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2019年5月19日、「2019年度第1回龍谷大学法情報研究会」を本学深草キャンパス 紫光館で開催し、約10名が参加しました。
法情報研究会は、犯罪学研究センター「法教育・法情報ユニット」メンバーが開催しているもので、法情報の研究(法令・判例・文献等の情報データベースの開発・評価)と、法学教育における法情報の活用と教育効果に関する研究を行なっています。毎回、法や社会問題をテーマに多様な分野の専門家を講師に迎え、参加者との活発な議論が行われています。

今回は、社会言語学が専門の橋内 武氏(桃山学院大学国際教養学部 名誉教授)を講師に迎え、研究対象である社会的少数者(マイノリティ)を取り巻く問題について報告いただきました。
国の政策と法律によって社会的少数者(マイノリティ)が、どのような状況におかれているのか。橋内氏は3つの具体的なテーマを通じて、明らかにしました。


橋内 武氏(桃山学院大学国際教養学部 名誉教授)

橋内 武氏(桃山学院大学国際教養学部 名誉教授)


はじめに橋内氏が取り上げたテーマは「ヘイトスピーチの法と言語」です。本邦外出身者(特に在日コリアン)に対する差別的言動を受け、2016年に「ヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律 )」が施行されました。橋内氏は、言語学の観点からこの法律の条文の構造を分析し、ヘイトクライムを取り巻く課題について説明しました。
「一般に、法律の条文はテクニカルな叙述になっている。故に、法律に馴染みのない市民がヘイトスピーチ解消法の条文を読んで、その理念や内容をすぐに理解できるのか疑問である」と橋内氏は指摘します。法律の条文は明確性を旨とするため、あまりに冗長で複雑すぎるきらいがあります。また同法が禁止条項も罰則もない努力義務規定であることから、橋内氏は「実効性に疑問がある。将来的には、包括的人種差別撤廃推進法として国内法を整備する必要性があるのではないか」と主張しました。


つづいて、日本における社会的少数者(マイノリティ)の排除について忘れてはならない教訓として、「ハンセン病強制隔離政策下における療養生活や法制度の変遷」を紹介しました。とりわけ岡山県にある長島愛生園と邑久光明園を中心に、元患者の療養生活について解説がなされました。

橋内氏は「一般的に『予防』という言葉は、『病気や症状を未然に防ぐ』という意味で使用される。しかし『癩予防法(1931年施行)』と、この法を一部作り直した『らい予防法(1953年施行)』の『予防』とは、ハンセン病患者を療養所に収容し、社会から隔離させる意味合いで用いられていた」と指摘します。そして、1996年に「らい予防法の廃止に関する法律」が施行され、「らい予防法」の見直しが遅れたことなどについて当時の厚生大臣が謝罪。これまでの強制隔離政策も廃止されることになりました。しかし、長年に及ぶハンセン病療養所での生活に慣れ、再び社会で生活することに不安を抱く入所者も少なくありませんでした。ハンセン病患者に対する偏見、差別も直ちには無くなりませんでした。橋内氏は、岡山県にある邑久光明園にある納骨堂の写真をスライドに投影し、入所者の川柳(下記)を朗読しました。

「もういいかい 骨になっても まあだだよ(中山秋夫)」

かくれんぼの掛け声をもじったものですが、遺骨になっても出ていけないことを表しています。

強制隔離政策に人生を左右されたハンセン病療養所入所者の多くは、法律の撤廃後も回復者として帰郷が叶わないまま、施設で一生を終えることが少なくありません。また、今やほとんどが高齢者になっている入所者たちは、例外を除き自身の子どもを持つことができませんでした。「このような歴史的事実をいかに後世に伝えていくかが我々に託された課題である」と橋内氏は述べます。


さいごに、橋内氏が最近注目する問題として「日本語学校に通う留学生」の現状を紹介しました。外国人は、日本政府の許可がなければ日本には在留することができません。日本には「一在留、一在留資格の原則」があり、在留資格は一つしか持てません。日本語学校生は、2010年6月までは、「就学」ビザで来日していました。しかし、法改正の結果、2010年7月以降は大学院生・大学生・専門学校生と同じく「留学」ビザで在留することになっています。橋内氏は、この留学ビザと「資格外活動」としてのアルバイトが相矛盾した関係にあり、日本語学校が今や不法就労の温床になっているのではないかと主張します。

国内に存在する日本語学校は、法務省が認可する点で文科省が監督する教育機関と異なります。設置基準がやや緩く、会社法人などの事業体が参入し得たことから、2019年4月には全国に750校を数えるに至り、ますます増加傾向にあります。

一般的に、日本語学校の授業時間は「1日3時間×5日=週15時間」を満たせばよく、他方で「資格外活動」のアルバイトは「1日4時間×7日=週28時間」まで容認されています。つまり、学習時間よりもアルバイト時間の方が長いのです。さらには、長期休暇中は「1日8時間×5日=週40時間」までのアルバイトが認められています。橋内氏は実地調査の事例を通じて、労働力が不足している地方を中心に、日本語学校の留学生が宿泊業・飲食料品製造業・外食業・小売業などのアルバイトに従事している現状を報告。人手不足解消のために留学生が産業構造に組み入れられている点に危惧を示しました。その上で橋内氏は「日本語学校での週15時間の学習が『留学』という在留資格の前提であるのならば、当然アルバイトは週15時間未満に短縮するべきであるし、かつ、アルバイトと『特定技能1号』の区別を明確にすることで雇用上の配慮をすべきである」と指摘します。
そして、日本語学校の監督官庁を明確化することで教育の質向上と、学生が過度なアルバイトをせずに留学生活を送れるようなサポート(学校への助成や学生への奨学金)の必要性を主張し、報告を終えました。
(なお、日本語学校の監督官庁は、新設の出入国管理在留庁となったとのこと。)


中村 有利子氏(本学法学部教務課・ローライブラリアン)

中村 有利子氏(本学法学部教務課・ローライブラリアン)


法情報研究会のようす

法情報研究会のようす

休憩を挟み、犯罪学研究センター「法教育・法情報ユニット」の中村 有利子氏(本学法学部教務課・ローライブラリアン)が前年度の活動報告を行い、また、今年度の活動計画として、2019年12月頃に「龍谷大学法教育フェスタ2019」と題し、一般市民向けのイベントを開催することを提案し、研究会メンバーに了承されました。
(イベントは詳細が決まり次第、犯罪学研究センターHPで告知します)

◎次回の法情報研究会は、7月31日に開催を予定しています。
詳細は下記ページを参照ください。

「2019年度第2回 龍谷大学法情報研究会 公開研究会」
日程:2019年7月31日(水)18:00~20:30
場所:龍谷大学 紫光館 4階401教室
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-3620.html


 2019年6月15日(土)~16日(日)、政策学部の「政策実践・探究演習(国内)」福知山プロジェクトの合宿を行いました。政策学部2回生5名、3回生9名と教員2名が参加し学修を深めることができました。

 合宿1日目は、福知山市大江町毛原でのフィールドワークを実施しました。毛原自治会2名と福知山市市民協働課の2名の方に集落入口で出迎えていただき、小雨の降る中、自治会長の櫻井氏のご案内で1時間ほど集落内を散策しました。高低差が激しく上から見る棚田の景観がすばらしいものでした。
 散策後に公会堂にて昼食(鬼にぎり弁当)、午後から自治会長の講演を伺って質疑応答を行いました。毛原集落は人口29人の小さな集落で、棚田の景観が美しく、20年をかけ多様な取組を積み重ねて来られました。農地の基盤整備事業がうまくいかなかったことが、逆に「美しい棚田」を保全し脚光を浴びることになったということです。また、滋賀県から移住された方のお話では、20年前農業体験で訪問し、あまりにもお米・お酒が美味しく移住者受け入れの雰囲気もあり、年月をかけて徐々に移住したということでした。
 様々な取組や移住者受け入れの雰囲気づくりの基本となるのは、集落の中で自治会の会合でも近所の立ち話でも継続して「熟議」がなされてきたことです。本プロジェクトの中心的なテーマである「話し合いがまちを変える」のモデル事例といえます。学生たちはお二人のお話に熱心に耳を傾け、積極的に質問し、毛原集落の事例から熟議の重要性など多くのことを学ぶことができたようです。


毛原集落でのフィールドワーク


自治会長の案内で集落内を散策


自治会長から取組について伺い、質疑応答(毛原公会堂にて)


自治会長から取組について伺い、質疑応答(毛原公会堂にて)

 夕方からは福知山の旧市内に移動し、グループに分かれて「まちあるき」を行う予定でしたが、あいにくの豪雨で予定通りに歩くことができませんでした。夜は、毛原集落での学びの成果がプロジェクトの到達目標の中にどう位置付けられているか、というテーマで約2時間の活発な議論を行い、充実した1日となりました。ⅡA生(2年目の履修生)からは、「こういう合宿がしたいと考えていた」という感想もありました。
 
 合宿2日目は、福知山消防防災センターにて、福知山公立大学の学生10名とともにファシリテーション研修を行いました。9月に予定されている福知山市「次世代交流ワークショップ」という一般市民の話し合いの場で、学生がファシリテーターを担うことになっており、そのためのスキルアップ研修です。午前は外崎祐実氏を講師に、アイスブレーク、ファシリテーション・グラフィックの技法を、午後は西川実佐子氏を講師にホワイトボード・ミーティングの技法を研修し、全員がファシリテーターあるいはグラフィッカーとして市民の話し合いの場に立つ準備をしました。
 今後は、熟議の重要性をよく認識し、ファシリテーション及びグラフィックのスキルを高めていけるよう、日々の講義やワークショップの中で練習を積んでいきます。次回合宿はいよいよ9月「次世代交流ワークショップ」の本番です。各自が主体的にワークショップに参画できるよう準備を進めつつ、学びを深めていきます。

※ファシリテーター: 話し合いがスムーズに進むよう進行する役
 グラフィッカー : 話し合いの過程が参加者に見えるよう記録しまとめる役


グラフィック・レコードの書き方を講師から教わる


研修最初のアイスブレーク


ペンの使い方から練習


ホワイトボード・ミーティングの実習(全員がファシリテーターに)


ホワイトボード・ミーティングの実習(全員がファシリテーターに)


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