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2月14日(金)に、龍谷大学先端理工学部と滋賀県立彦根工業高等学校、滋賀県立八幡工業高等学校、滋賀県立瀬田工業高等学校、滋賀県立国際情報高等学校、京都市立京都工学院高等学校との高大連携事業の一環として、オンライン特別講義を実施しました。

上記高等学校と先端理工学部は、生涯にわたって学習する意欲と態度を育成するとともに、基礎となる知識や技術・技能、学び方等を確実に身につけることを重視した教育の在り方や、高等学校での教育と大学での教育に関する教育接続等を共に考え、実践し、技術者教育の発展に寄与することを目的として、高大連携協定を結んでいます。なお、高大連携協定を結んでいる上記高等学校のうち、滋賀県立彦根工業高等学校、滋賀県立瀬田工業高等学校、滋賀県立国際情報高等学校は、令和6年度高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)に採択されています。

今回の特別講義は、データサイエンスやAIの理解を深めることを目的に、先端理工学部知能情報メディア課程 藤田 和弘教授が「データサイエンス・AI、大規模言語モデルによる対話型AI」について講演しました。

高校生にとって、今注目を集めている大規模言語モデルによる対話型AIについて、知識を深められるだけでなく、大学での学びを体験できる機会となったのではないでしょうか。


<講義スライド①>


<講義スライド②>


 京都市が降雪に見舞われた2025年2月8日(土)に、社会学部コミュニティマネジメント実習「伏見まちづくり実習」(担当:坂本清彦准教授)受講生と京エコロジーセンター(注1、以下「エコセン」)が共同で、脱炭素・地球温暖化防止・環境保全活動に取り組む複数の大学の学生交流会「GreenTomorrow Cafe(GTC)」を開催しました。


GTCの会場(京エコロジーセンター)

 「伏見まちづくり実習」は2019年度から伏見地域のさまざまなまちづくり活動に参加してきました。2024年度の「伏見まちづくり実習」(受講生16名)は、エコセンを運営する京都市環境保全活動推進協会(注2、以下「協会」)に地域や行政との橋渡し役となっていただき、特に京都市が進めている脱炭素の取り組みをまちづくり活動につなげ、「環境にやさしく歩いて楽しいまちづくり」に向けて活動してきました。

 今年度の活動の締めくくりとして、伏見まちづくり実習では同じように環境問題に取り組む学生同士のつながりを作り、今後の活動の連携、協働、拡大につなげようと、エコセンと協会のスタッフの方々とGTCを企画準備してきました。


京エコロジーセンターが制作してくれた参加各団体の紹介パネル

 GTCには、龍谷大学の3つの学生グループ(学生気候会議実行委員会、経営学部眞鍋ゼミ・ファッションロス班、伏見まちづくり実習)、立命館大学natuRableとNPOである気候ネットワーク(大学コンソーシアム京都産学連携教育プログラム実習生)の計5団体の学生が参加し、各団体の活動の紹介や酒かすを使った甘酒を飲みながら交流を深めました。

 「伏見まちづくり実習」受講生の司会進行で、協会事務局長のご挨拶、各団体の短い活動紹介、アイスブレイク、自己紹介に続いて、4、5人のテーブルに分かれて各団体の目的や活動場所や内容を話し合いました。話の内容を付箋に書きだして模造紙にはりつけ、参加者全員でどんな話題が出たか共有できるようにしました。


各団体の活動共有

 その後は団体毎に、他の団体の活動を聞いてこれからどんな活動の展開が考えられるか話し合いました。国際的な環境問題に取り組む学生グループは京都の地域などでの活動に広げていくことを、主に子どもを対象にした活動を展開してきたグループは大人にもターゲットを広げていくことを考えたいといった発言がありました。

 また、他の団体が主催、参加するイベントなどに一緒に参加する可能性についても話がありました。このように、お互いの活動紹介から得たインスピレーションを、今後の活動の幅を広げていく機会とする貴重な機会となりました。


抹茶フレーバーの甘酒の準備

 その後は、「伏見まちづくり実習」メンバーが準備した酒かすを使った甘酒を参加者みんなで飲みながら、さらに交流を深めました。「酒かす活かすカフェ」と名付けたこのセッションでは、伏見の名産日本酒づくりの副産物である酒かすを、フードロスなどを考えるきっかけとしたいという「伏見まちづくり実習」メンバーのアイデアから生まれました。

 麹ベースの甘酒に比べ酒かすベースの甘酒は、日本酒の香りがやや強く残り少し癖がありますが、実習メンバーが豆乳、ココアや抹茶を加えて仕上げた甘酒は、酒かすの香りは残しつつ飲みやすくて参加者からも大好評でした。最後に、オブザーバーとして参加された京都市役所の地球温暖化対策担当のスタッフの方からコメントをいただき、GTCを終了しました。同じような目的や内容で活動する学生同士とはいえ、大学内外でグループの壁を越えて交流することはあまりなく、今後の活動を拡大していくうえで今回のGTCは貴重な機会となりました。

 ところで、このGTCは、伏見地域の方々と「伏見まちづくり実習」のつながりの中で実現できたものです。GTC開催準備に多大なるご尽力をいただいたエコセン・協会も伏見区内にあり、そのつながりを今年度の実習活動でも生かすことができました。
 「酒かす活かすカフェ」で使った酒かすは「伏見まちづくり実習」の地元伏見の酒蔵の一つで日本酒銘柄「富翁」で知られる北川本家さんのものです。「酒かす活かすカフェ」の準備にあたり、実習メンバーが北川本家にお邪魔して北川幸宏社長から直接日本酒造りや酒かすについてお話を伺いました。


北川本家にて


 富翁の酒かす

 北川社長からは、お酒造りや酒かすをめぐる多くの興味深い話を聞かせていただきました。伏見の数多くの酒蔵からは多量の酒かすが出ますが、廃棄物として捨てられることはなく、すべてが何らかの形で使われているそうです。スーパーなどで販売される酒かすの他に、奈良漬けや西京漬けなどお酒の香りを活かした他の食べものの材料となることも多いとのことです。一方で、酒かすを食品や食品原料として使うためには、安全安心の確保に多大な神経を使うそうです。これらの話を「酒かす活かすカフェ」で紹介し、参加者に伏見やお酒にから環境問題にも興味を持ってもらえたと思います。
 北川本家さんに実習メンバーを紹介してくださったのは、実習メンバーが参加する伏見桃山地域のお祭りでご一緒することの多い京都信用金庫伏見支店の方々です。支店長さんから北川社長にご紹介を賜り、さらに職員の方が北川本家さんに同行して一緒に社長のお話を聞いてくださいました。


新しいつながりが生まれたことが何よりの成果


雪の日に参加してくれた皆さん、ありがとうございました

 このように、GTCは伏見の皆様とのつながり、お力添えで可能になりました。ありがとうございました。GTCは来年度以降も継続していきたいと考えており、皆様には引き続きお世話になると思います。よろしくお願いいたします。
 なお、伏見地区は京都市が推進する脱炭素の取り組みの先行地域に指定され、地域全体で様々な取り組みを進めています。龍谷大学も、二酸化炭素排出を実質ゼロとする「ゼロカーボンユニバーシティ」の達成などを通じて持続可能な社会の実現を目指す「龍谷大学カーボンニュートラル宣言」を2022年に発出しています。本学深草キャンパスが所在する伏見エリアは、京都市が実施する「脱炭素先行地域」事業の中心とされており、本学はその取り組みに参画し、脱炭素ライフスタイルへの行動変容を促進する取り組みなどを通じて、企業や地域等の脱炭素を牽引する「グリーン人材」の育成を目指しています。
 「伏見まちづくり」実習の受講生も、伏見における脱炭素の取り組みに関わりながら、地域社会の理解を深めるだけでなく、自分自身の環境意識も向上させています。

 今後は龍谷大学のこうした取り組みと「伏見まちづくりプロジェクト」の活動を連携させて脱炭素の取り組みに貢献しながら、2025年度の深草学舎移転後には社会学部の「地元」となる伏見地域とのつながりを生かして、学生に魅力ある実習を創っていきます。

注1「京エコロジーセンター」、正式名称「京都市環境保全活動センター」は、「地球温暖化防止京都会議(COP3)」を記念して、2002年に開設された環境学習や環境保全活動の輪を広げるための拠点施設です。

注2「京都市環境保全活動推進協会」は、持続可能な社会(脱炭素社会・循環型社会・自然共生社会)を実現するため、市民・事業者・行政・教育機関と連携を強め、広く環境保全活動を推進することにより、環境に配慮した市民の自主的な行動による地域社会づくりに寄与することを目的に設立された公益財団法人で、指定管理者として京エコロジーセンターの運営管理を行っています。


龍谷大学大学院理工学研究科の村上太一さん(修士課程2年)を筆頭著者として、本学先端理工学部卒業生の斎藤直也さん、国立環境研究所の松神秀徳主幹研究員、京都大学大学院工学研究科の高岡昌輝教授、本学先端理工学部の藤森崇教授からなる共同研究チームは、近年環境中での汚染問題が懸念されている有機フッ素化合物(PFAS)の中でも規制が進んでいるペルフルオロオクタン酸(PFOA)およびペルフルオロオクタデカン酸(PFOcDA)に対し焼却試験を行い、結果として精密な分解率や温度依存的な副生成物の発生挙動を明らかにしました。
⇒詳細:プレスリリース

同研究成果を国際科学雑誌「Chemosphere」(Elsevier社)において公表しました。

【発表論文】
- 英 題:Destruction of Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctadecanoic Acid (PFOcDA) by Incineration: Analysis of the By-Products and Their Characteristics
- 和 題:焼却によるペルフルオロオクタン酸(PFOA)とペルフルオロオクタデカン酸(PFOcDA)の分解: 副生成物の分析とその特性
- 著者:村上太一1、斎藤直也1、松神秀徳2、高岡昌輝3、藤森崇1(責任著者)
- 所属:1. 龍谷大学先端理工学部・理工学研究科、2. 国立環境研究所、3. 京都大学大学院工学研究科
- 掲載誌:国際科学雑誌「Chemosphere」Volume 373(Elsevier社)
- DOI:https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2025.144165 ※オンライン掲載:2025年1月29日
- 研究支援:(独)環境再生保全機構環境研究総合推進費(JPMEERF20213002)

【ポイント】
• 有機フッ素化合物(PFAS)は、近年、環境中での残留性やヒトを含む生態系への影響が懸念されている化学物質として国内外で規制の動きが強まっている。
• 焼却試験により、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)およびペルフルオロオクタデカン酸(PFOcDA)は850℃以上で、国際条約等で求められる高い分解率(99.999%超)を示した。他方で、700℃以下では十分に分解せず、複数の副生成物の発生が増大した。
• 副生成物には炭素数が少なくなった化合物やエーテル結合を含む化合物がみられた。特に、副生成する短鎖の有機フッ素化合物は、気相中へ移行し環境中へ排出される可能性が示唆された。

【概要図】


焼却試験により、有機フッ素化合物のPFOAおよびPFOcDAは850℃以上で高い分解率(99.999%超)を示した。他方で、700℃以下では十分に分解せず、複数の副生成物の発生が増大した。

焼却試験により、有機フッ素化合物のPFOAおよびPFOcDAは850℃以上で高い分解率(99.999%超)を示した。他方で、700℃以下では十分に分解せず、複数の副生成物の発生が増大した。

【焼却試験に関するイメージ】


焼却実験に用いる制御型電気炉


物質の濃縮に用いる「ロータリーエバポレーター(回転式蒸発装置)」

今回の研究成果に関して、筆頭著者の村上太一さん(本学理工学研究科 修士課程2年)と、藤森 崇教授(本学先端理工学部 環境生態工学課程)のコメントを紹介します。


 村上太一さん(本学理工学研究科 修士課程2年)

村上太一さん(本学理工学研究科 修士課程2年)

村上さんコメント:
ふと目にしたニュースでPFASによる環境汚染が身近な地域にも影響を及ぼしていることを知り、他人事ではないと感じたことがきっかけで本研究テーマに関心を持ちました。この研究成果がPFAS問題の解決や今後の研究の一助となることを願っています。


藤森 崇教授(本学先端理工学部 環境生態工学課程)

藤森 崇教授(本学先端理工学部 環境生態工学課程)

藤森先生コメント:
「燃やせば分解出来て当たり前」と一見簡単に思えるテーマですが、ラボスケールの実験デザイン、分解率の厳密な定量、PFASの挙動解析など、ひとつずつ丁寧にクリアした結果得られた成果です。学部時代から一貫して研究を進めてくれた村上さんと卒業した斎藤さんの努力の賜物です。

⇒関連情報:藤森教授インタビュー記事(Academic Doors)


2025年2月11日、政策実践・探究演習(国内)洲本プロジェクトの学部生6名と石倉研准教授、櫻井あかね実践型教育助手は、洲本市内で開かれた第2回域学連携学会に参加しました。

この学会を主催するNPO法人洲本域学連携研究所は、京都大学や京都工芸繊維大学、龍谷大学などの卒業生によって設立されました。昨年に引き続き本町商店街にある旧タケダ玩具店で開催され、9大学(大阪工業大学、大阪芸術大学、大手前大学、近畿大学、京都大学、京都橘大学、神戸大学、奈良女子大学、龍谷大学)から14の発表が、対面とオンラインでありました。

洲本プロジェクトは千草竹原班と企業連携班が登壇しました。概要は以下のとおりです。

・千草竹原班「集落の引継書」
千草竹原は洲本市役所のある市街地から車で15分ほど離れた小規模集落で、洲本プロジェクトが活動をはじめて12年目になります。ここ数年、元洲本市地域おこし協力隊員と家族が移住したり、政策学部卒業生が原木しいたけ栽培を承継したり世代交代の動きがみられます。地域のリーダーの思いを若い担い手や学生らが引き継ぎ、集落を維持しつつ域学連携を進められるよう引継書を作成しました。

・企業連携班「竹五ヶ年計画、かいぼり五ヶ年計画」
企業連携班のステークホルダーは、洲本市や市民活動団体、島内外の企業など多様です。そのため活動を進めるうえで、目標やアプローチを明確にして関係者と共有することが重要になります。これまで洲本プロジェクトが取り組んできた放置竹林問題、ため池の維持管理に焦点をあて、ヒアリング調査と学生の提案をもとに五ヶ年計画を作成しました。


他大学の学生や大学院生の前で発表することに緊張を伴いましたが、放置竹林問題へのアプローチなど共通する部分があり、情報共有の良い機会になりました。参考にしながら来年度の取り組みにつなげていきたいと思います。


発表の様子


会場の様子


焼却試験により、適切な分解条件や不十分な分解による意図しない副生成物の発生等を突き止める

【本件のポイント】

  • 有機フッ素化合物(PFAS)は、近年、環境中での残留性やヒトを含む生態系への影響が懸念されている化学物質として国内外で規制の動きが強まっている。
  • 焼却試験により、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)およびペルフルオロオクタデカン酸(PFOcDA)は850℃以上で、国際条約等で求められる高い分解率(99.999%超)を示した。他方で、700℃以下では十分に分解せず、複数の副生成物の発生が増大した。
  • 副生成物には炭素数が少なくなった化合物やエーテル結合を含む化合物がみられた。特に、副生成する短鎖の有機フッ素化合物は、気相中へ移行し環境中へ排出される可能性が示唆された。


【本件の概要】
 龍谷大学大学院理工学研究科の村上太一さん(修士課程2年)を筆頭著者として、本学先端理工学部卒業生の斎藤直也さん、国立環境研究所の松神秀徳主幹研究員、京都大学大学院工学研究科の高岡昌輝教授、本学先端理工学部の藤森崇教授からなる共同研究チームは、近年環境中での汚染問題が懸念されている有機フッ素化合物(PFAS)の中でも規制が進んでいるペルフルオロオクタン酸(PFOA)およびペルフルオロオクタデカン酸(PFOcDA)に対し焼却試験を行い、結果として精密な分解率や温度依存的な副生成物の発生挙動を明らかにしました。同研究成果は国際科学雑誌「Chemosphere」に掲載されました(2025年1月29日公開)。

【掲載論文】
ー    英 題:Destruction of Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctadecanoic 

                          Acid(PFOcDA) by Incineration: Analysis of the By-Products and Their 

                          Characteristics
ー    和 題:焼却によるペルフルオロオクタン酸(PFOA)とペルフルオロオクタデカン

      酸(PFOcDA)の分解: 副生成物の分析とその特性
ー    著 者:村上太一1、斎藤直也1、松神秀徳2、高岡昌輝3、藤森崇1(責任著者)
ー    所 属:1. 龍谷大学先端理工学部・理工学研究科、2. 国立環境研究所、

      3. 京都大学大学院工学研究科
ー    掲載誌:国際科学雑誌「Chemosphere」Volume 373(Elsevier社)
ー    DOI:https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2025.144165 

      ※オンライン掲載:2025年1月29日
ー    研究支援:(独)環境再生保全機構環境研究総合推進費(JPMEERF20213002)

【研究成果・手法】
 純物質を用いたラボスケールでの焼却試験で得られた結果は、PFOA等のカルボン酸を含む有機フッ素化合物であるペルフルオロカルボン酸類(PFCAs)の適切な分解条件を決める際の科学的知見となります。試験の結果、PFOAおよびPFOcDAともに850℃以上で、国際条約等で求められる高い分解率(99.999%超)を示しました。本研究では、この99.999%超の高い分解率まで定量的に評価した点が特色といえます。これは元の物質量の10万分の1を下回る量を分析することを意味し、今回の実験系の場合数十~数百ナノグラムオーダーでの分析精度が求められます。また、本研究で得られた700℃以下の不十分な分解条件において副生成する複数のPFCAsの温度依存的な発生挙動の知見は、他に類例のないデータです。副生成物として元物質より炭素数が短いPFCAsやエーテル結合(R-O-R’)を持つPFCAs等が定量されました。特にPFOAやPFOcDAにはないエーテル結合を持つPFCAs(PFECAs)の副生成は、これまで報告例のない新知見と考えられます。論文中では、元物質の分解過程で発生した低分子のフッ素化合物であるテトラフルオロエチレン(TFE, C2F4)等が温度依存的に反応して副生成物が生じている可能性を議論しています。以上より、分解対象の物質だけでなく副生成物質をも考慮した分解処理の重要性が示唆されました。
 ラボスケールでの焼却実験の工夫として、焼却後に実験装置から採取できるあらゆる場所からサンプルを回収して分析を行いました。具体的には焼却後の試料ボート中の残渣、炉心管の内壁、炉の出口下流側のガラスフィルター、吸着剤、気相中成分を回収するためのトルエンおよび水酸化ナトリウムの溶液等です。細分化した多媒体サンプリングにより、焼却後のPFCAsの分配挙動を把握することが可能となりました。副生成物を含めたPFCAsの分配挙動を比較した結果、炭素数が少ない物質ほど気相中への移行割合が大きくなる傾向が示されました。PFCAsの大気環境中への放出を回避する観点からも、確実な高温での分解処理が望ましいと考えられます。

【今後への期待】
 今回対象としたPFOcDAは炭素18個が鎖状につながっており、炭素8個のPFOAよりも鎖の長い物質です。炭素数が9~21個のPFCAsを長鎖PFCA(LC-PFCA)と呼び、現在進行形で国際条約の規制対象となることが決定しています。したがってPFOcDAに関する焼却試験の結果は、今後必要となるLC-PFCAの焼却分解・挙動を理解するための先行的な知見を与えるものです。かつてない環境変動に晒される現代において、PFASをめぐる化学物質問題は喫緊の課題です。本研究成果が、現在だけでなく将来も含めたPFASの適切な分解処理のための計画立案の一助となることを願います。

【本件の概要図】■■■ 転載/加工可能な論文中の図(1点) ■■■


焼却試験により、有機フッ素化合物のPFOAおよびPFOcDAは850℃以上で高い分解率(99.999%超)を示した。他方で、700℃以下では十分に分解せず、複数の副生成物の発生が増大した。


<研究内容に関するお問い合わせ先 >
龍谷大学 先端理工学部 環境生態工学課程 藤森 崇(ふじもり たかし)教授
E-mail: fujimori@rins.ryukoku.ac.jp 


配信元:龍谷大学 研究部(瀬田)
Tel 077-543-7559 

setaken@ad.ryukoku.ac.jp https://www.kenkyubu.ryukoku.ac.jp/ 
 


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