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2021年6月6日(日)梅雨の晴れ間の清々しい日、深草学舎において短期大学部独自のオープンキャンパスが実施されました。
当日、コロナ禍の中ではありましたが、感染防止の観点から完全予約制で実施し、社会福祉学科・こども教育学科280名の来場者をお迎えしました。また、来場の叶わなかった方々には、各学科ガイダンス、入試説明のオンデマンド視聴動画がアップされました。
当日は、参加者の皆様に各学科別ガイダンス(学科の概要や特徴)、それに続き2022年度入試より新設とされる「総合型選抜入学試験」についての説明がなされ、キャンパスツアー〔アドミッションサポーター(学生)によるキャンパス案内〕等のプログラムに参加していただきました。
コロナ禍の中ご来場いただきました皆様に、少しでも龍谷大学短期大学部での学びの魅力をお伝えすることができたのであれば大変うれしく思います。
当日お越し下さいました皆様、本当にありがとうございました。


こども教育学科ガイダンス


社会福祉学科ガイダンス


キャンパスツアー




龍谷大学がホスト校となり、2021年6月18日(金)〜21日(月)の4日間にわたり国際学会「アジア犯罪学会 第12回年次大会(Asian Criminological Society 12th Annual Conference, 通称: ACS2020)」*をオンラインで開催しました。2014年の大阪大会に次いで国内では2回目の開催となる今大会では、アジア・オセアニア地域における犯罪学の興隆と、米国・欧州などの犯罪学の先進地域との学術交流を目的としています。
大会の全体テーマには『アジア文化における罪と罰:犯罪学における伝統と進取の精神(Crime and Punishment under Asian Cultures: Tradition and Innovation in Criminology)』を掲げ、「世界で最も犯罪の少ない国」といわれる日本の犯罪・非行対策と社会制度・文化に対する理解を広めることを目指しました。
【>>関連ニュース】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-8690.html

LIVEで行われた本大会の全体講演(Plenary Session with Q&A Session)の概要を紹介します。

[PL01] 現代中国における国内移民、犯罪および刑罰:女性出稼ぎ労働者と犯罪活動への関与
(Internal Migration, Crime, and Punishment in Contemporary China: Migrant women and their involvement in criminality)

〔講演者〕アンキ・シェン(ノーザンブリア大学法学部,イギリス)
Anqi Shen (Professor of Northumbria Law School, Northumbria University, United Kingdom)
〔司 会〕宮澤 節生(神戸大学名誉教授, アジア犯罪学会会長)
Setsuo Miyazawa (Professor Emeritus, Kobe University, Japan; ACS President)
〔日 時〕2021年6月18日(金) 18:45-20:15
〔キーワード〕中国の国内移民、女性出稼ぎ労働者、マルチ商法犯罪、新自由主義、戸籍制度、緊張理論、フェミニスト理論



アンキ・シェン(ノーザンブリア大学法学部,イギリス)

アンキ・シェン(ノーザンブリア大学法学部,イギリス)

【報告要旨】
中国の経済改革―すなわち「新自由主義への転換」-は1970年代後半に始まった。それによって,都市化と,そして主に農村地域から比較的経済的に発展している都市部への大規模な国内移民の傾向に拍車がかかった。女性は,何千もの出稼ぎ労働者のなかでも不可欠な要素である。こうした「農村労働者」の村から都市部への脱出によって,急速な社会変化とともに新たな課題が生じた。主要都市や広範な都市部において,農村からの出稼ぎ労働者―男女ともに―は社会から置き去りにされる。社会から置き去りにされた人たちは弱者になりがちであり,法を犯しやすくなる傾向がある。二極化し,性別を常に意識する社会状況では,特に出稼ぎ労働者の女性が多くの圧力を受ける。中国に関する移民研究では,多くの研究が農村から都市への出稼ぎ労働者の女性の経験を調査してきた。経験とはつまり,彼らがアウトサイダーとして暮らしている都市でのチャンスや葛藤や希望のことである。法社会学・犯罪学研究では,中国に焦点を当てた先行研究が,出稼ぎ労働者の犯罪行為,出稼ぎ労働者の若者における違法薬物問題,「農村労働者」の犯罪被害,出稼ぎ労働者の逸脱行為における犯罪を誘発する構造的要因に対応するための公共政策の不備に関して検討を行ってきた。にもかかわらず,犯罪行為を行った出稼ぎ労働者の主体的経験にはほとんど注意が向けられてこなかった。また,法を犯した女性は放置されてしまうことが多い。
今回のミニレクチャーで,私は,犯罪行為を行った出稼ぎ労働者の女性について、新自由主義的社会の文脈で検討する。あるケース研究を用いて,出稼ぎ労働者の女性が関与した違法なマルチ商法事案について、フェミニストの視点から検証したい。マルチ商法事案は今日,中国の法を犯した女性たちの間で急速に広まっている。ケース研究の詳細について検討する前に,中国特有の社会経済学的状況を簡潔に説明する。その後,女性の違法なマルチ商法への関与,その動機,犯罪行為の中で果たした役割,そしてもちろん,犯罪に関与した結果として得たものと失ったものについて議論するため,このケース研究の詳細を報告する。こうした説明が,女性の犯罪行為,新自由主義の主観性,自己高揚,欲深さー新自由主義の弊害―,社会的排除,ジェンダー・バイアスとの間の関連を明らかにする手助けになればと思う。これらは,地方の出稼ぎ労働者の女性が新たな都市部の環境の中で経験するが,彼らはその土地に所属しておらず,正式かつ現実的なメンバーシップを持っていないのである。

司会者注:本講演は、2019年のACS Distinguished Book Award Honorable Mentionを受けたAnqi Shen, Internal Migration, Crime and Punishment in Contemporary China: An Inquiry into Rural Migrant Offenders, Springer, 2018の第4章に基づいている。シェン教授は、2016年4月に中国のある刑務所の受刑者のランダム・サンプル42人をインタビューし、そのうち、マルチ商法犯罪に加担したことで有罪となり、受刑していた2人の女性のデータをこの講演において用いた。
 中国の急速な都市化は、地方から都市部への労働力の移動を必要とした。しかし、中国では戸籍制度があって、農村戸籍の者は都市では社会福祉制度によって保護されず、経済的・社会的機会も限られているため、多くの出稼ぎ労働者が、マートンの緊張理論における「犯罪的革新」に出ざるをえない。しかも、出稼ぎ労働者の中での女性の機会は男性よりも限られているため、女性はより大きな「犯罪的革新」への圧力を受けることになるが、女性が肉体的能力を必要とする路上犯罪を行うことは困難であるため、経済犯罪・規制違反犯罪を行うことが多くなる。その典型的形態が、マルチ商法組織への加入である。すなわち、女性出稼ぎ労働者は、都市に対する地方、男性に対する女性という、二重の意味で弱者なのであり、その意味で、緊張理論とフェミニスト理論が結合される。マルチ商法組織は、合法的企業の外観と内部構造を有するために、それらの女性は、経済的利得だけではなく、社会的自己実現をも目的として、それらの組織に加入しており、実際には加入のために多額の投資を求められて回収できず、大きな損害を被っているにもかかわらず、逮捕前も有罪判決後も、犯罪を行ったという認識はまったく有していない。以上が講演内容の要旨である。]

【質疑応答(Q&A)要旨】
(問1)中国で受刑者のインタビューを行ったということ自体、驚くべきことである。受刑者をインタビューすることは、権威主義的性格が低い国でも容易ではない。どのようにアクセスを得たのか、説明していただきたい。
(答1)たしかに困難な調査であり、多大のコミット、決意、努力、そして幸運を必要とした。自分は調査地の地元政府が組織した法の支配に関するセンターのメンバーで、この調査は出稼ぎ労働者の状況に関する大規模調査の一部で、地元政府からの資金を得ていた。それに自分は、イギリスに来る前に10年以上刑事司法に関係しており、弁護士でもあったので、人脈があって、信頼も受けていた。そのうえ、この刑務所は女子施設も有していて、調査に最適だった。しかし、サンプル数は縮小せざるをえず、インタビューは、いつ停止されるかもしれないという可能性があったので、常に緊張感があった。そのうえ、刑務所は辺鄙な山間部にあって、照明のない夜間に車で行くこと自体、大変だった。

(問2)あなたは、インタビューした二人の女性受刑者のマルチ商法犯罪は「投資活動」であると述べている。何に投資していたのか。誰が組織を作ったのか。彼らは処罰されたのか。
(答2)投資の対象は、健康関係製品、不動産、あるいはどこかの島など、多様にありうるが、現実には投資活動は行われておらず、新規会員から資金を集めることだけが目的になっている。しかし、外観も内部組織も正常な企業であって、受付、マーケティング部門、法務部などもあり、彼女たちは違法な組織で活動していたという認識はまったくない。どのような行為が処罰されるかという点について法解釈は確立しておらず、多少とも管理的な活動をしていると組織者として処罰される可能性がある。トップの者は、詐欺でも処罰されている。

(問3)彼女たちはマルチ商法行為をしたことについて犯罪の認識はないということだが、他の犯罪行動と比較考慮してこの犯罪を選んだということはないかのか。
(答3)彼女たちは初犯者で、マルチ商法行為は、他の犯罪との比較で選んだというのではなく、正常な企業に入社したという認識である。何らかの境界を越えたという認識はあるかもしれないが、犯罪行為を選択したという認識はない。

(問4)二人の女性は新規メンバーを組織に勧誘したということで有罪になっているが、刑期はどれほどか。日本では、組織を開設・運営した者は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方、業として勧誘した者は1年以下の懲役または30万円以下の罰金、単に勧誘した者20万円以下の罰金である。彼女らはすでに釈放されたか。釈放されたとすれば、故郷に戻ったか。
(答4)中国法では、マルチ商法組織を組織した者で、監禁をしたり、自殺者を出したりするなどの重大な状況を伴う場合は、5年以上の有期刑と罰金となり、そのような重大な状況がなく勧誘したにすぎない者は5年以下の有期刑と罰金になりうる。自分がインタビューした女性の一人は6ヶ月で、もう一人は1年だった。すでに釈放されていると思うが、釈放後の情報を得ることはできない。しかし、インタビューによれば、彼女たちは自分の能力に大いに自信があり、故郷に戻らずに都会でチャンスをつかみたいと考えていた。とくに一人は、所属組織で活動していた間に公認会計士の資格まで取っていた。あくまで自力で成功しなければならないという発想は、まさに新自由主義である。

(問5)問題の根源が戸籍制度であることは明確ではないか。日本でも戸籍制度はあるが、中国の制度のように社会福祉や経済的・社会的機会を制約する制度ではない。中国政府は何らかの対策を立ててこなかったのか。
(答5)中国政府も問題は認識しているが、農村からの出稼ぎ労働者全体を救済する力がないので、一定の教育や経済力を有する者に対する対策にとどまっている。彼女たちのような低学歴者や、ランクの低い大学の出身者まではカバーしていない。

(問6)彼女たちの行動は緊張理論でも説明できるかもしれないが、組織に入ってから手口等を学んだとすれば、学習したもので、分化的接触理論も当てはまるのではないか。
(答6)彼女たちは違法行為を行っているという認識はまったくなく、合法的企業の業務を行っていたという認識であって、犯罪行動を学習しているわけではないから、緊張理論のほうが適切であると思う。

(問7)彼女たちの行動の背景にあるのは新自由主義ではなく、中国の伝統的文化が背景にするのではないか。
(答7)経済的成功がすべてに優先するという発想は、1970年代以後の改革によって生じたものであって、何らかの伝統的文化に基づくものではない。現在では、新自由主義的発想は社会的弱者によっても広く共有されており、自己の状況を改善するのは自己責任であって、政府に負担をかけるべきではないという発想がきわめて強く、自己の不遇な状況は甘受すべきものと考えるのが一般的である。このような社会構造が近未来に変化する可能性は低い。

(文責:宮澤 節生)

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◎本大会の成果については、犯罪学研究センターHPにおいて順次公開する予定です。
なお、ゲスト・スピーカーのAbstract(英語演題)はオフィシャルサイト内のPDFリンクを参照のこと。
ACS2020 Program https://acs2020.org/program.html


*アジア犯罪学会(Asian Criminological Society)
マカオに拠点をおくアジア犯罪学会(Asian Criminological Society)は、2009年にマカオ大学のジアンホン・リュウ (Liu, Jianhong) 教授が、中国本土、香港、台湾、オーストラリアなどの主要犯罪学・刑事政策研究者に呼びかけることによって発足しました。その使命は下記の事柄です。
①    アジア全域における犯罪学と刑事司法の研究を推進すること
②    犯罪学と刑事司法の諸分野において、研究者と実務家の協力を拡大すること
③    出版と会合により、アジアと世界の犯罪学者と刑事司法実務家のコミュニケーションを奨励すること
④    学術機関と刑事司法機関において、犯罪学と刑事司法に関する訓練と研究を促進すること
このような使命をもつアジア犯罪学会は、現在、中国・香港・マカオ・台湾・韓国・日本・オーストラリア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・アメリカ・スイス・パキスタン・インド・スリランカなどの国・地域の会員が約300名所属しており、日本からは会長(宮澤節生・本学犯罪学研究センター客員研究員)と、理事(石塚伸一・本学法学部教授・犯罪学研究センター長)の2名が選出されています。


龍谷大学がホスト校となり、2021年6月18日(金)〜21日(月)の4日間にわたり国際学会「アジア犯罪学会 第12回年次大会(Asian Criminological Society 12th Annual Conference, 通称: ACS2020)」*をオンラインで開催しました。2014年の大阪大会に次いで国内では2回目の開催となる今大会では、アジア・オセアニア地域における犯罪学の興隆と、米国・欧州などの犯罪学の先進地域との学術交流を目的としています。
大会の全体テーマには『アジア文化における罪と罰:犯罪学における伝統と進取の精神(Crime and Punishment under Asian Cultures: Tradition and Innovation in Criminology)』を掲げ、「世界で最も犯罪の少ない国」といわれる日本の犯罪・非行対策と社会制度・文化に対する理解を広めることを目指しました。
【>>関連ニュース】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-8690.html

LIVEで行われた本大会の基調講演(Keynote Session with Q&A Session)の概要を紹介します。

[KY01] パンデミック期における収容者の釈放と出所者の社会復帰:英国の刑務所から得た知見
(Rehabilitation and Prison Release during the Pandemic: Perspectives from British Prisons)

〔講演者〕シャッド・マルーナ(クイーンズ大学 社会科学・教育・ソーシャルワーク学部 教授,イギリス)
Shadd Maruna (Professor, School of Social Sciences, Education and Social Work, Queen's University Belfast, UK)
〔司 会〕津島 昌弘(龍谷大学 社会学部 教授)
Masahiro Tsushima (Professor, Faculty of Sociology, Ryukoku University, Japan)
〔日 時〕2021年6月18日(金) 17:00-18:30
〔キーワード〕刑務所,コロナ,デジスタンス(離脱)



シャッド・マルーナ(クイーンズ大学 社会科学・教育・ソーシャルワーク学部 教授,イギリス)

シャッド・マルーナ(クイーンズ大学 社会科学・教育・ソーシャルワーク学部 教授,イギリス)

【報告要旨】
 この1年は,すべての社会にとって,壊滅的とも言える1年間でした。しかし,刑務所ほど壊滅的となった場所は他にないでしょう。英国の多くの刑務所では,パンデミックのほぼ全期間にわたって,収容者との対面による更生プログラムは中断されています。今回の報告では,2020年3月にロックダウンが始まって以来,最初に英国の刑務所内で許可された研究プロジェクトの一つを取り上げます。それは自然実験とも言えるでしょう。報告では,現在の悲惨な状況が刑務所の収容者の生活に何をもたらしたのか,現時点での状況証拠について検討します。The User Voice Organisationとの共同によるこの研究では,研究の企画からデータ分析,結果の発信にいたる全ての研究過程において,現収容者と出所者に支援をしてもらっています。本研究の目標は,パンデミック期において,社会で一番にその存在が見落とされ,放置されている人たちの声を代弁することです。

 基調講演の前半では,講演者ならびにデジスタンス(離脱)研究に関する詳細な紹介があり,それに続く後半部分において,上記の研究報告がなされました。講演の後に,参加者との質疑応答に入りました。

【質疑応答(Q&A)要旨】
(問1)基調講演の中で紹介された,現在進行中の,コロナ禍の刑務所調査についての詳細(調査の目的,手法,ならびに予期される結果など)を紹介していただけないでしょうか?
(答1)この調査は,英国経済社会研究会議(ESRC)から,コロナ禍における緊急を要する研究として,助成を受けている研究プロジェクトです。一つの目的は,元収容者の離脱研究において,その調査の企画運営・解釈に出所者が従事するということです。調査に携わる出所者は,調査の基礎を学びます。具体的な調査としては,アンケート,インタヴュー,参与観察,調査日誌(の解読)があげられます。

(問2)上記の質問・回答に関連する質問です。調査の結果を社会運動に,具体的には,刑務所改革につなげようと考えていますか?
(答2)そう考えています。コロナ以前の刑務所内の状況は最悪であった。それが,コロナ感染拡大によって,刑務所はロックダウンされてしまった。しかし,コロナ後の社会の回復過程には,刑務所においても同様に,新たな価値規範の生成の必要性が高まることになり,そこに本調査の成果を活かす余地があると考えます。

(問3)出所者の状況について紹介をしてもらえるでしょうか?
(答3)まずコロナ禍における犯罪発生に関する状況です。強盗を含む犯罪発生率は低下,ドメスティック・バイオレンスを増加している,と言われています。また,元収容者の社会統合に欠かせない,雇用,教育,支援のための会合などはロックダウンのため,サーヴィス提供が困難となっています。

(問4)マルーナ先生が提唱するリハビリテーション・モデルに,1960年代のレイブリング理論が影響しているように思われます。実際のところ,どうなのでしょうか??
(答4)はい,強く影響しています。K.エリクソンが言っていますが,社会でスティグマを一度貼られると容易には剥がせない,という点など,まさにそうです。しかし,J.ブレイスウェイトは,(スティグマではなく)日本の恥の概念に着目し,それを社会的再統合の儀礼(謝罪と包摂)に取り入れることで,元犯罪者の立ち直りに応用することができる,と提唱しました。私の考えは,ブレイスウェイトの理論に大きく依拠しています。

(問5)社会運動,ここでは元収容者の立ち直りのやり方には,大きく2つあると思います。一つは,いわゆる「パワーオーヴァー・タイプ」であり,当事者が社会への敵意を示し,状況を変革させるやり方で,もう一つは,例えば,「回復」のように新たな価値観を示すことで,当事者と社会との間の壁を取り除くやり方です。マルーナ先生は,我々に,どちらのやり方をおすすめしますか?
(答5)後者です。実際に私が採用しているアプローチです。社会と元収容者の壁をなくすことが重要だからです。しかし,必ずしも二択というわけではなく,黒人やLGBTQなどの社会運動史が示すように,当事者も,ときには(不可欠なステージとして)怒りや批判を乗り越えていくことになりますので,前者も否定できません。

(文責:津島 昌弘)

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◎本大会の成果については、犯罪学研究センターHPにおいて順次公開する予定です。
なお、ゲスト・スピーカーのAbstract(英語演題)はオフィシャルサイト内のPDFリンクを参照のこと。
ACS2020 Program https://acs2020.org/program.html


*アジア犯罪学会(Asian Criminological Society)
マカオに拠点をおくアジア犯罪学会(Asian Criminological Society)は、2009年にマカオ大学のジアンホン・リュウ (Liu, Jianhong) 教授が、中国本土、香港、台湾、オーストラリアなどの主要犯罪学・刑事政策研究者に呼びかけることによって発足しました。その使命は下記の事柄です。
①    アジア全域における犯罪学と刑事司法の研究を推進すること
②    犯罪学と刑事司法の諸分野において、研究者と実務家の協力を拡大すること
③    出版と会合により、アジアと世界の犯罪学者と刑事司法実務家のコミュニケーションを奨励すること
④    学術機関と刑事司法機関において、犯罪学と刑事司法に関する訓練と研究を促進すること
このような使命をもつアジア犯罪学会は、現在、中国・香港・マカオ・台湾・韓国・日本・オーストラリア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・アメリカ・スイス・パキスタン・インド・スリランカなどの国・地域の会員が約300名所属しており、日本からは会長(宮澤節生・本学犯罪学研究センター客員研究員)と、理事(石塚伸一・本学法学部教授・犯罪学研究センター長)の2名が選出されています。


本学における新型コロナウイルス感染者の発生状況についてお知らせします。

学 生 3名
教職員 1名

※ 当該学生及び教職員4名は、学内に入構していますが、既に保健所の調査の結果、濃厚接触者は特定されています。
※ 感染が確認された方の一刻も早い回復を念じております。
※ 感染者やそのご家族の人権尊重・個人情報保護にご理解とご配慮をお願いします。
※ 本学では、引き続き感染予防の啓発と全学的な感染防止対策を講じてまいります。


2021年6月21日(月)、犯罪学研究センター「龍谷コングレス「龍谷・刑事政策構想」発表 市民のための刑事政策構想〜人に優しい刑事政策をめざして〜」をオンライン上で開催しました。
当イベントは、本学がホスト校をつとめる「アジア犯罪学会第12回年次大会(ACS2020)」開催を記念し企画されたサイドイベントの一つで、これまでに「犯罪学教育のICT化」、「テロとの戦いと国際人権」、「多様な生き方と薬物政策」など、幅広いテーマをとりあげました。最終日となる今回は、3部構成となっており、1.研究部門からの報告、2.本年3月に開催された第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)の振り返り、3.「人に優しい犯罪学とは何か?」をテーマに、参加者約50名とともに課題や疑問を共有するラウンドテーブルディスカッションを行いました。
>>イベント概要:【龍谷コングレス2021】龍谷コングレス「龍谷・刑事政策構想」発表 市民のための刑事政策構想〜人に優しい刑事政策をめざして〜/犯罪学研究センター主催
関連NEWS>>
- 【6/18〜6/21開催】龍谷コングレス2021 〜人に優しい犯罪学の過去・現在・未来〜
- 犯罪学に関する国際学会「アジア犯罪学会第12回年次大会」をオンライン初開催(2021.06.23)


はじめに、犯罪学研究センター長の石塚伸一教授(本学・法学部)より開会の挨拶が行われました。石塚教授は「当センターの研究は、犯罪原因や刑事司法のプロセスを科学的観点からとらえ、科学的根拠に基づいた政策提言を目的とする。このたび当センターの研究ブランディング事業が最終年度を迎え、研究の成果をとりまとめるにあたって、『人に優しい犯罪学』を方向性として提示したい。犯罪の原因は『孤立』にあり、『孤立からの脱却』と『回復の支援』のあり方について今後検討を重ねる。今日は龍谷大学というプラットフォームの中で行われている多種多様な研究を皆さんに見ていただきたい」と述べました。


石塚伸一教授(本学・法学部、犯罪学研究センター長)

石塚伸一教授(本学・法学部、犯罪学研究センター長)


当日のプログラム。司会進行は西本 成文氏(本学犯罪学研究センター 研究員)が担当

当日のプログラム。司会進行は西本 成文氏(本学犯罪学研究センター 研究員)が担当

第1部:研究部門*1からの報告


 津島昌弘教授(本学・社会学部、犯罪学研究センター研究部門長)

津島昌弘教授(本学・社会学部、犯罪学研究センター研究部門長)


つづいて、犯罪学センター研究部門長である津島昌弘教授(本学・社会学部)より報告が行われました。津島教授は「犯罪予防と対人支援を基軸に、諸学問の学融化と合理化を求めて、当センターでは人間・社会・科学をキーワードに犯罪現象をさまざまな角度から捉えるために9つのユニットを配置した。そして、本学の多様な研究の蓄積と多彩な人的資源を開拓するため、全学に協力を呼びかけ、4つの公募型研究を採択した。また本学は40年余の長きにわたり建学の精神を具体化する事業の一環として社会復帰を支援する矯正・保護事業を展開してきた*2。その伝統を鑑み、更なる展開を目指して2016年に設立されたのが犯罪学研究センターだ。コロナ禍のなか、社会は大きな変化の兆しをみせている。本学もまた『仏教SDGs』*3構想を打ち出した。犯罪学研究センターの目指す『人に優しい犯罪学』のもと、これから紹介するユニットの研究成果をどのように活かしていくのか、現実の施策と突き合わせてどのようなことが言えるのか、が課題となる」と述べ、ユニットの紹介に移りました*4。あらかじめ各ユニットにはそれぞれの研究活動を紹介する動画作成を依頼し、当日はそれを編集してつなぎ合わせたものを参加者とともに確認しました。各ユニットは5分のユニット紹介動画に加え、今後15分のユニット研究成果報告動画を新たに作成し、犯罪学研究センターHP上で2021年12月の公開を目指します。

第2部:京都コングレスを振り返って
つづいて、3月に京都で開催された国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)の総括がおこなわれました*5。石塚教授は、「1970年の京都コングレスは、1954年に国際人権規約が起草され、1966年に国際人権規約B規約が採択されるような国際的な潮流のなかで、人権の尊重がテーマであった。日本は法律化、近代化、国際化をスローガンに行刑の改革に乗りだした。しかし2000年頃から国際的な潮流に変化が現れた。一部の先進国によって多国間の利害調整や国際ルールを定める動きが顕著になったことだ。国連犯罪防止刑事司法会議も例外ではない。罪をおかした人や一般の市民を置き去りにしたまま、さまざまな施策が国家主導で決定される。言い換えれば、国ができることが何かという視点からものごとが決定される」と50年前のコングレスのあらましと国際的動向の変化を説明しました。つづけて石塚教授は「日本の縦割り行政の中で法務省ができることは、再犯防止のために監視や支援をつづけることぐらいだ。ただ、この方向性には限界がある。法務省も対応に苦慮していると思う。今の時代に教育を受けさせて手に職をつけさせるだけでは犯罪をとりまく問題は解決されない。なぜならば教育と労働のみで社会は成り立っているわけではなく、犯罪や非行の問題は多様化しているからだ。犯罪学研究センターの各ユニットがおこなっている研究が、まとまりがなくバラバラであるように見えるのは、各ユニットが今の社会のニーズに対応した研究をしているからである。こんなに多くの領域、学内外の研究者の協力を得て犯罪学の研究をしているところはこれまで日本にはなかった。今回の龍谷コングレスは、『国ができること』ではなく、犯罪を止めるのにはどうすれば良いか、幅広い視野を持った市民サイドの視点を提示するために企画した。」と述べました。
最後に、石塚教授は、赤池一将教授(本学・法学部、犯罪学研究センター教育部門長、「司法福祉」ユニット長)を指定討論者に迎え、ラウンドテーブルのための論点として①1970年と2021年の京都コングレスをどのように評価するか、②戦後改革の一環として行われた監獄法改正作業の成果である「被収容者処遇法(2005年)」は、実務で実現されているか?、③「人に優しい犯罪学」を標榜する犯罪学研究センターの今後について、を提示し報告を終えました。



第3部:ラウンドテーブル「人に優しい犯罪学」とは何か?


赤池一将教授(本学・法学部、犯罪学研究センター教育部門長、「司法福祉」ユニット長)

赤池一将教授(本学・法学部、犯罪学研究センター教育部門長、「司法福祉」ユニット長)


赤池教授は、京都コングレスに向けて法務省がどのような準備をし、最終的にどのようなテーマを取り上げて議論したかに着目し「法務省はコングレスにおいて『語りたくないことは語らない』、『語りたくないことを語る場を塞いでいる』のではないか」と指摘しました。

具体的には、カルロス・ゴーン氏の事件で日本の刑事司法が国際的に問題視されたこと*6や、日本政府が死刑問題について国連からの勧告を受けている*7など、国内外から批判を受けていることに対して「コングレスにおいて日本の立場を改めて説明するチャンスであったのにも関わらず、正面から議論することを避ける姿勢を残念に思う」と述べました。つづけて「問題を正面から取り上げ議論することを恐れるような体質がここ50年でできて、1980年代から顕著になっているのではないか。その現れのひとつが『日本には日本の事情があり、海外と比較するにはあたらない』という姿勢だ」と重ねて指摘しました。次に『人に優しい犯罪学』について赤池教授は、「人に優しい犯罪学が目指すところは、犯罪の原因を孤立ととらえ、孤立している人に優しくするべきだということだと理解すると、我々は、人を孤立させる制度に対して厳しい目を向けなければいけないと考える。孤立した社会と一般社会とを対置した場合、両者をつなげるものは何か、そしてある意味で孤立せざるを得ない社会(例えば刑務所)において、一般社会の法や論理そして制度をどのように活かしていくかを検討することが政策提言に必要となる。犯罪学研究センターの各ユニットの扱っているテーマは市民主導の、国が語らなかったこと、語りたくないものである。これらをいかに共有するかだが、各ユニットの研究から導かれるテーゼに共通の認識がみられた。それは①犯罪問題に対する『市民のリテラシー』を高める研究の充実、②多様性の尊重、であり、リテラシーをもった人間が多様性を尊重することにより、本当の意味での民主主義社会を成立させるために貢献するだろうということだ。このことは我々が提示する市民主導の刑事政策構想の中に含まれなければいけないことであるし、そこは『国が語れない』ところであるので、検討を重ねたい」と述べました。

他に中根真教授(本学・短期大学部、保育と予防ユニット長)から「コミュニティーが崩壊している現代社会における保育のあり方」、金尚均教授(本学・法学部、ヘイト・クライムユニット長)から「他者への赦しについて」、井上善幸教授(本学・法学部、矯正宗教学ユニット長)から「コロナ禍における宗教的行事の動向や傷ついた人に対するケア」、吉川悟教授(本学・文学部、対話的コミュニケーションユニット長)から「社会的孤立に対する心理学の立場から見た課題」についてそれぞれ話題が提供され、意見交換がなされました。


黒川雅代子教授(本学・短期大学部、犯罪学研究センター副センター長)

黒川雅代子教授(本学・短期大学部、犯罪学研究センター副センター長)

さいごに、黒川雅代子教授(本学・短期大学部、犯罪学研究センター副センター長)から閉会の挨拶がおこなわれました。黒川教授は「当センターは『人に優しい犯罪学』という切り口で多様な研究がなされている。話を聞いて、SDGsの提示する持続可能な達成目標に即した研究や実践が実際に行われていることを改めて実感した」と述べ、4日間にわたるサイドイベントは終了しました。

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【補注】
*1 各ユニットの詳細については当センターHPの下記のリンクを参照のこと。
[参照]研究体制について
・「犯罪と人間」https://crimrc.ryukoku.ac.jp/org/human.html
・「犯罪と社会」https://crimrc.ryukoku.ac.jp/org/society.html
・「犯罪と科学」https://crimrc.ryukoku.ac.jp/org/science.html
・「公募型プロジェクト」https://crimrc.ryukoku.ac.jp/org/research.html
[関連]
・犯罪学研究センターユニット長へのインタビュー等 https://crimrc.ryukoku.ac.jp/activity/
・政策評価ユニット(キャンベル共同計画) https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/
・科学鑑定ユニット対談
 1.https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-3612.html
 2.https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-4044.html
・犯罪社会学・意識調査ユニット(ISRD−Japan)https://crimrc.ryukoku.ac.jp/isrd-japan/

*2 龍谷・犯罪学のルーツのひとつに本学の母体である浄土真宗本願寺派が深く関わっている「教誨師」があげられる。本学は「教誨活動」を通して得た知見やネットワークをもとに「矯正・保護課程」を開設し、犯罪学研究の発展に寄与した。詳細は下記の記事も参照のこと
[参考]第32回 龍谷大学 新春技術講演会 ポスターセッションに参加【犯罪学研究センター】
龍谷発“つまずき”からの“立ち直り”支援〜明るい未来創造プロジェクト〜
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-7463.html

*3 [参照]龍谷大学におけるSDGsの取り組み https://www.ryukoku.ac.jp/sdgs/
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標のこと。2015年9月の国連サミットで採択された。龍谷大学は、SDGsと仏教の精神を結びつける「仏教SDGs」というコンセプトを2019年に提示。研究および社会への還元や社会との協働のプロセスを通して様々な組織と連携を図ることで、コレクティブ・インパクトの創出をめざし、社会変革の中核的担い手となることを推進することを目標にすえる。

*4意識調査・犯罪社会学ユニット(ISRD−Japan)や科学鑑定ユニット、そして治療法学ユニットは、アジア犯罪学会第12回年次大会に参加しテーマセッションを設け、その研究成果の一部を報告しました
[参照]ACS2020Program[PDF] https://acs2020.org/dl/ACS2020Program_June2021.pdf
科学鑑定ユニット:TS-02-1 Families under Surveillance: Child Abuse and Risks in Our Society
犯罪社会学・意識調査ユニット: TS11 First Results of the International Self-Report Delinquency Study (ISRD3) in Japan Overview
治療法学ユニット: TS18 An examination of legislative mechanism for cannabis control between Thailand and Japan: A cross-country comparison and analysis

*5 [関連]
「みんなで話そう京都コングレス2021〜龍谷コングレスに向けて〜」第2部開催レポート【犯罪学研究センター】国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)の歴史と開催意義を考える
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-8180.html

*6 [関連]
「みんなで話そう京都コングレス2021〜龍谷コングレスに向けて〜」第3部開催レポート【犯罪学研究センター】対人支援によって再犯防止をめざす、市民の、市民による、市民のための 龍谷独自の刑事政策構想の構築に向けて
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-8181.html

【参照】法務省トップページ  >  政策・審議会等  >  刑事政策  >  我が国の刑事司法について,国内外からの様々なご指摘やご疑問にお答えします。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/20200120QandA.html
「人質司法」の誤解アピール法務省、ゴーン事件受け世界へ動画発信(産経新聞、2021年3月7日記事)
https://www.sankei.com/affairs/news/210307/afr2103070013-n1.html

*7 [参考]
・「国連の人権巡る勧告、日本は死刑廃止など拒否 見解公表」(朝日新聞、2018年3月6日記事)
 https://www.asahi.com/articles/ASL357WL1L35UHBI05D.html
・UPR(普遍的・定期的レビュー)の概要(外務省)
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_002899.html


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