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龍谷大学がホスト校となり、2021年6月18日(金)〜21日(月)の4日間にわたり国際学会「アジア犯罪学会 第12回年次大会(Asian Criminological Society 12th Annual Conference, 通称: ACS2020)」*をオンラインで開催しました。2014年の大阪大会に次いで国内では2回目の開催となる今大会では、アジア・オセアニア地域における犯罪学の興隆と、米国・欧州などの犯罪学の先進地域との学術交流を目的としています。
大会の全体テーマには『アジア文化における罪と罰:犯罪学における伝統と進取の精神(Crime and Punishment under Asian Cultures: Tradition and Innovation in Criminology)』を掲げ、「世界で最も犯罪の少ない国」といわれる日本の犯罪・非行対策と社会制度・文化に対する理解を広めることを目指しました。
【>>関連ニュース】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-8690.html

LIVEで行われた本大会の基調講演(Keynote Session with Q&A Session)の概要を紹介します。

[KY04] 青少年間におけるサイバー犯罪の加害と被害:広がり・リスク要因および防止戦略
(Cybercrime Perpetration and Victimization among Adolescents: Prevalence, Risk Factors and Preventive Strategies)

〔講演者〕デニス・SW・ウォン(香港市立大学 社会・行動科学部 教授,香港)
Dennis S. W. Wong (Professor, Department of Social and Behavioural Sciences, City University of Hong Kong, Hong Kong)
〔司 会〕笹倉 香奈(甲南大学 法学部 教授)
Kana Sasakura (Professor, Faculty of Law, Konan University, Japan)
〔日 時〕2021年6月20日(日) 13:00-14:30
〔キーワード〕サイバー犯罪、日常活動理論、RAPID-IT-CRY、因子分析、加害と被害の相関関係



デニス・SW・ウォン(香港市立大学 社会・行動科学部 教授,香港)

デニス・SW・ウォン(香港市立大学 社会・行動科学部 教授,香港)

〔報告要旨〕
 【はじめに】 インターネットやソーシャルネットワークが急速に普及し、情報通信技術(ICT)は、教育、金融、社会、そして個人の活動に様々な機会をもたらした。デジタル時代におけるICTの進歩は、私たちの日常生活に利便性とリスクの両方をもたらす諸刃の剣でもある。サイバー行動に関するこれまでの研究においては、インターネットで多くの時間を費やす青少年は、通常よりネガティブなオンライン体験をする傾向があることが明らかになっている。

本報告では、まず、サイバー犯罪の定義と種類が示された後、青少年のサイバー犯罪被害の典型例を紹介が紹介された。これらを踏まえ、「日常活動理論(routine activity theory)」を理論的基礎として、香港において1,533人の中高生を対象に行われた実証研究の成果に基づき開発されたサイバー犯罪リスクの簡易測定ツールである「青少年のためのサイバーリスクの反応速度(RAPID)識別ツール」“RAPID-IT-CRY”が紹介された。

【用語の定義】 サイバー犯罪は、国境のないサイバー空間で行われる。また、犯罪は組織的に行われることが多い。加害者と被害者が異なる国に所在することが多いのもその特徴である。犯罪類型は、プライバシー侵害犯罪、コンピュータ関連犯罪、データ関連犯罪および著作権侵害の4種類に分けることができる。国連薬物犯罪事務所(UNODC)は①サイバー依存犯罪(Cyber-dependant crime)、②サイバー無力化犯罪(Cyber-enabled crime)および③児童に対する性的搾取・虐待(Child sexual exploitation and abuse)の3つの分類している。犯罪の発生地であるサイバー空間は、①サーフェイス・ウェブ(誰もがアクセス可能) 、②ディープ・ウェブ(特定の者のみがアクセス)およびと③ダーク・ウェブ(利用者の匿名化)の3つに分けることができる。

【香港におけるサイバー犯罪】 香港におけるサイバー犯罪には、①ビジネスメール詐欺、②ネットショッピング詐欺、③恋愛(ロマンス)詐欺、④ランサムウェアの使用による犯罪、⑤エレクトロニックバンキング詐欺、⑥チャットなどで交換した裸の写真・動画の悪用脅迫および⑦雇用詐欺があり、近年、増加傾向にある。

【少年が被害者となるサイバー犯罪】 少年の被害は、①ネット上のいじめ、②青少年の誘い込み(チャイルド・グルーミング)、③性的ゆすり行為(セクストーション)などがある、ウォン教授は、これらの現象は、「日常活動理論(routine activity theory)」によって最も適切に説明できる、と述べた。この理論は、犯罪は「動機付けられた加害者」「対象として適切な被害者」および「両者の接近を阻む障碍の不存在」という3つの要素が同時に存在する時に発生すると考える。現サイバー空間、とりわけ、青少年にとってのサイバー空間は、これらの3要素が準備されていると言える。

香港における1533人の中高生を対象とする調査研究の成果に基づいて、サイバー犯罪の発生リスクを簡易に測定するツールとして「ラピッド・イット・クライ(RAPID-IT-CRY)」が開発された。このツールは、8項目の尺度を用いた因子分析によって、内部的一貫性と併存的妥当性において良好な関係を有することが確認された。このツールは、特に介入プログラムの現場実施者のために実務的に有用である。今後は、サイバー犯罪一般を予防するための認知行動的アプローチや実証研究のツールに応用されていく可能性もある。

【むすび】 実証研究の結果、インターネットに対する安全意識の欠如、自分は大丈夫だという根拠のない信念、道徳意識の欠如など、被害者のリスク要因が発見された。加害者と被害者との関係に一定の関係性があることも確認されている。少年をサイバー犯罪から護るための予防・介入対策としては、①潜在的加害者との接触制限、②少年の注意力の喚起および③オンライン保護者(online guardians)の増強と拡大がある。

【質疑応答(Q&A)要旨】以下のような点をめぐり、活発に議論がなされた。

質問1:「サイバー犯罪」にヘイトスピーチは含まれますか?
回答1:
はい、含まれます。「サイバー犯罪」には、サイバー上での逸脱行為やサイバー上での加害行為が含まれます。迷惑なメッセージや卑猥なメッセージを送ることは、ヘイトスピーチに関連する可能性があります。

質問2:香港では、子どもは何歳からコンピュータに触れるのですか?
回答2:
香港では、小学校では6歳からコンピュータの使用が許可されており、家庭学習や宿題を提出する際にもコンピュータやiPadを使用することが推奨されています。COVID-19の流行時には、多くの学校が閉鎖され、ほぼ全ての子どもがコンピュータやiPadにアクセスできるようになっています。政府や地方団体が、子どもたちがコンピュータを利用できるように資金援助を行いました。多くの専門家は、居間にコンピュータを置き、子どもがインターネットを閲覧する様子を親が監視するように、とアドバイスしています。若い人たちはインターネット上の情報に対して脆弱で、サイバー犯罪被害を避けることはできません。
サイバー犯罪者は非常に巧妙ですが、若い人たちは彼らが使う手口に気付いていません。親は、インターネットの潜在的な危険性について子どもたちと話し合うべきです。また、世界中で起きている様々な事件を記憶し、子どもに共有して伝えていくべきです。

質問3:香港では伝統的な犯罪が減少し、サイバー犯罪が増加しているのでしょうか?
回答3:
香港では、少年の非行件数は全体的に減少しています。子どもたちは家にいて、サイバースペースでコミュニケーションをとっています。街に出ることはほとんどないので、現在の主な非行犯罪はサイバー犯罪と薬物摂取です。

質問4:アジアや香港における、サイバー犯罪の特色は?
回答4:
他の国で発表された記事を読んだことがありますが、世界的に見てサイバー犯罪には大きな違いはないと思います。多くの若い人たちは、自分たちのことを「グローバル・シティズン」と呼んでいます。彼らがインターネットで遊んだり、コミュニケーションをとったりするとき、違いもあるものの、同じような文化を持っています。サイバー犯罪における加害と被害も似ています。しかし、アジア人には道徳不活性化が見られ、そのためインターネットの利用が多く、被害者になりやすいのです。一方、欧米では親がリベラルで、サイバーセキュリティに対する意識が高いようです。
国によって文化的な偏りがあることは確かです。 例えば、香港や台湾、中国本土では、人口のほとんどが中国人であるため、ヘイトクライムはあまり起こりません。いわゆる人種差別も、中国本土ではそれほど深刻ではありません。一方、アメリカやヨーロッパでは、文化的な移動があり、異なる人種が混在しているため、文化的な差別が多く見られるかもしれません。これは問題になるかもしれません。
東洋の文化は集団主義で、西洋は個人主義です。そのため、アジアでは介入や制限はより権威的なものとなります。文化の違いですね。サイバー犯罪は国境や文化を超えています。しかし、以上のような文化的な違いがあるため、国を超えた協力は非常に困難です。

質問5:香港ではネット上のグルーミングやセクスティングは違法ですか?日本では違法ではないのですが。
回答5:
香港の法律は時代遅れです。香港には、オンラインやサイバー関連の法律はありません。従来の法律や条例があるだけです。そのため、サイバー犯罪に関する法律の制定を求める声が高まっています。例えば、ネット上でのグルーミングの場合、法律がないため、警察は「コンピュータの違法使用」で起訴します。 すべてが「違法なコンピュータの使用」としてまとめられるのです。 良い弁護士を雇ってこのことを主張すれば、起訴を免れることができるかもしれません。

(文責:笹倉 香奈/協力:ドリス・ハラス)

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◎本大会の成果については、犯罪学研究センターHPにおいて順次公開する予定です。
なお、ゲスト・スピーカーのAbstract(英語演題)はオフィシャルサイト内のPDFリンクを参照のこと。
ACS2020 Program https://acs2020.org/program.html


*アジア犯罪学会(Asian Criminological Society)
マカオに拠点をおくアジア犯罪学会(Asian Criminological Society)は、2009年にマカオ大学のジアンホン・リュウ (Liu, Jianhong) 教授が、中国本土、香港、台湾、オーストラリアなどの主要犯罪学・刑事政策研究者に呼びかけることによって発足しました。その使命は下記の事柄です。
①    アジア全域における犯罪学と刑事司法の研究を推進すること
②    犯罪学と刑事司法の諸分野において、研究者と実務家の協力を拡大すること
③    出版と会合により、アジアと世界の犯罪学者と刑事司法実務家のコミュニケーションを奨励すること
④    学術機関と刑事司法機関において、犯罪学と刑事司法に関する訓練と研究を促進すること
このような使命をもつアジア犯罪学会は、現在、中国・香港・マカオ・台湾・韓国・日本・オーストラリア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・アメリカ・スイス・パキスタン・インド・スリランカなどの国・地域の会員が約300名所属しており、日本からは会長(宮澤節生・本学犯罪学研究センター客員研究員)と、理事(石塚伸一・本学法学部教授・犯罪学研究センター長)の2名が選出されています。


2021年7月3日(土)に「政策実践・探究演習 京丹後三重・森本プロジェクト(谷垣岳人先生担当)」の政策学部生12名(2回生8名、3回生2名、4回生2名)と教員2名が、今年度初めての現地フィールドワークを梅雨の曇り空のもと、日帰りで実施しました。今回初めて地域を訪問した学生がほとんどで、地域のことを知ろうと積極的に動き、写真を撮っていました。

本プロジェクトは、「希少生物のゲンゴロウなど多くの生き物が棲息できるような農薬・化学肥料を抑えた良い環境で育てた米=『ゲンゴロウ郷の米』を地域ブランドとして確立する」ことを目標に、三重・森本プロジェクト里力再生協議会ほか地域団体、生産者団体とともに活動しています。



■地域を知る・ゲンゴロウ水田での生き物調査

当日は曇天でしたが、雨も降らずに実施することができました。集落・水田などをあるき、地域の様子を知り、ゲンゴロウ水田での生き物調査を行いました。地域を実際にあるきながら地域資源を知ることができるという有意義な機会であるとともに、プロジェクト学生同士もお互いのことを知る機会にもなりました。
受講生はまず森本アグリが管理する通称“ゲンゴロウ水田”と呼ばれる場所で、「ひよせ」と呼ばれる水田の淵につくられた水溜まり(ひよせ)で生物調査を実施し、希少種のマルガ
タゲンゴロウの他、多様な生き物を確認できました。梅雨の晴れ間の曇り空でしたが、学生と地域の思いが雨予報をはねかえしたのか、終日雨は降らずにフィールドワークを終えることができました。

今回も新型コロナ感染防止対策を十分おこない、残念ながら地域の方との協働活動はしない形での訪問となりましたが、現場を知ることは今後の活動に必ずプラスになると思います。




【学生の食支援に「ゲンゴロウ郷の米」を寄付いただく】

今年も京丹後森本アグリ株式会社様から本学の学生食支援に200kgの「ゲンゴロウ郷の米」(特別栽培米)を寄付いただきました。地域の方々はいつも学生たちのことを思ってくださり、本当にありがたいことです。京丹後森本アグリ株式会社様にて、学生への贈呈式を実施しました。



森本アグリの社長様から学生代表へ贈呈


今後は、次の収穫に向けて学生が地域と協議しながら「ゲンゴロウ米」の新しいパッケージデザインに取り組みます。地域の皆様、大宮市民局様、引き続きよろしくお願いいたします。


※本活動は、京丹後市夢まち創り大学事業、京都府人・まち・キャンパス連携支援事業等の支援を受けています。


【本件のポイント】

  • 野外圃場で生育期間を通じて様々なイネの系統の遺伝子発現を測定し、新たに開発したデータ解析手法によって、系統間の環境応答の差異を生み出すゲノム領域を同定
  • 気象データとゲノムデータから任意の時点、系統の遺伝子発現を予測可能に
  • 様々な栽培地や年度における遺伝子レベルからの応答予測が可能になることで、より高精度な育種が可能となり、食糧問題解決への一助へ

 

【本件の概要】

 同じゲノム配列を持つ同一品種であっても、収量や品質は環境によって大きく変化します。これは、作物の遺伝子の発現量(※1)(どの遺伝子をどのくらい働かせるか)が環境によって変化するためです。その結果として地域間差、年次間差が生じます。我々のグループはこれまで、世界に先んじて、特定のイネ品種の遺伝子発現量の環境応答を予測する手法を確立してきました。しかしながら、別のイネ品種には応用できないという課題がありました。

 


図 1  本研究の概要

本研究では、新たに開発したデータ解析手法(edQTL解析)を用いて、イネ品種コシヒカリとタカナリに由来する多様な系統間における遺伝子発現量の環境応答の差異とゲノム多型との関連性を網羅的に調べ、1675遺伝子の環境応答の差異を生み出すゲノム領域を同定しました。さらに、同定したゲノム領域の情報をモデルに導入することで、任意の環境におけるコシヒカリ・タカナリ子孫系統の全遺伝子発現量の環境応答を高精度に予測できるようになりました。本研究で開発した遺伝子発現量予測手法は、他のイネ品種や他作物にも適用可能であり、栽培環境によって品種のパフォーマンスが異なるという育種における重要課題を解決する一助になると期待されます。

 

 本研究は、龍谷大学農学部 永野惇准教授(慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授)、龍谷大学食と農の総合研究所 鹿島誠特別研究員(現・青山学院大学理工学部化学・生命科学科助教)らを中心として、龍谷大学、東京農工大学、京都大学、青山学院大学、滋賀大学、済美高等学校、慶應義塾大学からなる研究チームによって実施されました。本研究は、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CREST「野外環境と超並列高度制御環境の統合モデリングによる頑健性限界の解明と応用(代表・永野惇)」プロジェクトの一環として実施されました。

 

タイトル:Genomic basis of transcriptome dynamics in rice under field conditions

著者:Makoto Kashima, Ryota L. Sakamoto, Hiroki Saito, Satoshi Ohkubo, Ayumi Tezuka,Ayumi Deguchi, Yoichi Hashida, Yuko Kurita, Koji Iwayama, Shunsuke Adachi and Atsushi J. Nagano

掲載誌:Plant and Cell Physiology, 2021, pcab088

 

【研究の背景】

 同じゲノム配列を持つ作物(品種)であっても、栽培地や年度によって収量や品質にばらつきが生じてしまいます。これは、各々の作物が栽培される環境に応じて遺伝子の発現量を変化させているためだと考えられます。そのため、各栽培環境における収量や品質を予測するためには、遺伝子発現の環境応答を予測することが有効です。従来は、様々な品種を栽培し遺伝子発現量の違いとゲノム多型の違いを比較することで、eQTL(expression quantitative trait locus : 遺伝子の発現量に影響を与える座位)を同定していくアプローチがとられていました。しかし、一般的なeQTL解析では、測定した環境における遺伝子発現しか予測できないという大きな問題がありました(図2a)。


 

 一方で、私たちの研究グループは、先行研究において開発した野外トランスクリプトームと呼ばれる手法を用いて、「日本晴」という品種に関し栽培地の気象情報と日時を指定することで遺伝子の発現量の環境応答を予測する統計モデルを作成しました。しかし、この環境応答予測モデルは「日本晴」専用であり、ゲノム配列が異なる別の系統に適用することはできませんでした(図2b)。育種の場面では、二つの系統を掛け合わせて、それぞれの系統の良いところを併せ持つ新品種を作成することが日常です。このような場合、親系統の環境応答を予測できても、子孫系統の環境応答は予測できないという問題があり、子孫系統の環境応答を予測する方法論の確立が求められていました(図2c)。

 

【研究の成果】

 本研究では、日本で最も広く栽培されている品種「コシヒカリ」と多収品種である「タカナリ」に注目し、親系統及びその交配組み合わせによって生み出された子孫系統の環境応答を遺伝子発現レベルで予測する手法(遺伝子発現量予測手法)の開発を行いました。この子孫系統は、染色体断片置換系統(CSSL: Chromosome Segment Substitution Lines)と呼ばれるもので、ゲノムのほとんどは親系統であるコシヒカリあるいはタカナリと一致しますが、染色体の一部のみが他方の親系統に置換されており、染色体マーカーを調べることで、各ゲノム領域をコシヒカリ型かタカナリ型に区別することができます(図3)。


 コシヒカリ、タカナリとCSSLの計80系統を旧京都大学大学院農学研究科附属農場(大阪府高槻市)で2015年に栽培し、2時間毎の24時間サンプリングを栽培期通じて複数回行いました(図4:赤線がサンプリング時期)
 その後、各個体の葉からRNAを抽出しRNA-Seq(※2)を行うことで、計845検体に関して全遺伝子の発現量を取得しました。


 次に、アメダスから取得したサンプリング時の気温及び日射量と得られた全遺伝子発現量の情報をFIT(※3)と呼ばれる解析プログラムで解析することによって、任意の環境におけるコシヒカリ及びタカナリの遺伝子発現量を予測する環境応答モデルを作成し(図2c)、3696遺伝子がコシヒカリ・タカナリ間で異なる環境応答性を示すことを明らかにしました。さらに、「CSSLで親系統から置換された領域」と「環境応答モデルから予測した親系統(コシヒカリ、タカナリ)の各遺伝子の発現量と各サンプルの実測値のズレ」の関連性を統計的に検証することで、コシヒカリ・タカナリ間で異なる環境応答性を示す原因となるゲノム配列の多型を含む原因領域(edQTL: expression dynamics quantitative trait locus)を1675遺伝子に関して同定しました(図5)。


本研究において同定されたedQTLには、野外環境における作物の生育に重要な免疫応答の品種間差を生み出すゲノム領域も含まれていました。

 さらに、本研究では同定されたedQTLの情報をもとに実際に環境応答の予測が可能であるのかの検証を行いました。まず、異なる栽培地における環境応答の予測に同定したedQTLが有用であるのかの検証を行うため、翌年度(2016年)に京都大学大学院農学研究科附属農場(京都府木津川市)でCSSLを栽培、同様の経時RNA-Seqを行いました。edQTLを考慮せず背景となる親系統の環境応答モデルでの予測値、およびedQTLを考慮した予測値と、RNA-Seqによる実測値を比較すると、期待通りedQTLを考慮した方が遺伝子発現の予測精度が良く(図6)、異なる栽培環境における環境応答を予測できることが明らかになりました。


 さらに、 edQTL同定に使用したCSSLよりも、よりゲノム領域の入れ替えが複雑な戻し交雑自殖系統(Backcross Inbred Lines:BIL)HP-aとHP-bに対して、環境応答の差異を正確に予測できることを確認しました。例えば、HP-a、 HP-b両系統はゲノムの大部分がタカナリ型ですが、Os03g0388300遺伝子の環境応答を制御するedQTLは、HP-aはコシヒカリ型であるのに対し、HP-bではタカナリ型です(図7A)。RNA-SeqによるOs03g0388300遺伝子の発現量の定量結果は、HP-aはコシヒカリ型環境応答モデルが、HP-bはタカナリ型環境応答モデルの予測結果が一致していました(図7B)。


【今後の期待】

 本研究で確立した「親系統の遺伝子発現の環境応答の品種間差を生み出すedQTLの同定法」及び「edQTLを考慮した子孫系統の遺伝子発現の環境応答予測法」は、コシヒカリ・タカナリ以外のイネ品種だけでなく、その他の品種や作物にも適用可能なものです。現状の作物育種の課題として、栽培環境の差異から、必ずしも育種地と栽培地で収量や疫病耐性といった形質が一致しないという問題があります。形質の差異が主に遺伝子発現の差異に起因することを考慮すると、任意の環境応答における遺伝子発現の予測を可能とする本研究成果は、将来的には任意環境における形質予測を可能にし、任意の栽培地環境に適した品種の選定あるいは様々な環境に頑健な品種の作成に繋がる可能性を秘めています。

 

【注釈】

※1 遺伝子の発現量...mRNAの存在量のことを示しています。ゲノムには多数の遺伝子が存在しています。細胞内では、これらの遺伝子からmRNAと呼ばれるコピーが作られ、mRNAの情報が読み取られることでタンパク質が作られます。そのため、mRNA存在量≒遺伝子機能の発揮度合いといえます。遺伝子の発現量は、ゲノム配列の違いによって変化するため、環境応答の系統差を生み出します。

 

※2 RNA-Seq…次世代シーケンサーと呼ばれる超並列核酸配列解読装置を用い、サンプルに含まれるRNA(正確にはcDNA)を数えあげることで、数えられた頻度情報からRNAの存在量、すなわち遺伝子の発現量を網羅的に調べる手法です。

 

※3 FIT…オープンソースであるR言語で作成された、気象情報と経時的な遺伝子発現の測定結果から環境応答予測モデルを作成するプログラムです。ある系統に対して環境応答モデルを作成すれば、その系統の任意の栽培地・時点の遺伝子発現量を予測することが可能になります。

 

 

 

問い合わせ先:<研究内容>農学部 植物生命科学科 情報生物学研究室

             准教授 永野 惇 Tel 077-599-5656

       <担当部局>農学部教務課 森本 Tel 077-599-5601 Mail agr@ad.ryukoku.ac.jp


 龍谷大学と大津市は2005年3月23日に「大津市と龍谷大学との協力に関する協定書」を締結したことを契機とし、防災の分野では社会学部が大津市消防局の指導や協力を得て、各種訓練や救命講習といった実践的な防災教育を展開してきました。

 これらの取り組みを経て、この度、大津市が新たに制度発足する機能別団員(学生団員)に龍谷大学生5名が参加することになりました(本制度に入団する学生は龍谷大学生が大津市では初めてです)。学外での活動だけでなく、この入団を機に学内においても、新たに発足される消防防災に関するサークルに参加し、活動を広げる予定です。

 つきましては、下記のとおり入団式を挙行することをご案内申しあげます。

 

 

1 日  時  2021年7月16日(金)10:00~10:30 ※入団式終了後、記念撮影を実施                

 

2 場  所  龍谷大学 瀬田キャンパス RECホール1階 小ホールにて

       (滋賀県大津市瀬田大江町横谷1−5)※別紙「会場案内図」参照

 

3 出  席  者       (1)大津市

          消防団長   今井 俊博

          消防局長   安井 達治  他

       (2)龍谷大学

          副学長    松木平 淳太

          瀬田事務部長 河村 由紀彦

          社会学部教授 栗田 修司

 

4 備  考  

 機能別団員制度とは、消防団の充実強化(消防団の加入促進)に向けた取り組みとして、国が示す制度であり、能力や事情に応じて特定の活動にのみ参加する消防団員のことです。

 特定の災害種別に限定した活動や時間帯を限定した活動等、消防団の活動を補完、補助する役割が期待されています。

 

問い合わせ先:龍谷大学  学長室(広報)

        Tel  075-645-7882 Mail  kouhou@ad.ryukoku.ac.jp


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別紙「会場案内図」


6月30日(水)オンラインで、法学部クラスサポート委員会のメンバー(2回生及び3回生)が法学部1回生のわからないこと、不安なこと、気になることなどの相談にのり、
一緒に考える相談会「まっちゃりHOMEROOM」を開催しました。
好評につき、少人数の対面形式で第2回を開催します。

■事前申込は不要です。

写真は第1回「まっちゃりHOMEROOM」をオンラインで開催した時の画像です。



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