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1. 河村先生ってどんな人?

Q1. 先生の専門は商法ですが、商法を専門にされたきっかけを教えてください。また、先生が考える商法の魅力もお願いします。

専門を選んだきっかけは、ゼミですね。そもそも商法のゼミに進んだのは、授業が面白かったからです。当時は会社法を習ったのですが、とても合理的なシステムだと感動しました。また、知らない世界のことだったので関心を持ちましたね。あとは、私が入学した当時は阪神大震災、地下鉄サリン事件など不安定な時代背景もあり、「日本の経済はこのままで大丈夫なのか」という雰囲気でした。だからこそ、商法の必要性を感じたのかもしれないです。
商法の魅力はダイナミックさですね。改正も多く、時代の変化を最も強く反映するところが面白いです。

Q2. 大学教員になろうと思ったきっかけ、理由など教えてください。

実務家や就職などの、いくつかの選択肢の中から選びました。教員の道しかないという感じではなかったですね。友人と将来について話したことも大きいと思います。ゼミの先生にも相談しました。家族が寛容だったことも、理由のひとつですね。今振り返って見ると、一度企業に就職して実務を学んでからというのも良かったかもしれません。

Q3. 学生時代を振り返って、どんな学生だったとご自身で思われますか?

一人暮らしで自由な生活をしていました。友人たちの家に集まって話していることが多かったです。今となっては貴重な時間だったと思います。
毎日授業に出るような、模範的な学生ではありませんでしたが勉強、読書はしていました。大学3年生ごろに司法試験を志して資格の予備校にも行きました。

Q4. 河村先生のご趣味はなんですか?

1つは、本を読むことが学生の頃からの趣味です。最近は、クラシック系の音楽を聴くことも好きです。また、大学生の頃にパソコン屋でバイトしていたなど、パソコンをいじることも好きです。自分でプログラミングをするなどもしています。
私は新しいものが好きで、アレクサなど新しいものが出てくると買ってしまいます。買いすぎて、アレクサが部屋の数以上にあります。

Q5.河村先生は、ずっと京都に住んでらっしゃるのですか? また先生が思う京都の魅力を教えてください。

元々大阪に住んでおり、大学生の時に京都に来ました。学生目線での京都の魅力は、自転車があればどこにでも行けて、生活をするというだけではなくアクティビティをすることもできるというところだと思います。他にこのような都市はあまりないのではないかと感じます。私も、学生の頃自転車でいろんなところに行きました。



2. 河村ゼミってどんなゼミ?

Q1. 河村ゼミの特徴や強みを教えてください。


学習や発表の「方法」を丁寧に学ぶのが特徴ですかね。あとは、判例学習を重視しています。講義ではどうしても概要的な説明になるので、もっと具体的なケースについて、問題点などを取り扱います。内容的には企業法に親しみを持てて、将来に役立つものかなと思います。

Q2. 今までで一番印象に残っているゼミのイベントはなんですか。また、そのイベントは毎年行われていましたか?

10年ほど前、夏か春の休暇期間にゼミ旅行で富士急ハイランドに行ったことですね。深夜バスで夜に出発して、朝到着する、という。しんどかったので印象的ですが、楽しかったですね。コロナが流行り始めて、そういうイベントは中々できなくなってしまいましたが。
毎年ではないですね。私から提案するってことはあまりなく、その年の学生さんが行きたいと言えば行く、という感じです。

Q3. 最近では何かイベントを行っていますか?

コロナが一時期おさまっていた頃には裁判所の見学に行きました。
裁判所の見学には、大体毎年行っています。

Q4. ゼミ生の特徴を教えてください。

多様な学生がいるので、一概には言えないですね。その年によって集まる学生のタイプは違いますから。でも真面目で素直な学生さんが多い印象です。

Q5. 学生やゼミ生と関わる上で意識されていることはありますか?

それぞれの学生さんの状況を把握した方が良いと常に思っています。人によって性格や能力は違うので、個別対応を意識するようにしています。私が学生の時、話している内容が難しすぎて理解が追いつかない授業もありました。そういう先生も必要だとは思いますが、私はわかるような話をできるだけするように心がけていますね。

Q6. 学生にゼミを通して養ってほしいこと、また大学生活を通して養ってほしいことを教えてください。

文章を読む力と書く力、ですね。そういう意味では読書習慣をつけるのが重要かなと思います。卒業したあとも一番求められる力だと思うので。学生の間に身につけて欲しいですね。

Q7. ゼミにはどのような学生に来てもらいたいといった事はありますか?

多様性が大事なので、いろんな学生に来て欲しいです。その上で、大前提としては、商法に関心がある人ですね。
あとは、ゼミは講義ではなくディスカッションを行うので、予習・復習をしっかり行ってもらいます。また、ゼミ合宿など、提案力のある人が居てくれたらいいなと思います。

Q8. 龍谷大学の魅力を教えてください。

他の大学と比べても、教育がとても丁寧だと思います。一人一人の先生が丁寧に授業をされていると思います。

Q9. ゼミ選びで迷っている方に向けて、一言お願いします。

まず、分野に興味があるゼミを選択するというのが大前提として大事だと思います。
次に、やはり先生の個性というものが重要なので、ゼミに入る前に、その先生に直接会いに行ってみるというのもいいと思います。


3.インタビューを終えて

まず初めに、お忙しい中インタビューを受けてくださった河村先生ありがとうございました。
インタビューでは、ゼミに関する質問から先生の趣味についての質問までたくさんの質問に答えていただき、私たち学生も先生に直接こんなにお話をお伺いできる機会はあまりないので、とても楽しくインタビューをさせていただきました。
このインタビュー記事がこれをご覧になっている皆さんのゼミ選択、学校選択のお役に立てれば幸いに思います。
自分の可能性は無限。You, Unlimited.次回のインタビューも、ご期待ください。


【取材・記事】
法学部学生広報スタッフ LeD's
有信 巴茄(法学部3年)
髙橋 彩乃(法学部3年)
松波 亜海(法学部2年)


1.堀先生ってどんな人?

Q1.学生時代はどのように過ごされていましたか?また、どうして教員になろうと思ったんですか?


基本的に今もそうなんですが、すごい変わった学生でしたね(笑)。学生の時には、基本的にずっと勉強していましたね。他のインタビューの先生を見るとですね、「遊んでばかりいました」とか「俺勉強してなかったっすよ」とか言いながらもすごいきちんとした成績を残しておられるので、すごいなと思うんですけど。私は基本的にずっと勉強していました。大学生の頃、基本的に3回生から受けることができる司法試験を受けようと思っていたんですが、ある日、気づいたら出願の日付が過ぎていて(笑)。「こらまいったな」と思って、しょうがないので、「じゃあこの1年間何しようかな」ということで他のサークル、それまでやってなかった活動とか、あとはゼミの活動に力を入れてみたりして、そこでなんというか、ある意味では視界が広がったというところがありますね。

Q2.学生時代、民事訴訟法のゼミに入ろうと思ったきっかけはなんですか?

私のいた大学だと、ゼミが一年間の単位で区切られていて、この大学だと4セメスターから5セメスターの演習Ⅰと、6セメスターから8セメスターの演習Ⅱと分かれていると思うんですけど。私のいた大学だと、3年生で4単位、4年生で4単位という形で別々のゼミが取れたんです。そういうこともあって、色々とゼミを取ってたんですけど、元々憲法が好きだったので、憲法のゼミを一つとって、もう一つ何にしようかなと思っていたときに、たまたま法学検定試験というのがありまして。そこで、民事訴訟法の点が悪かったんですね(笑)。「あ、ちょっと民訴勉強しなきゃな(笑)」と思って、民事訴訟法を取ったっていうのが、一番、直近の動機かなと思ってて。不思議なものですねぇ(笑)。その民事訴訟法のゼミはですね、私の同級生を含めて、私がいた学年に27人の学生がいたんですけど。そのうち少なくとも5人は司法試験に受かっているので、中々優秀なゼミだったんだなぁと思っているんですけど。

Q3.民事訴訟法の魅力はなんですか?

まず民事訴訟法の魅力というのは、特に訴訟法なので、刑事訴訟法と比較するのがわかりやすいと思います。刑事訴訟法というのは、検察官が一方にいて、他方に罪を犯したと疑われている被告人がいて、それを裁判官が裁く、という構図で、基本的にこの構図は全部変わらないんですね。それに対して民事訴訟法というのは、原告と被告、訴えた人と訴えられた人がいて、誰でも訴えることができますし、逆に言えば、誰でも訴えられる可能性がある、ということで立場が入れ替わりうる状態で、そういったところで、色々と考えなければいけない点が増えるので、そういった点で、「面白い、興味深いところがある。」というのが魅力でした。民事訴訟法はすごく魅力が伝わりづらい学問で、大人になってもわかりにくいもので(笑)。

Q4.研究の世界に入ろうと思ったきっかけはありますか?

色々あるんですけど、元々学生時代に民事訴訟法のゼミに入ってまして、その時に、ゼミが面白かったのと、たまたまその大学で学会が開かれて、その学会の手伝いをしたんですね。その時に「あぁ、研究の世界はすごいことをしているんだなぁ」というふうに思いまして、そういうところがあって、民事訴訟法を勉強しようと。


2.堀ゼミってどんなゼミ?

Q1.堀先生のゼミで行っている合同ゼミはどんなことをしているのですか?

合同ゼミといっても、学内で行っているので、そんなに大きなものではないんですけど。もう一つの民事訴訟法のゼミである越山先生のゼミと合同でやっています。3年生からしか民事訴訟法の授業がないので、2年生の演習Ⅰでは、まず民法の基本的な事例、そしてそれに即して法的な議論が展開できるようにして、かつ少しだけその事件が訴訟になったらどうなるのか、そういうことを勉強しているというところです。例えば、民法で代理という制度を学ぶのですが、代理に関して民法で出される事案が、実際に訴訟になるとするとどのようにおこなわれるのか、訴訟のどういう局面で代理に関してどういう主張が出てくるのか、といったようなことも触れるようにしています。越山先生とはお互いに口頭での説明を補い合ったり、一緒に事例を考えたりしています。色々な面で、私にとっても学ぶところの多い合同ゼミです。

Q2.堀先生にとってゼミとはどのようなものですか?

やっぱり、講義科目で出来ないことを補充するっていうのが演習科目の一番の意義だと思うんですね。講義っていうのは一方的に情報を伝える側面があって、学生さんが自分で物事を考えるということが、そこまでできないんですけど、やっぱり演習科目だと自主的に自分で物事を考えていくという能力が大事だと思っています。その意味で、私にとってゼミとは、学生の皆さんが、自主性とか問題解決能力とかの面で育っていく場だと思います。

Q3.ゼミにはどんな学生がいるのでしょうか?また、どんな学生に来てほしいと考えていますか?

バラエティー豊かで、個性があって、非常になんていうか、様々な学生さんがいますね。やっぱり、ずっと国立で過ごしてきたので、国立は学生の質が均質というか、けっこう幅が狭いんですね、それに比べると私立はバックグラウンドが広くて、なんというか能力とか関心とか、全然違うので、その点でちょっと苦労はするんですけど。ただ、私のゼミにきている子たちでいうと、興味・関心はけっこうバラバラなんですが、自主的に考えてくれるところはいいところだと思います。今後もそういった学生が来てくれるといいな、と。

Q4.ゼミで学生に身に付けてもらいたい能力はありますか?

まずは、そうですね。基本的には、折角法学部に入っているので、法的に討論できる能力っていうのをまずは身に付けてもらいたいんです。ですが、それだけでなく、その基礎となる物事をちゃんと調べる能力であるとか、その調べたものをきちんとまとめる能力とか、ちゃんと表現して文章にできる能力とか、そういった基礎的なスキルを身に付けてほしいなと思います。

Q5.「ここは他のゼミには負けないぞ」という点があれば教えてください。

ないですね(笑)。本当のところをいうと、私はまだまだ教員としての経験も浅くて、ゼミとはこういうものだ、という固まった考え方もあまりないので、学生の皆さんの意見を聞いて、それに応じて、「じゃあこうやってみようか」って柔軟に考えることができるというのは、他のところには負けにくいところかなと思います。

Q6.最後に学生に向けて何かメッセージがあればお願いします。

まず、高校生に向けてだと、大学はなんというか、高校までと違って、色々な可能性に溢れたところで、自分がやりたいと思う勉強ができる、すごくいいところだと思うんですね。なので、学部の選択とか、学部の中でも何を専攻するとかもあると思うんですけど、色々なことを考えて、色々な可能性を探ってほしいと思います。大学生に向けてということになると、もちろんバイトとかサークルとか色々あると思うので、皆さん忙しいとは思うんですけど、もっと勉強しよう、というところですね(笑)。もちろんインターネットの記事とかすごく役に立つものもあるんですけど、色んな本もありますからそういうものでたくさん勉強してもらって、自分の視野を広げていってくれたらなと。ある種のバタフライエフェクトみたいなものだと思うのですが、一冊の本との出会いが人生を変えることだってあると思うんですよね。それが良い方向への変化か、悪い方向への変化かは別として。そういうわけで、結論としては皆さんもっと図書館に行って本を読みましょう、というあたりかもしれません。



3.インタビューを終えて

研究などでお忙しいにもかかわらず、インタビューを喜んでお受けしていただいてとても嬉しく思いました。朗らかで物静かな先生でしたが、インタビューの際は、明るく笑い話も加えて話していただいて、私たちも楽しくインタビューをすることができました。誰でも訴えられる可能性がある民事訴訟法。皆さんの知識にもなる分野です。ぜひ、これをきっかけに民事訴訟法に関心を持ったなら、堀ゼミへ。自分の可能性は無限。You, Unlimited.次回の教授インタビューも、乞うご期待ください。


【取材・記事】
安川宗一郎(法学部1回生)
植道茜(法学部2回生)


1.濱中先生ってどんな人?

Q1.濱中先生は学生時代どのような学生だったのですか?

僕は、あんまり人と同じことをするのが好きじゃないんですよ。だから、なるたけちょっと外れているような学生でありたいというか、若い時に普通とやや外れた生活をしたい、というのがあって。皆さんもアルバイトされていると思うんですけど、大学1年生の時は、バーテンダーのバイトをやっていて、カクテルを作ってたんです。夜の8時ぐらいから入って、真夜中に終わります。朝の4時までやって次の日の朝一限目に英語の授業とかあるわけですから、もう授業を聞いていられないんですよ(笑)。僕が大学に入ったのは平成元年から4年なんですけど、平成初期のころの大学生って今よりいい加減なんですよ。先生もいい加減です(笑)。まずシラバスがなかったし、授業に出ておかないと何をやるかわからなかった。良くも悪くも昔の大学ってちょっといい加減だったんです。ろくに板書もせずに、行くまで何の話をするかわからなくて、しかも講義概要と全然違う授業をする。そういう授業があったらやる気なくなるでしょう?言い訳っぽいですけど、当時はそうだったんです。ただ現実としては国際社会が大きく動揺していて、それに対する知的好奇心に応えてくれる大学の講義ってないかな、って思ったら、一つだけあったんです。それが国際政治の授業をやっている教員で、一も二もなくそこのゼミに入ったんです。そこからたくさん本を読むようになって、それから本を買うのにお金に糸目をつけるなって指導教員が言うようになったので、僕もそれで一か月に本を買うのに五千円とか一万円とかを使うようになって、読むようになったので、その辺からちゃんとした学生になったのかなと思います。

Q2.濱中先生は比較政治学や国際政治学、そして中東政治学を専門にしていらっしゃいますが、なぜその研究をしようと思ったのですか?

ちょうど冷戦構造が崩壊する時期に私は大学の1回生で、世界の動揺、国際秩序の動揺をすごく感じる時期だったわけです。そんな風に国際情勢が大きく動くような出来事が立て続けに起こって、それで国際政治をやろうと思ったわけです。
比較政治、中東政治っていうのは、直接のきっかけは湾岸危機、湾岸戦争です。日本で暮らしていると平和ですよね。ですが、中東っていうと、皆さんもイメージあると思いますけど、とにかく戦争をしているという印象が強いんですよね。そうすると、あの地域はなんで戦争をしているのか、というのが素朴な疑問としてあったわけです。そこから中東の政治の研究を2回生の時にやろうと思って。湾岸戦争が始まったのが1991年の1月17日なので、そのころがちょうどゼミを考える時期でした。この大学は、ゼミが2回生の後期から始まりますけど、私のいた大学は3回生からでした。ただ、どこのゼミに行くかというのは2回生の終わりごろにおおよそ決めていて、ゼミの先生も入る予定の2回生を集めて勉強会をやっていたので、「もう中東にしよう」と決めた、というのが理由です。

Q3.濱中先生が学生時代に入っていらっしゃったゼミではどのようなことを研究なさっていたのですか?

僕が入っていたゼミでは、先生がメキシコのことをやっていたんですけど、南米の政治についてやりなさいってことは言わなくて、どこでもいいから研究するところを選べ、と言われました。さっきのような事情があるので、中東にしようってすぐ決めたんですけど。卒業論文を書くときに、中東でもどこかに絞らなくちゃいけなくなりました。どこか国を決めないと書くのが難しいので。そのときは出来事について、例えば湾岸戦争について調べようという発想にはならなくて、どこかの国を選ぶということを思い立ったんです。ゼミで読んでいた文献が『政治体制』というタイトルの山口定先生という人が書いた文献で、私を指導してくれた先生の先生筋にあたる人らしいんですけど、その文献を読むと民主主義の話がずっと出てきて。それで僕が最初に思い付いたのがトルコです。今は(トルコが民主主義かと言われると)かなり怪しいですけど。もう一つ思い付いたのがイスラエル。どっちにするか迷って、イスラエルにしました。理由はいっぱいありますが、一つは、日本語と英語で情報が多いこと。インターネットもない時代だし、外国の情報はテレビくらいですね。衛生放送もまだ一般的じゃなかったから。短波ラジオっていう、そのラジオから海外のニュースを聞くくらいしか、海外の情報を入れる方法がなかったんです。でもちょっとずつ海外の情報が入りやすくなってきて、私自身、現地に行くようになったのはもう少し後ですけど、調べることがやりやすくなりました。


2.濱中ゼミってどんなゼミ?

Q1.濱中先生はゼミをどのようなものだとお考えですか。


ゼミは大学教育の中核だと思っています。それは、私自身の経験でゼミに入って自分が変わったというか、自己革命を起こしたような、一定のまともな学生になったので。ゼミがなかったら自堕落な学生生活をおそらくずっと続けていたでしょうね。私が学生の頃はバブルだったから、そんな自堕落な学生でも就職はなんとかなった時代なんです。ただ、ゼミに入って、学問というのはここまで面白いものなのか、ということに気付いたというか、気づかされたというか。だから大学に入ってゼミに入らないというのは僕からしたら何をしに来たのか意味が分からないというぐらいなんです。たしかに昔と違って今は演習形式の講義があります。龍谷大学で言えば法政アクティブリサーチとか、そういう参加型のものってたしかにあるし、私自身も講義は結構入念に準備してやっています。ただ学生さんから見ると、基本的には与えられたテキストとか映像資料とかで勉強して、という受け身の学習ですよね。だからスタイルとしては高校までとあまり変わらなくて面白くない。ゼミなどの参加型のものだったら、自分で何をするか決められますよね。卒業論文なんて言うのはまるっきり自分で調べて書くものです。教員からの指導をきっちり受けないとまともなものはできないですけど、それでも何か調べて書くっていうのは自分の力がすごく伸びるんです。ある問題について一生懸命それを考える。近いことをやっている人がそばにいるとすごくありがたくて、そこで議論をする。その問題についてどう思うか。 学生さん側の努力にも依拠しますが、やっぱり研究や勉強を通じて自分を成長させる場じゃないですかね。私の場合は革命的に成長したと思っています。

Q2.濱中先生のゼミでは具体的にどのようなことをなさっているのですか。また、ここは他のゼミに負けない!というような魅力などあれば教えてください。

今、学生がやっていることというと、合同報告会が3回生であるので、そのテーマを学生たちが決めて、それに対して助言をするということをしています。負けないぞ、という特徴は、学生さんのモチベーションに合わせてやる、という形なので、学生さんが主体的に「こういうものを学びたいからゼミでやりませんか」と持ち込んでくれるとやりやすいかな、というところはありますね。この先、可能性があるとすると、私は統計分析が専門なので、中東のいろんな国で全国レベルの世論調査をやっています。ものすごくお金はかかるんですが、国から研究費を持ってきて、いろんなところで調査をやって、データを分析して、国際学会で報告して、英語のジャーナルに載せる、というのが僕の仕事なんです。だからそういうことがやりたいという学生が来たら、龍谷大学法学部の中だとものすごく特徴のあるゼミになると思います。ただ、ハードルが高い。教員に近いテーマをやって、データをとるのが学生さんだとお金がかかるので、教員の持っているデータを渡したり、大学院生だったら教員と一緒に研究して論文を二人で書いて、アメリカやヨーロッパに出かけて行って英語で話す。この大学の学生でもできると思いますよ。むちゃくちゃ勉強しないといけないけど(笑)。

Q3.今現在はどのような学生がゼミに集まっているのですか。

今は、海外情勢に興味を持っていたり、イスラームとか日本にあまり馴染みのない宗教に興味があったり、あるいは紛争と平和とか国際政治一般に通じるようなトピックスに興味がある、という人が多いです。その中からゼミの他の学生と議論できるような、関心を持つような、または自分が強い関心を抱いているトピックスを選んで研究する、という形です。今の4回生は「イスラーム世界におけるLGBT」に興味を持っています。中東の、イスラームの強い国だとすると、例えば同性愛者って国によっては死刑になるんです。イランとかサウジアラビアとか。でもそのなかでもLGBTの人って確率的に生まれてくるらしくて、環境とか、親がどういうタイプとかというのは、あまり関係ない。だから中東にも一定数いるはずなんです。ということは、そういう抑圧的な社会でそういう風に生まれた人はどのように自己形成していくのか。あるいはそのあたりをイスラームの規範からどう正当化できるのかできないのか、ということに興味をもって、コーランを読んだり、いろいろな書物を読んだり、自分で東京のモスクへ行って(一週間ぐらい居たらしいんですけど)インタビューしたり、ということをしています。

Q4.今ゼミに入っている学生やこれから入る学生に身に着けてほしい能力は何ですか。

語学力と数学力ですね。統計分析をするのに数学力が必要です。語学力と数学力っていろいろと使い勝手が良い能力なんですよ。語学が普遍的に使えるというのは説明しなくてもいいと思うんですけど、数学力は些末なことを言うと、例えば、公務員試験とか企業の試験のSPIのなかの非言語系というのは数学っぽい部分があって、数学に強いとあの試験にも強くなれます。入ってからで言うと、例えば民間企業だったら、いろいろな事業拡大とかマーケティングとかそういう場面で「定量化しろ」ってよく言われるんです。例えば「ある商品が20代の女性に売れそうだ」っていう説明は定性的なんですよ。じゃあ、「20代の女性の何人中何人がこれを好むんだ」というのが定量化です。別の言い方をすると具体的な数字を出せ、ということですね。企業でも、官公庁でも具体的な数字に基づいて何か説明することを「エビデンスを出す」と言うのですが、エビデンスに基づいて言わないと効果もわからない。今の自治体や国の政策は「今までやってきたから」とか「外国でやってきてうまくいってきたから」とかざっくりした理由でやっていることが多いんです。でも定量的に議論できるはずです。実際に私が見聞きした政策だと、高速道路の需要はどう変わるのかという問題。ある時間だけ安くするとか、ある時期だけタイミングを決めて高速道路を安くするとか、あるいは安くせず値段がそのままの路線とかを決めて、データを集めるんです。そのデータを分析することで、最適な高速道路の料金設定を考える、というのが定量化して証拠を出して何かを決めるというものです。企業でなにかサービスを売るのも基本的には同じです。こういうものを売ると、この時期にどういったターゲットにこのような感じで売れるようになりました、という証拠があったらそれを採用しよう、という風になるわけです。それに合わせた商品やサービスをつくる。だから、統計や数学が持っている力というのはすごく強いんです。

私も中東研究をやっていますが、データから言えることしか基本的には言わない、というスタンスを示しています。前の大学ではこのようなことを学生に教えていたのですが、前にいたところは理系のセクションだったので学生はそんなに嫌がらなかったけど、ここだとあまり興味を持つ人がいないので…。学部生でやりたいと言った人はまだいないですね。ただ、私もこの大学に来てまだ3年目なのでまだわからない。大学院に来る人は大体これをやります。だから院生には統計分析を教えています。

Q5.学生に向けて何かメッセージをお願いします。

多くの先生が言うことなので、月並みかもしれないんですが、人間が勉強だけできる時というのは限られています。だからしっかりやってほしい。ただ、大学の勉強というのは高校までの勉強と違って色々な意味で自由だし、楽しいと思います。高校までの勉強は僕の目から見ると「いかに短い時間で一つしかない答えにたどり着くか」という勉強だったと思います。でも、大学の勉強って違いますよね。まず、答えがあるかわからない。もっというと、何が問題かすらわからない。現実の世界の問題というのはそんなものばっかりです。そういう「何が問題かすら、わからないもの」を「これが問題なんだ」ということを見つけてきて、いろいろな人たちが考えてきたわけです。その結果成り立っているのが我々の文明なんです。我々の文明的な生活や知恵を支えているのは昔の人、先人がよくわからなかった問題を問題として掘り起こして、それにどうやって答えを与えるかというのを努力してきた結果、我々の生活があるわけです。勉強というのは人類が何万年もかけて進化してきたものを、ものすごく短期間で、18年くらいで人生の中に落とし込んで教えられます。大学になると、まさに先端のことができるわけで、まだ誰も取り組んでいない問題に取り組むことができるわけです。その人次第ですが。まだ誰も取り組んでいない問題に19歳とか20歳とかで取り組めるわけで。勉強というのはもうわかっていることを頭の中に入れる、理解することですが、だれもやっていないことを調べてこれが答えだと取り上げて、それに対してこういう答えなんじゃないかという風に考えることを研究と言います。大学生って研究していいんですよ。大学院生も研究していいし。やはり学生さんには「エンジョイ(研究を楽しめ)」と言いたいですね。


3.インタビューを終えて

研究などでお忙しいにもかかわらず、インタビューを喜んでお受けしていただいてとても嬉しく思いました。龍谷大学には法律学科しかありませんが、もちろん政治も学ぶことができます。そこで、政治に疑問が出てきた際、学生さんたちは、ぜひ、中東政治について濱中先生に質問してみてください。そこから一気に視野が広がるかもしれません。自分の可能性は無限。You, Unlimited.次回の教授インタビューも、乞うご期待ください。


【取材・記事】
加藤 綾乃(法学部1回生)
安川 宗一郎(法学部1回生)
北浦 歩実(法学部2回生)


1.牛尾先生ってどんな人?

Q1.先生は民法や里山学などについて研究されていますが、研究し始めるきっかけなどはありましたか?


元々私は、19世紀のドイツの法理論を研究するところから始まりました。というのは、日本の法制度や法の運用はなぜヨーロッパと比較すると非常に封建的で民主的ではない部分が多いのか、と感じたからで、19世紀ドイツの法律家、特にルドルフ・イエーリングの法理論を研究しました。イエーリングは、日本の法理論上は、不法行為や違法性、権利論に影響を与えた人物で、明治前期頃から彼の理論が日本にも少しずつ入ってきていましたので、彼の考えを日本のものと比較しながら研究したのが始まりでした。ですので、研究を始めた頃は里山学からはかけ離れた研究を行っていましたね。

その後、龍谷大学に赴任してからは、農地法の研究会に入って現地で農村調査などをする機会があり、そういった活動の延長線上に里山研究があります。それまでは座学を中心に研究していましたが、親しかった先生からの紹介を通して里山研究と出会い、研究の世界が広がりましたし、自然と触れ合う大きなきっかけとなりました。今は、里山学研究センターのセンター長も務めています。


2.牛尾ゼミってどんなゼミ?

Q1.先生は「ゼミ」をどのようなものと考えていますか?


ゼミの目標としては、とにかく「学生が力をつけること」に尽きると思っています。ゼミとは単に所属する場ではなく、「力」を付ける目的の場だと考えています。具体的に私が掲げている目標としては、まず勉強することです。もちろん勉強は民法の勉強から始まりますが、どんなことも法律に関わっていますので、研修に行くにあたっては、研修先の地域の基礎情報をはじめ、産業や政策、法的問題点の勉強をするなど、勉強は形にとらわれなくてもいいと思っています。法学部卒として社会へ出て他学部卒の人たちと関り、法学の角度から例えば医学や建築、まちづくりなどの問題に取り組んでいくためには、色々なことを勉強することが大事だと思うからです。そういった点で、大学は自分自身への投資をする場所だと思いますね。

次に掲げる目標は、充実した時間を過ごすことです。時間の使い方は人によって様々だとは思いますが、例えば以前は1つの仕事だけをこなしていた1時間という時間で、集中して3つ4つと多くの仕事をこなすようパーフォーマンスを上げ、余った分はまとまったオフの時間に使うのも良いことだと思います。

そして3つ目の目標は、卒業する時点で様々な能力を修得していることです。牛尾ゼミ卒業生は、パソコンスキルや、先方とのアポイントや、大量の文章をまとめることが出来るようになっています。そういった意味で、自分の頭で考えて、自分で資料を探して、組み立てて作り上げるといった一連の流れを出来るような能力を身につければ、卒業後にどこへ行っても大丈夫だと確信しています。

Q2.牛尾ゼミでは、春と夏に合宿を行っているとお聞きしましたが、その合宿では主にどのようなことをするのでしょうか?また、合宿を通して学生に身に付けてほしい力などがあれば教えていただきたいです。

2回生の春合宿は、いわゆる研修合宿で、目的や内容については基本的に学生たちに決めてもらっています。昨年は国家戦略特区と農業を大きなテーマとして新潟へ行きました。新潟水俣病や日本遺産、世界農業遺産といった詳細なテーマを学生自らが見つけ、世の中が抱える問題について自分たちがどこまで接近できるか、最先端で取り組んでいる方々に対して学生だからといった「甘え」無く、今できることを勉強しつくした姿勢で臨むという活動を行っています。机に向かって勉強するだけではなく、社会の現実を目の当たりにして勉強することが重要だと考えています。

次に、牛尾ゼミでは1年間で2年分のことに取り組もうというのが特徴で、その内容として具体的には3回生にゼミ論文を書いてもらっています。春合宿では研修先へ出掛けましたが、夏合宿では判例や学説を読んで机に向かう勉強をどこまでやれるか、研究内容にどこまでアプローチ出来るかを行います。そしてこの夏合宿では、3回生はゼミ論文、4回生は卒論の合同報告会を行い、実際はまだゼミが本格始動していない2回生も参加します。2泊3日の合宿のうち1日は合同報告会に費やしますが、次の日からは上下回生で班を作って自由に観光し、その夜は全員で楽しくコンパをするメリハリのある合宿になっています。

この合宿を通してまず2回生には先輩の背中を見たり、先輩から勉強や就職の話を聞いたりする中で自分の将来について考えてもらいたいですね。次に3回生には人数の多くなる夏の合同合宿において全体のスケジュール管理やプランニングをして、コミュニケーション能力を付けてほしいです。同時に、3回生は合宿のメインでもある論文報告までの一連の流れをやり遂げるための総合的な力もつけていってほしいです。そうして4回生になると、報告の際に要点をコンパクトにまとめた報告が出来るようになって、本当に総合力が身に付くと思いますね。

Q3.牛尾ゼミにはどのような学生が集まっていますか?また、どのような学生に来てほしいと考えていますか?

牛尾ゼミは一説では「過労死ゼミ」とも呼ばれているんですが、まだ誰も死んだこともないし過労死しそうなのは私の方です(笑)。ただ、そういう評判のおかげか、意欲のある人や「自分は変わりたい」という思いを持った人が多く集まってくるように思います。例えば高校時代にやりきれなかったことがある、受験では力を思うように発揮できなかったなどそれぞれの思いから、大学では何かをやり遂げてリベンジしたいといった野心を持った学生が多いかなと感じますね。そして、これからもやはり意欲ある学生には来てほしいです。色んな学生がいるとは思いますが、成績の善し悪しは関係なくて、どんなに分からないところや苦手なことがあっても、しがみついて頑張ってくれる人は必ず伸びるし、いい結果を出せると思っています。ですので、最後までやり抜くぞという意志を持った学生に来てほしいなと思いますね。

Q4.ここは他のゼミには負けないぞという点があれば教えてください。

ゼミの特徴としては上限設定をしていないことです。龍谷大学の学生であればこのくらいでいいだろうということではなく、レベルやクオリティーを要求し、全国の大学生の中で勝負できる人の育成を目指しています。私はこの龍谷大学に勤めて25年ですが、実際にゼミ生の多くは、本人の希望に近いところへ就職できていますし、希望以上のところへ就職したゼミ生も少なくありません。そういう意味では、全国の大学の法学部の中で負けていないと思います。また、最初の一年はみんなに頑張ってもらいますが、ゼミには少し運動部ノリ的なものもあり、卒業後も横の関係・縦の関係が強く、とても仲良くて、それはみなさんの一生の財産ではないかなと思います。

Q5.牛尾先生のゼミの卒業生にはどのような進路に進む学生がいますか。

民法の専門分野では、研究者です。実際にひとりは大阪市立大学法学部の准教授になっていますし、今大学院で博士号取得を目指している学生もいます。次に法律関係職も多いです。裁判官や弁護士になっている人もいますし、司法書士の数も多く、毎年ロースクールに通う学生は一人ずつくらいいます。それから、公務員が多いです。多い年ではゼミ生の半分を超える人が公務員になります。国家総合職にも去年と一昨年、女子学生が就職しました。二人との女性なんですよね(笑)。他には、京都市役所や京都府庁もたくさん行きますね。民間に関しても、通信系や金融、流通系もそこそこいます。全体としては、一番多い就職先はやはり民間ですが、30%を超える学生は公務員になっていて、5~10%は法律関係職という感じです。

Q6.何かはまっていることや趣味はありますか。

料理ですね(笑)。いま急にはまった訳ではないんですが、留学先で色んな料理を試すようになってからおもしろくなって料理をしますが、細かい味付けなどない男料理です。それと併せて食べるということも楽しみの一つですね。B級でいいんですが、地域ごとの美味しいものをその季節に食べる。そして合わせて地元のものを飲むことも大事ですね(笑)

他には高校時代に演劇の演出などしたことがあり、大学入る前には映画監督になりたいと思っていた時期がありましたので、今でも映画は好きです。

Q7.今まで合宿でいろんなところへ行かれたと思いますが、何か思い出に残るエピソードがあれば教えてください。

どこもそこならではの味わいがあり、よかったですね。私達は単に観光ではなく、下調べをしてから、その地域に入っていくので、少し見え方は違います。今でも行った先々に知り合いがいたりするので、観光は観光でも、最近、地域の状況はどうですか?と聞いてしまう感じですね。里山の観点から見たり、景観の観点からみたり、土地の問題・植生・気候・食べ物、全部含めて行った先々すべてがよかったですね。

それから、ドイツに二度ほど留学をしました。そのときに、ヨーロッパのあちこちに自分で計画を組みたてて回りましたが、そうすると、ハプニングばっかりですし、上手く計画通り運ぶことはないですね。でもそれがまた旅行であり、様々な事が起こることが面白いですね。ヨーロッパではそんなことばかりでしたが、日本はあまりそういった余裕がないように感じます。日本でももう少しルーズでもいいかなと思いますが(笑)。

Q8.最後に学生に向けてメッセージがあればお願いします。

今しかないかけがえのない時間を過ごしてほしいですね。私は常日頃から学生たちに「時空を超えろ!」と言っているのですが、わかる人たちはいずれわかるようになります。そこに新しい世界が見えてきます。



3.インタビューを終えて

アクティブ!という印象のあるゼミを開講されている牛尾先生ですが、インタビューの日は終始、優しく物腰柔らかに私たちの質問に答えてくださいました。また、牛尾ゼミには自分の目標をしっかりと持っている学生が多いのですが、先生の情熱により、そんな学生がさらに熱く目標に向かって努力することができるんだな、と改めて感じました。


【取材・記事】
法学部学生広報スタッフ LeD's
石田 聡子(法学部3年生)
小山 夏美(法学部3年生)


1.濵口先生ってどんな人?

Q1.なぜ憲法学を研究しようと思ったのですか?


私が学生時代、学部で所属していたゼミは実は憲法ではなく刑法のゼミなんですよ。そこで刑法の勉強をしていくと、具体的な解釈論以上に、なぜ人が何かの犯罪によって処罰されるのか、国は刑罰をもって人を処罰しうるのかということの方に興味を持つようになりました。強力な強制力を発動する刑罰をもってしてでも守られるべき利益や人権とは何なのか、そこからそもそも国家権力の行使に関わるところの憲法にも興味が広がっていったのではないかと思います。だから、ゼミの先生とも相談して大学院に進むときは専攻を憲法に移していましたね。今でもその原点は変わらなくて、たとえば共謀罪(テロ等準備罪)のように、国家がいかなる場合に刑罰を発動すべきなのか、そのとき捜査権力はどこまで権力を行使しうるのかというような、人権と権力との根本的な関係にはずっと関心を持ち続けています。

それから、もともと人間は個人として尊重され(日本国憲法13条)、平等な存在(同14条)とあるのに、実際にはそうではありません。人間らしい生活(同25条)が送れていない人もたくさんいます。そういった現実に、法や政治はどうあるべきなのかに根本的に興味があったというのはありますね。自分が女性ということもあって、女性差別的な社会通念には常に疑問を感じてきました。なので「平等」という問題にはとりわけ関心が高かったと思います。そういうもともとの問題関心も憲法学を学びたいと思った理由で、実際刑法ゼミに所属しながら憲法のゼミも(単位取得に関係なく)掛け持ちして参加していました。

Q2.どうして研究者になられたのですか?

最初、法学部に入った時は周りも自分も司法試験を受けて、弁護士になろうと思っていました。人と関わって人の力になれるような仕事がしたくて、そういう面で、自分が依頼人の利益を考えて法的な問題を考えていくという、弁護士の仕事があっているかと。ただ、試験勉強をしていくうちに、どうしても突き詰める性格で、そもそもなんでこういう法律があるのか、その法律が間違っているのではないか、というように今の政治や裁判では実現できていない憲法的価値の問題を考えたいと思うようになりました。それはゼミでの学びと連動していて、徹底的に深く考えるのはゼミじゃないとできません。追究していく勉強の方が多分好きだったんですね。

なので、最初から研究者になりたいと思っていたわけでは全然なくて、思い悩む性格と突き詰めてちゃんと考える性格が最終的にはちゃんと研究をしようというところに落ち着いたという感じですかね。

Q3.最近のマイブームは何かありますか?

今は水曜日の夜にドラマの「相棒」と、木曜日の夜に「科捜研の女」の2つを観るのが習慣化してます(笑)。今日は帰ったら相棒を観るぞ!という感じで。刑事もののドラマって色々あるじゃないですか。でも相棒はちょっと他と違っていて、憲法・刑事法とも関係あるんですけど、警察組織の中の権力関係とか、警察以外の国会とか他の行政機関の権力の濫用という問題も描いていたり、生活保護、派遣切り、テロの恐怖、武器輸出、米軍基地、監視国家、家庭教育支援法、DVなど現実の社会問題に鋭く切り込んでいることに途中で気づきはじめたんですよ。そういう脚本が面白いと思うようになってから、TSUTAYAで借りて最初のシーズンからほぼ全部観るようになりました(笑)。

科捜研の女のマリコさんも、相棒の右京さんも出世とか組織のしがらみに囚われることなく自由で、自分たちが所属している捜査機関が持つ強大な権力が濫用されること、私欲のために歪んだ使われ方をされることを徹底的に嫌います。そういう姿勢も自分が共感できるポイントでしょうか。もっとも、二人のようにあんなに自由で振り切った行動を取れるかは自分には自信がありませんが、ああなりたいなぁとは思って観ています(笑)。

Q4.ドラえもんが好きだとお伺いしたのですが、ちなみにどの秘密道具が好きですか?

ムード盛り上げ楽団ですね(これ、わかる人どれくらいいるんでしょうか?・笑)。音楽隊のロボットがいて場面に合わせていろんな曲を流してくれるんですけど、それによって人の感情を引き出し、ときには自分も気づかないほどの潜在能力を目覚めさせてくれるんです。ドラえもんの道具ってどこでもドアとか、ビッグライトとか、人間にできないことを道具で実現するっていうのが普通じゃないですか。だけど、ムード盛り上げ楽団は基本的に人間の力がベースでそれをちょっとだけ後押しする道具なんです。人間にとって代わるのではなくて、人間の力をサポートするための科学技術というのがすごく素敵だなと思ったんですね。

ドラえもんという作品では、未来の道具を使って人を幸せにもできるけれど、使い方を間違うととんでもない結果ももたらすというシーンが多く描かれています。そこには技術が発達すればするほど、人間のおごりとか、悪意にこそ向き合わないといけないというメッセージが含まれているように思うんです。それはたとえば核兵器や環境破壊だったり今人類が直面している現実の問題にも通じているように感じています。


2.濵口ゼミってどんなゼミ?

Q1.濵口先生は「ゼミ」をどのようなものだと考えていますか?

講義は教員が大人数の学生の前に立って専門的知識とかその学問の情報を伝えるという感じで、どうしても一方向が基本にならざるを得ません。しかしゼミの場合は少人数なので、学生も教員も関係なく全員がゼミのメンバーの一人として積極的に質疑応答していくという形式で真剣に議論できる場です。日常生活の中で政治や憲法の問題を真剣に議論する機会はあまりないと思うんです。本当はプライベートな場でもしゃべってほしいですが、なかなかそういう場では気恥ずかしくて言えない事でも、ゼミはそういうことこそ、メインに話すことができます。1つのテーマやいろんな学問的な問題について真剣に議論できる場は貴重だと思うので、そういう意味でゼミは大事だと思います。教員でも気づかない発想で、ゼミ生が直感的に鋭い発言をすることもあって、私にとっても刺激になるんですよ。

もう一つは、徹底的に調べ、考える能力を身につけるところということもあると思います。ゼミのときには、あるテーマについて議論するにあたって、その基礎となる学問的議論や、根拠となる考え方を徹底的に問いかけるように促します。「ただなんとなく、そう思う」から、根拠ある説得的議論へ、それが大学での学問の作法です。それを身につけることができるのはゼミならではかなと思います。

Q2.どんな学生が集まっていますか?

性格とか個性は本当にバラバラですが、自分をしっかり持っていたり、興味関心がはっきりしている人など精神的に自立しているしっかりした人が多い気がします。私がのんびりした性格なので、ゼミ生がしっかりしてくるのかもしれませんね(笑)。あとは、私が大事にしているから、というのもありますが、他人の報告でも自分の報告でもそこからちゃんと学んで考えたい、という姿勢は強いように思います。

Q3.では、どんな学生に来てほしいと考えていますか?

やっぱり憲法や人権に興味がある人に来てほしいというのはありますけど、「ひっかかり」を感じられる人に来てほしいと思います。私もみんなと一緒に考えたいと思ってゼミをやっているので、どうしてなんだろう、なんでこういう事が起きるのだろうと、「ひっかかり」を感じて考えることができる、要するに自分の頭で考えられる人に来てほしいかなと感じます。なので、一方的に私から何かを教わりたいと思っている人は何か違うと感じてしまうかもしれません。ゼミでの研究テーマやゼミの進め方も全部ゼミ生たち自身で考えてもらっていますので、ゼミを作り上げるという過程においても自分で考えるという力は必要になってきますね。

もちろんゼミでの議論が行き詰まったり、間違った前提知識で進んでしまいそうなときは私から助け船を出してサポートしています。またゼミ生たちも、どうしたらもっと説得力のある議論ができるだろうか、この問題の本質に迫るには何が足りないのだろうか、とまずは自分の頭で考えた上で、相談に来てくれて一緒に考えることも多いです。学年が進むにつれて、自分の報告の前に相談を持ち掛けてくる回数がだんだんと増えていき、自然とゼミの時間以外でも自分の取り組んでいるテーマについて考えるようになる、そんなふうに成長していくゼミ生の姿を見るのがとても嬉しいです。

Q4.「ここは他のゼミには負けないぞ」という点があれば教えてください。

負けないぞといわれると難しいですね…。強いてあげるなら自主性ですかね。学生が自分で考えて自分で動くというところを私自身意識して指導しているところなので、自然とそうなるという感じですかね。先ほども述べましたが、自分で考える力をつけて、私のサポートがなくても正確な知識と根拠に基づいた議論ができるようになってほしいので、ゼミでの報告でも、卒業論文執筆の指導でも、細かいところも含めて徹底的に聞き返します。最初は大変だけど、それを繰り返していくうちに、指摘した疑問点に的確に答えることができるようになっていくので、そういう意味では粘り強さとか集中力は身についている子が多いのではないでしょうか。

Q5.ゼミで身に着けてほしい能力は何ですか?

正確な学問的知識を蓄えることも必要ですが、最終的にはそれを使って考えるところが重要になってきます。自分がこういうことに関心があるとか、どうしてこんな問題が起こるのだろう、なんで差別が無くならないんだろうといった興味関心から学問への入り口に入っていくので、関心を持つというところを自分で考えることができれば、勉強していくにつれ、その関心を学問的議論へと上手く展開できるように自然となっていきます。なので、身に着けてほしい能力というと、自分の頭でしっかり考えられるという事と、社会の物事にひっかかりを感じられるという事ですかね。

それからもう一つは、想像力だと思います。憲法学に限らず法学・政治学で扱う事例には、一見すると今の自分には関係ない(と思っている)事柄の方が多いのではないでしょうか。刑事事件の被疑者になることも、生活保護も受けることもないかもしれない。国会議員になることもないかもしれない。そうすると、自分に関係ある(と思っている)こと「だけ」を学ぼうとする。必要な知識だけ得られればそれでよい、という姿勢になりがちです。しかし、人間に基本的に備わっているはずの「権利」が脅かされている人が現実にいる。人間はあるべき正しさとは裏腹に、利己的な感情も差別的な感情も持ち合わせている不完全な生き物です。さらに力の差や置かれている環境の違いも相まって結局は弱い立場の人たちに生きづらさのしわ寄せが行ってしまうことも、歴史は証明しています。だからこそ、「自分は大丈夫、関係ない」、から、すべての人が人間らしく生きられる社会を構築するために国家・社会はどうあるべきなのか、思いをめぐらせることが絶対に必要で、そのためには自分が置かれた立場ではない、まさにいま、人間としての権利を脅かされている人の立場に立って考える、想像力が不可欠になってくるのだと思います。

Q6.最後に学生に向けて何かメッセージがあればお願いします。

学生の4年間は長いようであっという間に終わってしまいます。大学の授業を、卒業するための単位を取るためのものとあまり受け身に考えてほしくなくて、学ぶことを面白いと感じてほしいです。楽しいと感じられる瞬間が学問の中にあれば大学生活はより充実すると思います。大学の先生のようないろんな分野のエキスパートがいて、いろんな話が聞ける場というのは社会に出たらまずないので、実は学生の皆さんはすごく貴重な場にいます。いろんなことを知ることができて、いろんなことを学べることが面白いと思える機会が社会人になったらまずないという事を知ってもらえれば、すごく貴重な時間を過ごしているのだと実感できると思います。

また、自分の今の価値観に満足することなく、それも疑いつつ、いろんな意見や知識を吸収しながら自分を刷新していく姿勢も大事にしてください。生まれてから大学に入学するまでの間に得た自分の経験や知識から形成されている自分の価値観は、「その時点での」価値観にすぎません。学問の世界では社会の物事を見る見方にはいろいろあって、どんなものさしで見るのかも学問領域によって多様です。憲法学(法学)では、憲法という国家・社会のよって立つ規範に従って、社会的事象に切り込みます。そういう新しい視点を入れることによって、自分でも気づかなかった固定観念・視野の狭さに気づくことも多いですよ。でもそれこそが大学で学ぶ意義なのではと思います。ぜひ「自分」と向き合ってどんどん生まれ変わってください。


3.インタビューを終えて

ゼミとはどんな場所であるのか、大学で学ぶとは何なのかを今一度再確認することができたとても有意義な時間になりました。
また、インタビューはゼミが終わった直後にさせていただいたのですが、濵口先生のお誕生日が近かったという事で、ゼミ生からプレゼントを貰っておられました。濵口先生の親しみやすさもゼミ生の自主性の創造に少なからず関わっているのだと感じました。
では、次回の更新もお楽しみに。


【取材・記事】
法学部学生広報スタッフ LeD's
古 太恵人(法学部3年生)
前田 祐希(法学部2年生)


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