暴漢の凶弾に
地球には、本当に国境なんかないし、日本だけを見ようとしてもすぐほかの国が見えてきてしまう。地球を全体として見ることができるのは、人類の進化といっていいのではないか。
地球は国境のない一つの共同体であることを、宇宙空間から証言した名言です。それでも人類には目に見えない越えがたい壁が横たわっていることは確かです。政治、経済、宗教などが複雑にからんだ国家間の対立、民族間の紛争は21世紀に入った今も、昔と変わらず起きています。
遠くインドではブッダ(釈尊)の晩年に、釈迦族が滅亡するという一大事件が起こりました。釈迦族の人たちから、母の生まれを侮辱されたことに怨みを抱いた隣国の王が、その報復として大虐殺を行なったのです。このような悲惨な出来事が、現在も跡を絶ちません。平和を願われたブッダ(釈尊)は次のように語っておられます。
実にこの世においては、怨みに
(『ダンマパダ(法句経)』第5偈)
怨みの連鎖は苦悩を深めるだけです。決して安らぎをもたらしません。しかし、だからといって怨みを捨てることも容易なことではありません。
この言葉によってブッダ(釈尊)が伝えようとしたのは「慈悲」の大切さです。立場も考え方も違う者、ましてや敵対する者が自己主張を繰り返すだけでは、相手に理解されることはありません。他者を慈しむ心を自らに育んでいく行為によって怨みを超えて平和を実現していく道が開かれます。
ブッダの教えを今に伝える「建学の精神」は、そのことを私たちに語りかけているのです。