谷大学有志による声明
 


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