Need Help?

新着情報

新着情報の一覧

製品情報

ここにメッセージを入れることができます。

真剣に話を聞く受講生

 7月3日に、社会学部の科目「社会共生実習(多文化共生のコミュニティ・デザイン~定住外国人にとって住みやすい日本になるには?~)」(担当教員:現代福祉学科 川中大輔)にて、本プロジェクトのーコミュニティパートナーであるNPO法人京都コリアン生活センター・エルファ(以下、「エルファ」という)の事務局長である南珣賢さんをお招きして、オンライン授業が開講されました。

 エルファは、在日コリアンをはじめ外国にルーツをもつ多文化な高齢者や障がい者を支援する活動をされています。その内容は高齢者や障がい者の支援に留まらず、多文化共生社会を目指したまちづくり等の活動や子育て支援事業・相談業務等と、多岐にわたっています。
 事業所立ち上げの背景には、介護保険制度の開始があります。それまで国籍条項によって日本の社会保障制度の多くに参加できなかった在日コリアン一世も介護保険制度の利用対象になりましたが、「自分たちも使える制度である」という認識がなかったり、就学経験が乏しく各種手続きで困難な経験をしたりして、制度を利活用できていない方々が多く存在することが明らかになっていきました。そこで、在日コリアン二世たちの手で何とかサポートしたいという強い想いからエルファの活動が始まります。

 今回、南さんには、エルファの活動内容を事前に学習した受講生からの質問に、色々なエピソードを交えてお答えいただきました。
 特に印象深かった質疑応答について、一部ご紹介させていただきます。

Q.在日コリアンの方の高齢者を対象とする支援を独自で始めたのはなぜですか?

 在日一世の場合、幼少期の経験が異なることから日本のデイサービスでよく見られるレクリエーション(例えば習字や折り紙など)に参加できないという光景が見られます。また、在日コリアンだということを隠している人の場合、参加できない理由を説明することもできずに、施設内で孤立されている方々もいます。その孤立感に施設側も気づくことは難しいのです。そんな肩身の狭い思いをしている在日コリアンの方々が自分をさらけ出せる場所としてエルファを始めましたが、やはり自分たちの背景を深く理解してくれているということで利用者の方々もエルファを選んでいるのだと思います。

Q.訪問者の受け入れを積極的にされているようですが、どんな触れ合いをされていますか?

 修学旅行生も含め年間1,000人ほどの訪問者を受け入れています。(現在は新型コロナウイルスの影響で受け入れを中止しています。)訪問者は利用者の方々と会話したりペアになってゲームをしたり、とても楽しい時間を過ごしています。
ある時、修学旅行生の一人が自分の名札(日本名)を見せて、「僕の名前は朝鮮語で何と読むのですか?」と聞いてきたことがありました。そこで私が読み方を教えてあげると、すぐ傍にいたハルモニ(コリア語でおばあさんの意味)が「あんたはうちの子やな。あんたはあんたのままでええやんで。」と、その子を抱きしめました。周りにいたその子の友人たちも「かっこいい名前!」と言ってくれたので、その子は「今日限りで日本名をやめてもいいですか?」と言ったのです。この子のように、訪問者が在日コリアンであることをカミングアウトするケースもあります。
その他にも利用者の方々と触れ合うことで癒されて、とてもすっきりした顔で帰って行く訪問者の様子を見て、職員たちも良い刺激をもらっています。


NPO法人京都コリアン生活センター・エルファ 事務局長 南珣賢氏

Q.京都の朝鮮人学校の保健室サポートをされているということですが、詳しく教えてください。

 日本にある朝鮮人学校には保健室がありません。朝鮮人学校の運営は財政的に厳しく保健室まで手が回りません。体調が悪くても、しばらく様子を見るという対応に留まることもあります。そこで、現在はエルファで勤務している看護師や朝鮮人学校出身の看護師に週2~3回、保健室に常駐してもらっています。これは全国的にみても非常に珍しいことです。こうしたサポートを始めるきっかけは、京都朝鮮第一初級学校に対して行われたヘイトスピーチの襲撃を受けて被害を受けた生徒のメンタルケアをしたいとの想いからでした。

 他にも色々なお話を聞いて、受講生からは「エルファの活動は楽しそう!」「触れ合いがとても大事なことがわかったので、外部との取り組みを考えていきたい」と前向きな感想を聞くことが出来ました。
南さんは「オンラインでも良いので、本プロジェクトの受講生と利用者の方々が触れ合える機会が早く来てほしいです。」と、笑顔で締めくくってくださいました。

 利用者の方々との触れ合いが実現した時には、どんなことを感じ、どんな取り組みに繋げていきたいのか等、受講生からの報告を楽しみに待ちたいと思います。


社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください。


令和2年7月3日からの大雨による災害で被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。


被害にあい、学費支弁が困難となった世帯の学生からの各種奨学金等の受付を次のとおり行いますので、学生部(深草・瀬田)までご相談ください。

また、学生本人やご家族が被災された方は、学生部(深草・瀬田)または学部教務課までお知らせください。
※学生部メールアドレス:gakusei@ad.ryukoku.ac.jp

1.龍谷大学給付奨学生(災害給付奨学生)/給付奨学金


■対象

本学に在学する学部生及び大学院生で、自然災害等により被害を受けた地域に本人又は父母のいずれか(又は家計支持者)が居住しており、学費支弁が困難であると認められ、かつ、奨学金申請書及び被災状況証明書等が提出できる方。
※災害救助法適用の有無にかかわらず、奨学生給付対象となる被害を受けた正規学生は全員申請可能です。


■金額

定める金額を上限とし、奨学委員会が決定します。


対象奨学金額
父母のいずれか(又は家計支持者)が亡くなられた場合、又は、家屋が全壊(全焼)または大規模半壊した場合年間授業料相当額
父母のいずれか(又は家計支持者)が負傷され、一ヶ月以上の加療が必要な場合、又は、家屋が半壊(半焼)若しくは床上浸水の場合半期授業料相当額

休学している場合には在籍状況に応じた奨学金額を給付します。詳細は学生部(深草・瀬田)に問い合わせください。



2.龍谷大学親和会自然災害特別見舞金/保護者会組織によるお見舞い金


■対象

本学に在学する学部生及び大学院生で、自然災害等により被害を受けた地域に本人又は父母のいずれか(又は家計支持者)が居住して、被害を被り、かつ罹災証明書が提出できる方。


■金額

一律5万円(自宅全壊・親和会長が特に必要があると認めた場合、10万円を上限)


■その他

発給から1年以内の罹災証明書があるものを受付。



3.日本学生支援機構(緊急採用・応急採用)/貸与奨学金


■対象

本学に在学する学部生及び大学院生で自然災害による災害救助法適用地域に本人または父母のいずれか(または家計支持者)が居住する世帯で、当該の災害により家計が急変したことにより奨学金を希望される方。
※災害救助法の適用を受けない近隣の地域で、災害救助法適用地域と同等の災害にあった世帯の学生ならびに同地域に勤務し、勤務先が被災した世帯の学生についても、上記に準じて取り扱う。


■貸与始期

緊急採用(第一種奨学金)2020年7月以降で申込者が希望する月
応急採用(第二種奨学金)2020年4月以降で申込者が希望する月

■貸与終期

緊急採用
(第一種奨学金)
2021年3月
ただし、2020年度においてなお、第一種奨学金が必要と認められる者から、2021年度1月8日(金)までに「緊急採用(第一種)奨学金継続願」の提出があった場合には、翌年度末(2022年度3月)まで貸与を継続します。また、年度末ごとに同様の願い出を繰り返すことにより就業年限の終了月まで貸与期間の延長ができます。
応急採用
(第二種奨学金)
修業年限の終了月まで


4.修学支援新制度の家計急変採用について/給付奨学金


修学支援新制度(給付奨学金・授業料等減免)は、2020年度から新たに開始した、給付奨学金と授業料等減免がセットになった国による支援制度です。
通常は、年に2回(4月・10月を予定)募集を行いますが、災害等を含む家計が急変した場合は、条件に該当する方については、事由発生後3か月以内に申込を行えば、随時出願が受け付けられます。


■対象となる家計急変の事由

A:生計維持者の一方(又は両方)が死亡
B:生計維持者の一方(又は両方)が事故または病気により、半年以上、就労が困難
C:生計維持者の一方(又は両方)が失職
  ただし解雇など、非自発的失業の場合に限る。
  詳細は給付奨学金の案内の11ページを参照してください。
D:生計維持者が震災、火災、風水害等に被災した場合であって、次のいずれかに該当

①上記A~Cのいずれかに該当

②被災により、生計維持者の一方(又は両方)が生死不明、行方不明、就労困難など世帯収入を大きく減少させる事由が発生



■修学支援新制度 家計急変の概要



■採用にあたって要件

(1)家計基準
  • 修学支援新制度の家計急変採用は、急変後の収入が修学支援新制度の家計基準を満たしていることが条件となります。
    詳細は給付奨学金の案内10ページを参照してください。なお、ご自身が該当するかどうかは、日本学生支援機構の進学資金シミュレーターの「給付奨学金シミュレーション(保護者の方向け)をおおまかな目安としてご活用ください。最終的には日本学生支援機構にて判定を行います。
  • また、家計基準には、資産基準があり、学生本人と生計維持者(2人)の資産額の合計が2,000万円未満(生計維持者が1人のときは1,250万円未満)である必要があります。
    なお、資産とは現金やこれに準ずるもの(投資用資産として保有する金・銀等、預貯金、有価証券の合計額を指し、土地等の不動産は含みません)。なお、資産に関する証明書(預金通帳のコピー等)の提出は不要です。

(2)学力基準

修学支援の新制度については、家計急変採用であっても学力での審査があります。
詳細は、給付奨学金の案内8ページを参照してください。
また、採用となった場合には、適格認定という資格の継続が相応しいかの学業成績の判定が行われます。詳細は、給付奨学金の案内9ページを参照してください。



5.Jasso災害支援金について/給付奨学金


日本学生支援機構では、学生やその生計維持者・留学生の住居が、半分以上壊れたり、床上浸水したりするなどした場合、一日でも早く元の生活に戻り、学業をつづけることができるよう、支援金(10万円)を支給しています(返す必要はありません)。

■申請の対象(以下の全てに該当する必要があります)

(1)本学大学、短期大学、大学院に在学中の方

※科目等履修生、研究生、聴講生等は除きます。

※JASSOの奨学金や他団体の経済的支援を受けていても申請することができます。


(2)自然災害や火災などにより、学生本人やその生計維持者が現に住んでいる家が、半壊(半流出・半埋没及び半焼失を含みます)以上の被害を受けたり、床上浸水となったり、自治体からの避難勧告等が1か月以上続いたりした方

※入学前・休学中に発生した災害は対象外です。

※同一の災害につき、申請は1回とします。


(3)学修に意欲があり、修業年限で学業を確実に修了できる見込みがある場合

※成績不振により留年中の方は除きます。ただし、成績自体に問題はなく、留学等のために同一学年を再履修している方は対象となります。


■申請方法

申請対象の方は、まずは学生部にまでご相談ください。

■JASSO災害支援金 家計急変の概要

  • 災害にあわれた学生・留学生への支援金(JASSO災害支援金)


  • ■期限

    最終書類提出期限  2020年12月25日(金)


    この度の2020年7月豪雨で被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。


     熊本県南部や鹿児島県北部・宮崎県において7月3日から激しい雨が降り続き、熊本県、鹿児島県では大雨特別警報が出されました。この関係で球磨川(くまがわ)をはじめとした河川の氾濫、また、各地で土砂災害が発生し、その後も九州全域、日本各地に被災範囲が広がっています。 


     ボランティア・NPO活動センターでは、この災害に関しての情報収集を行っているところです。被災された地域への災害ボランティアなどの支援活動に参加したいと考えている学生や教職員の皆さんもおられるかと思います。困難な状況にある人たちのことに想いを巡らせること、「何か手助けをしたい」と考え、行動しようとすることは、とても大切なことです。しかし、行動の仕方によっては、現地の方々に負荷をかけてしまう場合があります。特に被災直後は、命を守るための活動が最優先です。


     豪雨被害にあった各地域では、災害ボランティアセンター立ち上げのための情報収集が始まっています。一部、災害支援のスキルをもったNPOが現地入りして活動を展開し始めたところもありますが、現在は、被災地域での住民や知人の助け合いによる作業が中心です。特に、今回の災害では、浸水被害に加え、避難生活による新型コロナウイルス感染拡大も心配されており、感染拡大防止という意味では被災地外からの災害ボランティアによる支援も慎重な判断が求められ、災害ボランティアセンターの設置・運営等については、非常に難しい判断が必要です。 ボランティアの受け入れ準備が整えば、まずは、県内で募集が始まり、次に県外の人の受けれとなるでしょう。県外の人が被災地域での活動が行えるようになるまでには時間がかかるかもしれません。被災地での活動については、(専門技能や活動スキルがある人以外は)被災地域からボランティア募集に関する発信があるまで、ボランティア活動を目的として被災地に向かうことは控えるようお願いします。


      現地に行けなくても、「募金活動」「必要な支援物資送る」物資を送る際は、様々な配慮が必要です。送り方によっては、かえって被災地に負荷をかける場合がありますのでご注意ください)など、様々な応援の方法があります。センターでは、そういった情報も収集しておりますので、何かしたいと考えている学生、教職員は、ぜひ、センターまでご相談ください。  

     状況は刻々と変化しています。今後の情報を注視しておいてください。 

    ****************************************************************


     最後に、現在、被災地域やその付近に居住している学生で、ボランティア活動を考えている学生は、安全と下記の点に留意してボランティア活動を行ってください。  


    1. 被災地で安全に活動するためには必要な準備があります。下記の団体の「災害ボラの予備知識」(認定特定非営利活動法人レスキューストックヤード)を参照して、十分に準備を行ってください。※コロナ感染予防対策だけではなく、熱中症対策なども十分に行い、こまめに休憩をとりながら安全に活動することに留意お願いします。
    2. ボランティア保険の加入は、最寄りの社会福祉協議会で加入出来ますので、近隣で活動する際でも加入することをお勧めします。近い内に即日発行できるようになるかと思いますが、現状(7月6日現在)は加入翌日からの発行になりますので、注意してください。水害には天災プランの加入は必要ありません。通常プランに加入してください。※2020年4月以降にボランティア保険に加入された方は、再度加入する必要はありません。★一部被災地域に居住の方のみ、Webからの加入も可能になりました注意事項を確認の上、加入手続きをしてください。
    3. 被災した地域の状況は刻々と変化しており、ボランティアの募集状況も変化しています。最新の情報は、全国社会福祉協議会・災害ボランティア情報等をWebで調べることが出来ます。参加する際には、必ず、最新の情報を調べてから参加するようにしましょう。
    4. 現在(7月14日現在)、岐阜県、長崎県、福岡県、熊本県、大分県内で災害ボランティアセンターが立ち上がっていますが、基本的には、県内に居住の方のボランティア募集になっています。混雑緩和のために事前予約が必要なところもあるので、必ず、活動しようと考えているボランティアセンターの最新情報を確認の上、活動に参加してください。

                                         以 上 ▶▶ボランティア・NPO活動センターのトップへ


    新型コロナウイルス感染拡大によってアルバイトができなくなるなどの理由から、学生達は経済的な影響を受け困窮しています。この現状をふまえ、本学では一人暮らしの学生や留学生への緊急支援措置として、「学生支援募金」を創設し、これをもとに学生への食材配布を実施しています。

    この度、この取り組み趣旨にご賛同いただいた京都生活協同組合様より、様々な食材を本学に寄付いただき本日(7月7日)に深草、瀬田、大宮キャンパスにて学生達に配布しました。食材の提供のみならず、学生達への配布を京都生活協同組合の方々にご協力いただきました。(深草学舎にて)

    この度ご協力いただいた京都生活協同組合関係者のみなさま、本当にありがとうございました。



    2020年6月11日、犯罪学研究センターは、第20回「CrimRC(犯罪学研究センター)研究会」をオンライン上で開催し、約30名が参加しました。
    【イベント概要>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-5591.html



    今回の研究会では、李 怡修氏(犯罪学研究センター 招聘研究員)と上田 光明氏(ATA-net研究センター 博士研究員/犯罪学研究センター 嘱託研究員)の2名が報告しました。

    この記事では、上田光明 氏(ATA-net研究センター 博士研究員/犯罪学研究センター 嘱託研究員)による「寝屋川市調査プロジェクト」の報告についてレポートします。このプロジェクトはPHDCN(Project on Human Development in Chicago Neighborhoods)調査をもとしています。

    はじめに、上田氏は、PHDCN(Project on Human Development in Chicago Neighborhoods)について説明しました。PHDCNはアメリカのシカゴ市で、1994年から1995年にかけて行われたコミュニティサーヴェイです。これは、家庭や学校、近隣地域が子どもと青少年の発達にどのような影響を与えるのかを調べる学際的な調査研究です。大きく分けて2つのパートがあり、社会的、経済的、組織的、政治的、文化的構造の動的変化に着目するコミュニティサーヴェイ(地域調査)のパート、無作為に選ばれた6000人以上の子どもと青少年を追跡、変化する生活環境や個人的特性を調べる縦断的調査*1のパートから構成されています。PHDCNはハーバード公衆衛生大学院の指揮のもと、1990年代初頭にスタート。マッカーサー財団や米司法省などが助成する、非常に大規模な調査となりました。このプロジェクトのデータは後にデータアーカイブに寄贈され、今では1011件ダウンロードされ、このデータを利用した論文が数多く生み出されました。なかでも、プロジェクトの中心メンバーであるロバート・サンプソン(Robert J. Sampson)等*2による論文が有名で、本来は理系の研究成果が中心で、社会科学に関する研究成果があまり掲載されることのない学術雑誌『サイエンス』に所収されています。

    つづいて上田氏はPHDCNの歴史・背景として、地域社会へどのように着目されたのかについて報告。犯罪学史をひもとき、1830年頃のゲリーとケトレーら*3による犯罪統計に基づいた研究まで遡ります。ゲリーらは、1825年頃に公開されたフランス司法省の「司法行政一般報告」を資料として用いて地域ごとの犯罪率を調査し、濃淡をつけた地図を作成しました。このように統計データが政府から発表されるようになったことで、地域社会の研究が盛んになっていきます。現在「地域社会と犯罪」について研究している竹中 祐二 准教授(北陸学院大学 人間総合学部社会学科、犯罪学研究センター 嘱託研究員)は、「犯罪多発地域とそうでない地域があるという着想を得て、そしてそれを実証したこと、実証に当たっては統計分析や地図の活用といった手法を用いているなどの点で、犯罪と地域社会の関係を見る研究の源流として評価される」(石塚伸一編著『新時代の犯罪学』2020年、207頁より)と述べています。

    1920年代になると、犯罪学研究の主流はヨーロッパからアメリカに移り、シカゴ学派(The Chicago school of Criminnology)の研究成果に注目が集まりました。パークとバージェスによって人間生態学、同心円地帯モデルが提唱されます*4。さらに彼らの主張は、ショーとマッケイにより社会解体論、シカゴ・エリア・プロジェクトという実践形式として発展*5。その後、社会解体論をベースとした研究は途絶え、シカゴ学派は地域社会をベースとした「線形モデル」「システミックモデル」「環境犯罪学アプローチ」の3つに分かれます*6。上田氏はPHDCNを理解するにはシステミックモデルを理解することが重要だと主張。中でも社会解体論を現代的に展開したサンプソン(Sampson, R. J.)らの集団効果理論*7に注目し、「社会的凝集性」と「非社会的統制に対する期待の共有」を測定する質問紙の構造について説明しました。
    シカゴプロジェクトでは、1994年から1995年にかけてコミュニティサーヴェイが実施されました。具体的には「社会的凝集性」と「非社会的統制に対する期待の共有」を測定する質問紙を参考に、シカゴ市を343のクラスター(集団)にわけ8782人の住民にインタビューが行われました。さらに系統的社会観察と言われる、実際にフィールドに出て地域環境、治安を測定する方法も取られました。

    今回のプロジェクトは、本研究センターが関わりを持つ寝屋川市への調査の提案です。上田氏は「寝屋川市の治安の良さを証明するために、このシカゴプロジェクトの寝屋川版を実行したいと考えた。しかし、調査を行うには実施方法や資金、研究チームの組織化などの課題がある。犯罪学の歴史に刻まれる大調査にはいくつものハードルがあるが、調査を実施し、歴史を刻むためにも一つひとつ課題をクリアしていきたい」と調査への意気込みを述べ、報告を終えました。

    ─────────────────────
    【補注】
    *1 縦断的調査
    一時点で1回限りしか行わないのではなく、一定の時間間隔をおいて繰り返し行う調査である。特定の調査対象を継続的に調査し、その実態や意識の変化を捉えることにより、集団の変化とそのタイミングや、変化とニーズの分析等が出来るという特質がある。

    *2 PHDCNの主要メンバー
    ロバート・サンプソン(Robert J. Sampson)はハーバード大学 社会学部学部長。主要な研究領域は、犯罪や犯罪からの立ち直りであり、地域社会やライフコース論の観点から研究を行っている。
    PHDCNにはほかに下記の主要メンバーがいる。
    ・ステファン・ローデンブッシュ(Stephen Raudenbush) シカゴ大学 社会学部
    ・フェルトン・J・アールズ(Felton J. Earls) ハーバード大学医学部 医学博士
    ・ジャンヌ・ブルックス=ガン(Jeanne Brooks-Gunn) コロンビア大学子どもと家族研究センター

    *3 ゲリーとケトレー(Andr Michel Guerry & Lambert Adolphe Jacques Quetelet)
    ゲリー(Andr Michel Guerry)はフランスの社会学者。ケトレー(Lambert Adolphe Jacques Quetelet)はベルギーの統計学者、天文学者、王立天文台長。確率論を基礎として、社会現象における自然科学的法則性を追求し、近代統計学を確立した。

    *4 パークとバージェス(Robert Ezra Park & Ernest Watson Burgess)
    パーク(Robert Ezra Park)はアメリカ合衆国の都市社会学者で、社会学におけるシカゴ学派の基礎を築いた主要人物の一人。バージェス(Ernest Watson Burgess)もアメリカの都市社会学者。
    「人間生態学」(human ecology)とは、生物個体と環境との関係、また一定の環境のもとでの個体相互の関係を研究する生態学との類比の下に人間社会を研究する一連の概念や観察技術のこと。「同心円地帯モデル」(Concentric ring model / Burgess model)とは、都市の内部構造を説明するモデルのひとつで、同心円モデルの中心の中心業務地区から外側に向けて、卸売・軽工業地区、低級住宅地区、中級住宅地区、高級住宅地区の順で、土地利用が変化していくモデルのこと。バージェスは「中心業務地区の外側にある遷移地帯で最も犯罪が起きている」と主張した。

    *5 ショーとマッケイ(Clifford R. Shaw & Henry D. McKay)
    ショー(Clifford R. Shaw)はアメリカの社会学者で、1930~1940年代のシカゴ学派の主要人物であり、アメリカの犯罪学で最も影響力のある人物の1人である。マッケイ(Henry D. McKay)もアメリカの社会学者。
    「社会解体論」とは旧来の社会構造が崩壊することによって、その社会の成員にとっての行為の基準となる価値や規範が維持できなくなり、社会の統制が不可能になった状態を指す概念である。「シカゴ・エリア・プロジェクト」(Chicago Area Project / CAP)とは、1930年代初頭にショーらが創始した児童福祉事業である。 CAPは支援者と支援対象者との協働を通して、地域の問題に対する住民のセルフヘルプを促進するものである。

    *6 線形モデル
    都市化の進展に伴って地域社会が崩壊する という過程を直線的に捉えるモデルのこと。
    システミックモデル
    個人がとり結ぶパーソナルな人間関係に焦点をあてるアプローチのこと。(西村 1997)
    環境犯罪学アプローチ
    環境自体をつくり変え犯罪実行をより困難にするもの。(守山 1993)

    *7 集団効果(Collective efficacy)理論
    集団効果(Collective efficacy)とは、コミュニティの構成員がコミュニティ内の個人や集団の行動をコントロールする能力を指す。
    集団効果という概念は、人々の行動をコントロールする非公式の社会統制(informal social control)と、社会的凝集性・信頼性(social cohesion and trust)から測られ、両者が合わさった形で地域社会の犯罪を予防するものとして説明される。(竹中 2010)


    a

    龍谷大学 You, Unlimitedの記事一覧

    お電話でのお問い合せはこちら

    電話番号: