龍谷大学

東日本大震災等への本学の対応について

  • 教育・研究面での取り組みについて
  • 復興支援活動について
  • 募金活動について
  • その他の取り組みについて
  • 被災された在学生への支援について

学長メッセージ -東日本大震災五年目をむかえて-

私たちは、2011年3月11日の地震、津波、東京電力福島原子力発電所事故など東日本大震災から5年目をむかえました。震災で亡くなられた人は1万5894人、行方不明者は2561人、震災後の体調悪化や自殺による震災関連死は3407人です。避難者は17万4千人、仮設住宅の入居戸数約5万4千戸に上ります。ことに福島県では、地震・津波により被災された方、原発事故に伴う避難区域の設定により避難を余儀なくされた方など、未だ8万6千人もの方が県内外で避難生活を続けておられます。(警察庁2016年3月10日発表、復興庁2月28日発表)

私たちは、改めて犠牲となられた2万人を超える一人ひとりに、ご家族に心から哀悼の意を表するとともに、避難を余儀なくされ、故郷から離れて暮らされている皆さま、約17万4千人の皆さまにお見舞い申しあげます。1日も早く平穏な暮らしが戻られますことを切に念じております。また、被災地、被災者へのさまざまな支援、インフラ整備などに取り組んでおられるすべての皆さまのご尽力に心から敬意を表します。

本学では、2011年6月から龍谷大学ボランティア・NPO活動センターが中心となって大震災後の復興支援に向けて長期的な視野に立って、不断の実践と対話・交流を重ねてまいりました。その一つに、ボランティアバスによって被災地に出かけた学生教職員は、約500人に上ります。学生の意欲的な被災地・被災者への支援の思いは深く、多くことを学ぶとともに、被災地から学生に寄せられる期待も大きく、学生の主体的な活動を支援しながらの試行錯誤の5年間でありました。学内からも文学部の斯文会や事務職員会、そして卒業生の会である校友会、保護者の会である親和会からも多くのご支援を寄せて頂いて、学生によるボンランティア活動を継続しています。

私は、去る2月22日から24日にかけて、ボランティア・NPO活動センターが企画した福島スタディツアーに学生たちと出かけました。南相馬市から南に下って、国道6号線の帰還困難区域では、被災当時のままで、人の姿をみることなく、除染作業に取り組まれている方々と、各地に積み上げられた黒い袋(除染廃棄物を入れたフレコンバック)の景色が状況を物語るものでありました。避難を余儀なくされている方から、自宅の様子を案内いただきましたが、自宅周辺での放線線量は低くなっているものの、雨樋下では線量が高い状態にあることを、線量計を使って説明していただきました。かつて江戸後期に兵庫県赤穂から開拓に入り、営々と耕作地をつくり、農業を中心とした生活は二百年を過ぎるとお聞きしました。大きな広い家の座敷には、浄土真宗の立派な仏壇が安置され、屋敷地は除染されながらも、周辺の広大な土地・山がそのままになっている現状を見れば、いつ帰ることができるかもわからないもどかしさ、無念さ、そして東京電力への怒りを語っておられました。

また、学生らは浪江町の皆さんの仮設住宅を訪れて交流を行い、被災者からのお話に耳を傾け、メディア情報だけでは伝わらない、言葉にすることができない真実があることを学びました。学生らは被災地の厳しい現実を目の当たりにして、そこにわが身を置いて「重ね描く」ことによって、遠く離れた京都での日常生活の中では感じることのない人の痛み、悲しみが解る豊かな人間性を培われたと思っています。当事者にはなれないものの、被災された皆さんに寄り添い、「重ね描く」営みは、私たちがそれぞれの場所で家族や親子、地域など関係を改めて見つめなおす大きな機縁になっています。

本学は、「真実を求め、真実に生き、真実を顕す」ことでのできる人間の育成をめざしています。本学の建学の精神、浄土真宗のみ教えである阿弥陀仏のはたらきの中で、自分さえよければいいという閉ざされた自己愛、功利的な自己中心主義等を転換して、いのちの連帯性、「同朋」「われら」という開かれた地平に立って、現代社会の諸課題に真摯に向きあうことが大切です。それが本学の建学の精神に醸成される人間のあり方であると、確信するものであります。

東日本大震災にともなう東京電力福島第一原発の事故は、核の平和的利用を掲げ、安全神話で覆っていた核エネルギーに依存した産業構造、核に関わる科学技術力の閉鎖性、社会の効率や利便追求のあり方、過剰な電力消費の生活や広告照明のあり方などを含め、日本のみならず世界に対しても近代的文明観を根源的に見直す・問い直す契機となりました。

ことに地震列島である日本の国土に住む私たちは、東京電力福島第一原発の取り返しのつかない重大事故の原因を地震や津波に求め、過ぎたことにしてはいないでしょうか。しかたがなかったことにして、忘れようとしてはしていないでしょうか。リスクの甚大さを軽視してはいないでしょうか。今日、いくつかの原子力発電所で再稼働への動き・手続きが進んでいます。私たちに立ちはだかる大きな課題にたじろぎながらも、50年後、100年後の未来を見据えた新たなエネルギーへの方向性、自然再生エネルギーへの転換に向けた希望ある未来社会への一歩を踏み出すことが大切です。本学では、深草キャンパス2号館屋上、和歌山県印南町、そして三重県鈴鹿市に社会貢献型「龍谷ソーラーパーク」を稼働させ、自然再生エネルギー活用の方途を提起しています。総発電量は、全国の大学のなかでも随一と言えます。

私たちは、建学の精神にもとづき多くの皆さまと対話・交流を重ね、信頼の社会関係を築きながら、広くネットワークを形成して課題に真摯に取り組み、持続可能な社会を切り拓いていきたいと願っています。そして、今後も継続的に大震災復興支援活動に取り組んでいきたいと考えています。どうぞ、皆さまのご支援とご協力を賜りますようお願い申しあげます。

2016年3月11日
龍谷大学学長 赤松 徹眞


学長メッセージ -東日本大震災四年目をむかえて-

私たちは、2011年3月11日の東日本大震災から4年目をむかえました。改めて犠牲となられた1万7千人を超す一人ひとりに、ご家族に心から哀悼の意を表するとともに、避難を余儀なくされ、故郷から遠く離れて厳しい生活をおくられている皆さま、約22万9千人の皆さまにお見舞い申しあげます。1日も早く平穏な生活が戻られますことを心から念じております。また、被災地、被災者へのさまざまな支援、インフラ整備などの復興に取り組んでおられるすべての皆さまのご尽力に深く敬意を表します。

私たちは、建学の精神、浄土真宗のみ教えである阿弥陀仏のはたらきの中で、自己中心性を自明視している自らのあり方、底なしの欲望充足、価値観等を見直し、いのちの連帯性、「同朋」であるという広い視野に立って、大震災後の具体的な諸課題に向きあうことが大切です。

本学では、ボランティア・NPO活動センターが中心となって大震災後の復興のための取り組みについて長期的活動を視野に入れつつ不断の実践と対話を重ねてまいりました。被災地から学生へ寄せられる期待は大きく、学生の主体的な活動を支援しながらの試行錯誤の4年間でありました。結果として400人を超す学生、教職員が現地に赴き、多彩な活動を展開することとなりました。彼らは被災地の現場に立ち、被災した多くの皆さまとの交流・対話によって、メディア情報だけでは伝わらない、言葉にすることができない真実があることを学びました。被災地の厳しい現実を目の当たりにして、そこにわが身を置いて「重ね描く」ことによって、遠く離れた京都での日常生活の中では感じることのない深い思い、人の痛みが解る豊かな人間性が育てられています。当事者にはなれないものの、そこに思いをはせ、「重ね描く」営みは、今私たちがそれぞれの場所で家族や親子、地域など関係を改めて見つめ直し、新たな公共形成などの大きな機縁になっています。昨年4月から、本学の実践真宗学研究科では、被災地の皆さんに寄り添う実践事例を踏まえて東北大学文学研究科と連携して建学の精神を具現化する「臨床宗教師」養成プログラムが発足しました。また、この度、深草キャンパスの「和顔館」の開館にあたり、宮城県石巻市雄勝町で泥にまみれた「雄勝硯」の洗いなどのボランティア活動に取り組んでいたご縁で、「雄勝石」を地下中庭に敷くことになりました。

さて、東日本大震災にともなう東京電力福島原子力発電所の事故は、豊かな国土を深刻な放射能で汚染し、大量の汚染水を出し続けています。原発事故は、核の平和的利用を掲げ、安全神話で覆っていた核エネルギーに依存した産業構造、核に関わる科学技術力、社会の効率や利便追求のあり方、過剰な電力消費の生活などを含め、日本のみならず世界に対しても近代的文明観を根源的に問う契機となりました。

去る3月9日に来日したドイツのアンゲラ・メルケル首相は、物理学者でもありますが、東京電力福島原子力発電所事故から深く学び、原発稼働の延長を決めていたドイツのエネルギー政策の大転換をはかり、2022年までの原発全廃を政治決断したと語り、日本とドイツが「脱原発」で足並みをそろえるべきだとの考えを示しています。地震列島に住む私たちの日本では、取り返しのつかない重大事故から何を学んだのでしょうか。リスクの甚大さを軽視してはいないでしょうか。放射能汚染により国土、地域から多くの人びとを離散させた深刻さをどのように認識するのでしょうか。今日、いくつかの原子力発電所で再稼働への手続きが進んでいます。私たちは立ちはだかる大きく、長期にわたる諸課題に直視しながらも、新たなエネルギー制度、自然再生エネルギーへの転換に向けた一歩を踏み出すことが大切です。本学では、「龍谷ソーラーパーク」を稼働させ、自然再生エネルギー活用の方途を提起しています。

私たちはすべてのいのちを輝かしめたいとの南無阿弥陀仏のお心を受けとめ、多くの皆さまと対話を重ね、粘り強く信頼関係をつくりながら、恵まれたいのちを大切にするネットワークを形成して持続可能な日本社会を切り拓いていく。そして、今後も復興支援活動に取り組んでいきたいと考えています。どうぞ、皆さまのご支援とご協力を賜りますようお願い申しあげます。

2015年3月11日
龍谷大学学長 赤松 徹眞


学長メッセージ -東日本大震災三年目をむかえて-

東日本大震災から3年目をむかえました。犠牲となられた1万7千人を超す一人ひとり、ご家族に心から哀悼の意を表するとともに、避難を余儀なくされ、故郷から遠く離れ厳しい生活をおくられている皆さまにお見舞い申しあげます。1日も早く平穏な生活が戻りますことを念じております。また、今もって行方不明の皆さまの捜索、被災者の生活支援、インフラ整備などに取り組んでおられるすべての皆さまのご尽力に心から敬意を表します。 本学では、大震災後復興のための取り組みについて長期的活動を視野に入れつつ不断の実践と対話を重ねてまいりました。被災地から学生へ寄せられる期待は大きく、学生の主体的な活動を支援しながらの試行錯誤の3年間でありました。結果として300人を超す学生、教職員が現地に赴き、多彩な活動を展開することとなりました。

彼らは被災の現場に立ち、被災した多くの皆さまとの交流・対話によって、メディア情報だけでは伝わらない、言葉にすることができない真実があることを学びました。たとえば子を失った親、親を失った子、家族の離散など、こうした人たちのつらく悲しい、痛ましい困難な事態を目の当たりにして、そこにわが身を「重ね描く」ことによって、遠く離れた京都での日常生活の中では感じることのない深い思い、人の痛みが解る豊かな人間性が育てられています。当事者にはなれないものの、そこに思いをはせ、「重ね描く」営みは、今私たちがそれぞれの場所で家族や、親子という関係を改めて見つめなおす大きな機縁になっているのです。

私たちは、建学の精神、浄土真宗のみ教えである阿弥陀仏のはたらきの中で、お互いがいのち恵まれた存在であり、いのちの連帯性、「同朋」であるということに気づき、そのことの価値をカジノ資本主義が跋扈し、「豊かさの中の貧困・格差」が顕在化し、底なしの欲望が膨張する現代社会に向かって積極的に発信する社会的責任を有しており、その伝統を継承していくことに大きな意味があると考えています。

3月11日の東京電力福島原発の事故は、豊かな戦後を歩んできた日本社会の効率、利便追求のあり方、過剰な電力消費の生活や広告照明のあり方、地球温暖化や環境破壊などをもたらす暮らしのあり方、安全神話に覆われていた放射性物質を使用する核エネルギーへの依存など日本のみならず世界に対しても近代的文明観を見直すきっかけとなりました。この大きな問題を前に、私たちはこの課題を直視して、解決への新たな方向への一歩を踏み出せているかと忸怩たる思いを抱いて自問しています。しかし、たとえ今は闇の中で解決しうる道が見いだせなくても、じっくりと考え、他の方々の意見を聞き、先人の歩みを学ぶ中で、本質を問い繰り返し学び続けていく姿勢こそが、龍谷大学の伝統ある歩みではないかと思います。

私たちはいのちを輝かしめたいとの南無阿弥陀仏のお心を受けとめ、取り組むべき課題に真摯に全力投球をしていく。そして、多くの皆さまと対話を重ね、粘り強く信頼関係をつくりながら、今後も復興支援活動に取り組んでいきたいと考えています。どうぞ、皆さまのご支援とご協力を賜りますようお願い申しあげます。

2014年3月11日
龍谷大学学長 赤松 徹眞


学長メッセージ -東日本大震災二年目をむかえて-

東日本大震災の発生から二年が経過しました。その後、お亡くなりになられた方々を合わせますと、2万人を超える尊い命が奪われるという未曾有の大災害になっております。東日本大震災の二年目をむかえ、犠牲となられたみなさまに改めて心から哀悼の意を表します。

また、地震と津波の被害、さらには、福島第一原子力発電所事故により避難を余儀なくされ、不自由で不安な毎日を過ごされている方々は、依然として膨大な規模におよんでいます。大震災の発生から二年が経過した今も、復興が進んでいるとはまだまだ言える状況ではありません。

龍谷大学の建学の精神は、親鸞聖人の教えにもとづく浄土真宗の精神です。私たちは、建学の精神の具現化として、この二年間、大学としてなし得る活動が何かを模索しながら、復興支援の取り組みにあたってきました。多くの学生、院生、卒業生、保護者、そして教職員のみなさんが、ボランティア精神にもとづき、多彩な活動を展開してきました。大学主催のボランティアバスも継続し、今年度は「見て、聞いて、感じて、伝える」をテーマに支援活動をおこなってきました。震災の事実を風化させることなく、取り組みを継続させることがますます重要になってきています。何よりも、被災者と被災地の要望をしっかり受けとめ、一層の創意工夫を重ねつつ、復興支援の活動に取り組む重要性を痛感しています。

龍谷大学は今後とも息の長い復興支援の活動を志してまいりたいと考えています。どうぞ、みなさまの温かいお心とご協力を賜りますようお願い申しあげます。

2013年3月11日
龍谷大学学長 赤松 徹眞


学長メッセージ -東日本大震災一周忌をむかえて-

東日本大震災の発生から一年が経過しました。お亡くなりになられた方々は1万5800人を超え、いまなお行方不明の方々も3300人を超えています。昨年の3月11日以後、被災されたことが原因でお亡くなりになられた方々を合わせますと、2万人を超える尊い命が奪われるという未曾有の大災害になりました。東日本大震災の一周忌をむかえ、犠牲となられたみなさまに改めて心から哀悼の意を表します。

また、地震と津波の被害、さらには、福島第一原子力発電所事故により避難を余儀なくされ、不自由で不安な毎日を過ごされている方々は、依然として膨大な規模におよんでいます。大震災の発生から一年が経過した今も、復興のあゆみは困難をきわめ、被災者と被災地への継続的な支援の必要性は、いささかも衰えていない状況にあります。この機会に改めて、すべての被災者のみなさまに、心よりお見舞いを申し上げる次第です。

龍谷大学は、この一年間、大学としてなし得る活動が何かを模索しながら、復興支援の取り組みにあたってきました。多くの学生、院生、卒業生、保護者、そして教職員のみなさんが、ボランティア精神にもとづき、多彩な活動を展開してきました。ボランティアバスの運行、被災地物産品の販売、東日本復興支援フォーラムの開催、大学としての専門性を生かした被災地での様々な支援活動、募金活動などです。

復興支援の活動に参加されたすべてのみなさんに、心より敬意を表します。もっとも、復興への取り組みは、日本社会全体についてみれば、まだ緒についたばかりのところがあります。大学の行う活動も、粘り強い取り組みとして、継続していかねばなりません。何よりも、被災者と被災地の要望をしっかり受けとめ、一層の創意工夫を重ねつつ、復興支援の活動に取り組む重要性を痛感しています。

東日本大震災の一周忌をむかえ、本学では、3月11日以降、京都の深草キャンパスならびに滋賀の瀬田キャンパスにおいて、被災者・被災地の現状ならびにボランティア活動の内容などを伝える写真パネルの展示を行います。本学の学生、院生、教職員のほかに、地域の住民のみなさんにも開放しますので、ご覧になっていただければ幸いです。

龍谷大学の建学の精神は、親鸞聖人の教えにもとづく浄土真宗の精神です。私たちは、建学の精神の具現化として、息の長い復興支援の活動を志してまいりたいと考えています。どうぞ、みなさまの温かいお心とご協力を賜りますようお願い申しあげます。

2012年3月
龍谷大学学長 赤松 徹眞


学長メッセージ -「東日本大震災」7ヶ月が経過して-

2011年3月11日から7ヶ月ほどが経過します。東日本大震災で犠牲となられた皆様に改めて心から哀悼の意を表します。また、福島原子力発電所事故により避難を余儀なくされ、不安な毎日を過ごされている皆様、地震と大津波により被災され、今なお元の生活に戻ることのできない状態で日々を過ごされておられる皆様に、改めて心よりお見舞い申しあげます。一日も早く心休まる生活が戻りますことを念じています。

私たちは日々、あたりまえのように生きています。しかし、この度の大震災によって、生とは連続したものであるという日常の認識が、引き裂かれてしまった方も多いのではないでしょうか。命の儚さ、無常さに途方にくれ、肩を落としていらっしゃる方も決してすくなくないでしょう。しかし、いま、私たちは、このような出来事に直面し、改めて一人ひとりのかけがえのない命の尊さ、生かされていることに気づくことが大切ではないかと思います。

世界でも類をみないほど複雑な地殻の上に成り立つ日本列島において、大地震が周期的に起こりえることは繰り返し指摘されてきました。しかし、だれも3月11日という日に起こることは予想できませんでした。今回の大震災は、起きてはならないはずの原発の過酷事故をも引き起こした点で、過去のいずれも大震災でも経験しなった未知の困難を惹起しています。私たちは生きていくなかでは、必ずといってもいいほどに厳しい現実に直面します。今回の大震災を通して、私たちは改めてさまざまな問いをもって現実に向きあわなければなりません。

原発事故は、核エネルギーに依存した経済活動によって担保されてきた豊かさに胡座をかき、多様なエネルギー源を確保する努力を怠ってきた日本社会のあり様に、根本的な見直しを迫る契機となっています。広島・長崎での凄惨極まりない被爆、ビキニ環礁水爆実験での千隻を超える日本漁船とその乗組員の被爆、被爆を通じて甚大な被害が生じるたびに、一方で、その被害(とりわけ内部被爆)の程度を極力少なく見せようとする動きがありました。今回の原発事故への対応にあたっては、そうした過ちを繰り返しはなりません。原発での過酷事故が生じれば、現在の科学の力では制禦が極めて困難であることが、明らかになりつつあります。一日も早い事故の終息に向けた粘り強い取り組みを願うとともに、原発事故から私たちが汲み取るべき教訓は何かを問い続けたいと考えます。

本学では、3月11日以降、震災復興のためにどのように対応すべきかについて、不断の検討を重ねています。私たちは一人ひとりが震災で犠牲になり被害を受けたすべての方々に思い馳せ、寄り添いながら考え、そして行動することが大切だと思います。学生、院生、教職員、卒業生による募金活動、学生を中心としつつも、院生や教職員も加わって行う被災地でのボランティア活動、被災地の物産品の京都・深草学舎と大津・瀬田学舎での販売活動など、みんなで知恵を出し合いながら、できることから取り組みを始めてきました。復興支援の活動は息の長い取り組みになるものと思われます。10月22・23日に深草学舎で開催する「東日本大震災復興支援フォーラム‐震災復興に果たす大学の役割‐」は、そうした取り組みのあり方を考えるためのものであります。学生・教職員はもちろん、多くの市民のみなさんの参加を歓迎します。フォーラムについては、今後も継続して多様な形態での開催を検討したいと思っています。

龍谷大学の建学の精神は、親鸞聖人の教えにもとづく浄土真宗の精神です。私たちは、建学の精神の具現化として、今回の震災復興支援に取り組むことが大事なことであると考えます。龍谷大学として、大学の役割・使命を踏まえ、全学の英知を結集して困難を突破し、持続可能で安穏な社会の構築を目指し、引き続き努力を重ねてゆく所存です。

2011年10月21日
龍谷大学学長 赤松 徹眞


学長メッセージ

3月11日に発生した東日本大震災は、広範かつ深刻な未曾有の被害をもたらしました。犠牲者の皆さまに心から哀悼の意を表するとともに、すべての被災者の皆さまにお見舞いを申しあげます。また、懸命に救助・救援活動、被災者の生活支援活動、インフラ復旧等に取り組んでおられるすべての皆さまのご尽力に心から敬意を表します。

被災地では未だ多くの方々が行方不明のままです。不便な避難所での生活を余儀なくされ、住み慣れたまちを離れ避難生活を強いられておられる方々も多数おられます。そんな厳しい状況の中で、被災地で被災された方自身が懸命にボランティア活動をされている姿や、やっと届いた物資を分かち合っておられる姿に心が震えました。深い悲しみの中で、励まし合い、支え合っておられる姿に、私たちが人間のありようを知らしめられています。いま改めて生きるという意味を多くの人が考え、生かされている命の尊さに深く思いを馳せなければなりません。人間が自然に対していかに無力であるかを見せつけられたと同時に、人間が想定する能力に限界があり、お互いに助け合い支え合っていかなければいけない存在であるということを改めて認識させられました。

この未曾有の震災に際し、私たちは何ができるのでしょうか。地震発生以来、私自身、自問自答の日々を過ごしています。甚大な被害の前に、真に有効な答えはすぐには出てきません。しかし、この危機から未来を切り拓いていくためには、思考や模索を重ねながら実際に行動していくことも大切だと思います。龍谷大学も370年以上の歴史を有する大学として、社会の幾多の困難や災害を共に乗り越えてきました。本学の建学の精神である親鸞聖人の精神に基づいた人間のありよう「共生(ともいき)」の考え方が、いまほど必要とされる時代はないといっても過言ではありません。

一人ひとりの力は微力でも、集まれば大きな力になります。本学の中には、すでに被災地に駆けつけ、ボランティア活動を行っている学生や教職員もいます。そのような志と行動力をもつ学生や教職員がいることを、私は誇りに思います。また、現地に行くことだけが被災地に貢献することではありません。募金活動に汗を流す学生など、京都にいながら「何かできないか」と模索し続け、行動する学生にも敬意を表したいと思います。全学の構成員のみなさん。それぞれの事情や立場にあった貢献を是非、積極的に行ってください。

今回の大震災からの復興プロセスは、単に東日本地方の問題だけではなく、日本社会のありようにも変化を迫るものにしていかねばなりません。龍谷大学としても大学の役割や使命を踏まえ、復興に向けて全学の英知を結集し、困難を突破し、真の意味で持続可能で豊かな社会システムの構築について深く考察し、共生の社会の実現に向けて不断の努力と行動をしていきたいと考えています。

2011年4月28日
龍谷大学学長 赤松 徹眞


ボランティア・NPO活動センター センター長メッセージ

3月11日に発生した東日本大震災は、青森県から千葉県にわたる広範囲性、津波の被害の大きさ、原発事故など、これまでにない特徴をもつ未曾有の大災害です。
本学では被災された学生のみなさんに対して、学生支援制度を整備・運用し、入学にかかわる手続や学生生活にかかわる経済的支援等、各種の支援を行ってきました。

3月15日からは大学として第一次の義捐金募金活動を行い、4月15日までに集まった16,784,659円を4月22日に中央共同募金会において贈呈してまいりました。募金活動に協力して下さった学生・教職員・卒業生・保護者に心よりお礼申し上げます。

被災地の情報が不十分であることや、二次災害の危険性も高い状況にあり、学生の皆さんが自主ボランティアに行かれることは大変危険であることから、当初、本学では被災地における学生の支援活動に対して自粛を呼び掛けていました。
しかし、その後、被災地で支援活動をしたいという学生のみなさんからの要望が高まってきました。教職員の中にも、現地に赴き、様々な支援活動に従事する方たちも出てきました。そこで、ボランティア・NPO活動センターは、4月25日、26日に『東日本大震災復興支援ボランティア・ガイダンス』を瀬田・深草のキャンパスで開催しました。被災地で活動する際に注意すべきことについて教職員が説明を行いました。深草、瀬田学舎合わせて約200人の学生、教職員が参加し、会場からは熱心な質問や意見の表明がありました。困難な状況にある方々に対して、自発的に自分にできる活動をしたいという学生の皆さんの志、熱意は大変、尊いものだと思います。
現時点でも、十分な予備知識のないまま支援活動を行うために被災地に向かうことは、大変危険であり、かえって被災地の方にご迷惑をおかけする可能性があります。志、熱意を有効に活かすためにも、被災地での支援活動を希望する学生の皆さんには、被災地に入る前にボランティア・NPO活動センターで説明を受けるようにお願いいたします。

本学の理念である「共生(ともいき)」の精神を踏まえて、東日本大震災被災者・被災地の復興支援を今後とも進めてまいりたいと存じます。被害の規模の大きさから考えて、復興支援活動は長期にわたるものになると考えられます。被災者の方が抱えておられる困難を思い続けることも、一つの支援の形です。学生や教職員の間から自発的に生まれてくる支援活動を大学としてもサポートしてまいります。 学生、教職員の皆様のご理解とご協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2011年4月28日
ボランティア・NPO活動センター長 松島 泰勝