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龍谷大学 犯罪学研究センターは、犯罪予防と対人支援を基軸とする「龍谷・犯罪学」を構築し、日本国内だけでなく、広く世界にアピールしていくことを目標に掲げています。
犯罪学研究センターでは、現在までの研究成果を踏まえて英語でのトライアル授業を2018年10月より2019年1月まで8日程(全15コマ)にわたって開催してきました。
この授業は、欧米諸国では「犯罪学部」として学問分野が確立されている領域を、世界で最も安心・安全とされる日本社会の中で独自に捉え直す試みで、新たなグローバル・スタンダードとしての「龍谷・犯罪学」を目指して、全回英語で実施しています。
龍谷犯罪学セミナー(Ryukoku Criminology in English)【>>実施詳細】

2018年12月22日(土曜)、本学深草キャンパス至心館1階にて、第6回「Ryukoku Criminology in English –Let’s study the Criminal Justice System in the secure and safe society-」を開催しました。講師は甲南大学法学部の笹倉香奈教授(犯罪学研究センター客員研究員)で、テーマは「Criminal Justice System Ran by Prosecutors? -Some Peculiar Features of the Japanese System and its “Reforms”」で、日本の検察官の役割と現状、司法制度改革の現状とその課題について紹介されました。

基本情報:
Ryukoku Criminology in English –Let’s study the Criminal Justice System in the secure and safe society-
Dec 22nd (Sat) <2 lectures (13:15-14:45/15:00-16:30)>
Kana Sasakura (Guest Researcher of Criminology Research Center / Professor of the Faculty of Law at Konan University)
“Criminal justice system ran by prosecutors? -Some peculiar features of the Japanese system and its “reforms””



はじめに、検察官の役割です。日本の検察官は事案の捜査、犯罪の起訴、刑罰を主導しており、刑事手続きのすべての段階に関与します。日本の刑事司法は「検察官の楽園」とよばれることもあります。刑事事件の有罪率は99.9%です。これは、検察官が起訴する事件を非常に慎重に峻別しているためと言われていますが、問題はないのでしょうか。
具体的に検察官はどのようなことをしているのでしょう。制度を確認してみましょう。警察官は検察官と相談するなどして逮捕するかどうか、そしていつ逮捕するかを決めます。警察が被疑者を逮捕すると、検察庁に送るかどうかを48時間以内に決めなければいけません。そして被疑者が検察庁に送られると、検察官がさらに身体拘束が必要であると考えた場合、裁判官に対して勾留請求を24時間以内にしなければなりません。勾留期間は原則10日間ですが、これは一度に限り延長できますので最大で20日間勾留される可能性があり、被疑者は最大で23日間取調べを受けることとなります。勾留請求が行われたばあいに裁判官が審査するのですが却下はまれです。「人質司法」は国内外から批判されています。
日本では、検察官も被疑者の取調べを行います。供述を引き出すことはいまだに重要な仕事のひとつとされています。検察官は被疑者などの供述を聞いた上で、検察官自身が作文した「調書」を作成します。こうした捜査ののち、検察官は被疑者を起訴するかどうか決めます。その後、事件は裁判所に係属します。
検察庁には決裁制度と呼ばれるシステムがあります。検察官が起訴するかどうかなど何かを判断する際、上司による決裁を経ます。一方で、捜査の結果、証拠不十分や嫌疑不十分などによって不起訴となるケースもあります。検察官は事件の結果について大きな裁量権をもっています。それでは、その権限のコントロールをする手段はあるのでしょうか。
起訴されなかった事例については、検察審査会と準起訴手続(付審判請求)という制度があり、不起訴という処分が妥当だったか、見直しをすることができます。しかし、検察審査会は毎年2000件ほどの事件を受理するものの、そのほとんどが「不起訴相当」となり、検察官の判断を是認する結果となっています。付審判請求が認められることもほとんどありません。
検察官は日本の刑事司法制度の中心的存在であり、その権力は捜査、起訴、判決の執行にわたって非常に強力であり、外部からのコントロールはほとんどされていない状態であるといえます。
こうした状況については改革の必要性が指摘されています。実際にも、被疑者取調べの録音・録画制度や証拠開示については若干の改革がなされていますが、不十分です。そこで、次に最近の司法改革について見ていきたいと思います。


笹倉香奈教授(甲南大学法学部・犯罪学研究センター客員研究員)

笹倉香奈教授(甲南大学法学部・犯罪学研究センター客員研究員)


21世紀に入って、2004年と2016年に大幅な司法制度改革が行われました。2004年の司法制度改革では様々な改革がなされ、裁判員制度も導入されることとなりました。しかしながら、この司法制度改革では捜査手続についてはなんら改革がおこなわれませんでした。結果として、日本の刑事手続が検察主導で行われ、その手続が透明性に欠けるという問題点は維持されることとなりました。その後、2000年代には氷見事件、志布志事件、足利事件、村木事件などの冤罪事件が相次いで発覚しました。このことが刑事司法改革のきっかけとなります。法制審議会に司法制度の改革について検討するための特別部会が設置され、議論の結果、2016年に1)裁判員裁判事件、特捜事件の対象となる事案の被疑者に対する取調べの録音・録画の義務化、2)捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる「日本型司法取引」制度)及び刑事免責制度の導入、3)通信傍受の効率化、4)証拠開示制度の拡充、5)犯罪被害者・証人の保護などの改正がなされました。
この改革の背景は、冤罪の被害でした。しかし、たしかに改革のいくつかは適正手続と刑事捜査の透明性を担保するためのものですが、多くは検察など捜査機関側の権力を増大させるためのものです。特に協議・合意制度(司法取引)は新たな冤罪を生みうる、非常に危険な制度でもあります。
日本の刑事司法には数多くの問題があり、「検察官司法」の改革には残念ながらなりえていないでしょう。

本講義の終了後のアンケートでは「大変興味深い講義でした。いかに、検事中心の刑事司法を変えていけるのか、その方法を引き続き考えていただきたいです」などご意見をいただきました。日本の刑事司法の現状、改革と問題点について学ぶ、非常に有意義な機会となりました。


【本件のポイント】
・「揺さぶられっ子症候群(Shaken Baby Syndrome。以下、SBS)」と「虐待による頭部外傷(Abusive Head Trauma, AHT)」は、昨今の児童虐待問題との関連で注目されているトピックです
・諸外国ではSBS/AHSの診断について、医学的根拠があるのかどうか疑問が呈されていますが、こうした世界的潮流がこれまで日本で紹介されてきませんでした
・諸外国の専門家や国内の専門家の議論を、一般市民から専門家にむけた公開シンポジウムの場で行うことで、この問題について幅広く周知し、議論することが期待できます

 家庭内で子どもが頭の中に出血を起こしたとき、親の虐待が疑われることがあります。親が子どもと引き離されたり、逮捕起訴されたりしてしまうことも起きています。「揺さぶられっこ症候群(SBS)」「虐待による頭部外傷(AHT)」といわれ、虐待だとされてしまうのです。
 このような状況に、諸外国では疑問が呈されています。日本でも、子どもを虐待したと誤って判断される事例があるとの懸念が高まっています。
 虐待は許されませんが、えん罪も許されません。どこが問題点なのか、これから何を研究していけばいいのかを冷静に検討することが必要です。
 本シンポジウムでは、SBSとAHTについて科学的な観点から議論したいと思います。

1.日時:2019年2月14日(木)13:00~18:00(開場12:30)

2.場所:朝日大学5号館512講義室  (〒501-0296 岐阜県瑞穂市穂積1851) 

3.内容:「揺さぶられっこ症候群(SBS)」、「虐待による頭部外傷(AHT)」に関する虐待やえん罪の問題点について、海外の専門家とともに考えます。

<海外ゲスト>
ウェイニー・スクワイア(Dr. Waney Squier)
 元オクスフォード大学ジョン・ラドクリフ病院医師(神経病理学)

アンダース・エリクソン(Dr. Anders Eriksson)
 ウメオー大学(法医学)

4.主催 龍谷大学犯罪学研究センター、岐阜県弁護士会、中部弁護士連合会、日本弁護士連合会

5.共催 SBS検証プロジェクト、えん罪救済センター、龍谷大学刑事司法未来プロジェクト(弁護士金子武嗣基金)、甲南学園平生記念人文・社会科学研究奨励助成金「児童虐待事件における冤罪防止のための総合的研究」

6.補足:
※1.参加費は無料ですが、事前申込制となっております。
【申込み方法】
 〇ネット申込: https://goo.gl/forms/HJI9BDKygyg5rg153 にアクセスし、Googleフォームに必要事項を登録ください。
 〇Fax申 込:龍谷大学犯罪学研究センター(Fax 075-645-2240)まで、「2/14 岐阜SBS/AHTシンポジウム参加希望」を件名にして、お名前・ご所属・連絡先を明記の上、送信してください。
※2.本シンポジウムのチラシは、龍谷大学犯罪学研究センターHP上にて公開しております。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/archives/001/201812/190214_SBSsympoFlyer_181218ver.pdf

問い合わせ先 : 龍谷大学 犯罪学研究センター 
 [TEL] 075-645-2184 [FAX]075-645-2240
 [E-mail]mailto:crimrc2016@ad.ryukoku.ac.jp  
 [URL] https://www.ryukoku.ac.jp/crimrc/


 2019年2月3日(日)~4日(月)に福知山プロジェクトの活動の締めくくりしてスタディツアーを実施し、学生21名(1回生2名、2回生13名、3回生5名、4回生1名)、教職員2名が参加しました。福知山市は旧市内の他、三和町・大江町・夜久野町が合併して成立した京都府北部地域に拡がる市です。今回のスタディツアーでは、旧市内中心地のまちあるきに加え、旧3町のうち2町を訪問するという企画に挑戦しました。福知山駅から貸切バスで南に30分以上かかる三和町に宿泊し地域のお話をきき、さらに北へ1時間近くかかる大江町でフィールドワークを行うことにより、参加学生は福知山がいかに広いかを体感しました。以下、実施内容についての詳細を報告します。

1)福知山中心地でのまちあるき
 4人グループをつくり徒歩で歩ける範囲のまちあるき。1回生に福知山を紹介し、プロジェクト生との交流を深めることが目的です。昼食をとりつつ、市の中心部にある福知山城、商店街、若者に人気のカフェ等を2時間ほど巡り、どんな雰囲気の都市なのか、観光資源は何なのか、活気はどうか、実際に歩きながら体感します。1回生は先輩学生に積極的に質問し、楽しく交流を深めました。

2)福知山地域まちづくり講座
 午後から、市民交流プラザふくちやま4Fにおいて、まちづくり推進課企画の「地域まちづくり講座」に参画しました。参加者は、一般市民17名、まちづくり推進課3名、学生21名、教職員2名の計43名となりました。
 担当課長の挨拶に続き、学生からの報告を20分ほど行いました(写真①)。1年間どういった活動を行ったか、福知山市と守山市の違いと共通する課題、9月に実施した次世代交流ワークショップの参加者アンケート結果、まちづくり仕掛け人になるためのステップをどう踏んでいくのか、といった学生なりの考えを発表しました。市民の方からは、「目的を明確に持ち活動できていて良い、次はやる気のある市民を涵養するようになってほしい」「発表自体はたどたどしいが内容は良かった」「福知山市と守山市の現状をよく分析し課題を掴んでいる」「次世代交流WSの大切さがよく分かった」といった感想に加え、「学生自身が活動を通して何を感じたのか、何を得たのかをもっときいてみたかった」という助言もいただきました(参加者アンケートより)。学内での発表会と異なり、次世代交流ワークショップ参加者や一般市民参加者を目の前にして、発表者は緊張している様子でしたが、難しい質問にも何とか答えようと努力している姿に会場から暖かく包むような視線が注がれていました。
 続いて、只友政策学部長(本プロジェクトの担当教員)から市民参加者を対象に「まちづくりを仕掛ける―地域を元気にするにはどうしたらよいか、まちづくりに多くの人が関わるためには?-」というテーマで約90分の講演を行いました(写真②)。参加者アンケートでは、「仕掛け人の力量かつ仕掛け人の要請が重要と考えた」「難しい課題を興味深く話していただいた。話に具体性があり、実践されていただけに説得力があった」「地域でもファシリテーショングラフィッカー養成講座を開いてほしい」「消費化する市民でなく、参画し話し合いに参加する市民を養っていく重要さがよくわかった」「何度か先生の講演をきいているが、また新しい話をきくことができた」「自治会運営について(学生でもよいから)アドバイザーになってほしい」といった意見をいただきました。
 参加学生からは、「1年間(あるいは2年間)学んできたからこそ、話の内容が理解できるようになった」「プロジェクトの当初には理解できなかったことがわかるようになって嬉しい」といった声が挙がっています。「話し合いがまちをつくる」ということの真の意味について、現場体験を積むことによって(少しずつ)理解できるようになったようです。「政策実践・探究演習」という科目の学修の意義はこういうことにあると思います。現場経験と理論的な学修を交互に何度も往復することによって、学びは深くなっていくのではないでしょうか。
さらに嬉しいことに、プロジェクト修了生が2名、宮城県と兵庫県から福知山まで駆けつけてくれました。社会人となり「まちづくり仕掛け人」として仕事や活動で関わるにあたり、プロジェクトでの学びを振り返り、只友先生の講演を改めてきくことで「兜の緒を締めたい」とのこと。このように、在学生も履修が終わってからでもプロジェクトに多様な関わり方を続けることによって、自身の活動に活用してもらえればと心から願います。

3)三和地域協議会の取組に関する講演会
 中心地から貸切バスで三和町にある宿泊施設に移動。この三和荘は市の指定管理者が運営する宿で、地域住民も法事や会合、日帰り入浴などでよく利用するそうです。地域の取組を知るには最適な場所です。19時から約1時間半、三和地域協議会の岡部事務局長から、三和の取組についてスライドを見ながらお話を伺いました(写真③)。岡部氏は元市職員で三和支所長も勤められた方です。30分の講演のテーマは「みんなで知ろう、三和のこと」とあり、三和町の課題、住民の視点からの市への提案、市民協働、地域協議会、独自の交通システム、工業団地のこと等非常に幅広く詳細な情報を提示いただきました。参加学生から次々と質問が出され、あっという間に時間が過ぎていきました。来年度は三和地域でのフィールドワークを実現したいと思います。

4)地域資源発見のためのフォトロゲイニング
 2日目の朝、お世話になった三和荘を後にし(写真④)、大江町の元伊勢神宮内宮地区へ。大江は鬼の里、大江山の鬼で有名な場所です。さらに、この内宮集落は元伊勢内宮皇大神社の参道にあり、遠方からも参拝客が訪れます。集落内にあるいずみ屋は、古民家をリノベーションした地域おこし協力隊員の方のオフィスとして利用されています。今回のフォトロゲイニングの本部をここに置かせていただきました。いずみ屋を出発してグループごとに元伊勢内宮周辺を散策し、お題の写真にある場所(建物、石、看板など)を探し、見つけたら撮影して得点を競います。この研修は、地域資源を発見する目を養うことを目的に、福知山プロジェクトでは毎年続けています。ツアーの企画学生は事前に下見して撮影し、準備を進めてきました。表彰式の後、最後のミーティングでは全員が「充実した学びがあった」「楽しんだ」「2年間履修してよかった」など感想や、「講座での発表は緊張してうまく話せなかった」「企画班として段取りが悪かった部分もある」といった反省、そして企画班への感謝も述べられ、学生個々の思いを全体でシェアしました。

 今回のスタディツアーは多くの方にご協力いただき大変充実したものになりました。まちづくり講座にご参加いただき学生の報告に耳を傾けてくださった市民の方々、福知山市まちづくり推進課の松井様をはじめ課員の方々、講演いただいた三和地域協議会事務局長の岡部様、居場所を提供いただいたいずみ屋様、昼食をいただきながら移住についてお話くださった鬼そば屋の佐々井様など、学生のスタディツアーに全面協力いただきました。ここに感謝の意を表します。どうもありがとうございました。


写真① 学生による1年間の活動と学びについての報告


写真② 「まちづくりを仕掛ける」をテーマに講演する只友教授


写真③ 三和地域協議会の岡部事務局長(右)による講演・質疑応答(初日夜、三和荘にて)


写真④ 参加学生(2日目朝、三和荘を出発)


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