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【発表のポイント】
【概要】
近年、人間活動や気候変動による魚類の分布の変化が報告されており、その現状把握や予測には分布に影響する要因を解明することが不可欠です。
東北大学・海洋研究開発機構変動 海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)の長田穣准教授及び千葉県立中央博物館・北海道大学・京都大学・神戸大学・九州大学・島根大学・龍谷大学・鹿児島大学・かずさDNA研究所らからなる共同研究グループは、日本全国528地点に及ぶ大規模な環境DNA調査を実施し、沿岸魚1,220種(現在論文で報告されている種の約44%)を検出しました。さらに、これらの魚類の分布を解析したところ、魚類の輸送・移動の制限・生息環境の提供といった様々な海流の働きが多くの魚類の分布に影響していることが明らかになりました。この成果は、日本の沿岸魚類の生物多様性に関する理解を深めるとともに、将来の沿岸魚類の分布変化の予測に役立つことが期待されます。
本研究の成果は、2026年2月16日付で科学総合誌Scientific Reportsに掲載されました。
【詳細な説明】
研究の背景
近年、人間の活動によって様々な生物の分布が変化していることが報告されています。生物の分布はなぜ変化しているのでしょうか?この疑問に答えるためには、生物の分布を決める要因(より正確にいえば生物の個体数を増減させる要因)を明らかにする必要があります。しかしながら、広域で多くの生物に影響を与える要因を明らかにすることは非常に困難です。それは、広域に生物の分布を決める要因に対する知識が事前になかったり測定が難しかったりするために、人間にとって「隠されて」いる場合があるためです。
今回の取り組み
まず、研究グループは日本の沿岸魚類の分布を調べるため、日本全国の沿岸528地点に及ぶ大規模な環境DNA調査を実施しました。環境DNA調査は少ない調査労力で多くの種を網羅的に検出できるという特徴があります。今回の調査では夏の3か月という短期間に各地点で採水を行い、全地点で合計1,220種もの沿岸魚種(複合種(注2)を含む)を検出することに成功しました(図1)。
次に、研究グループはこの環境DNA調査によって得られた生物分布情報のビッグデータを基に、日本の沿岸魚類の分布を決める要因を探ることにしました。一般的に、生物の分布を決める要因をデータから特定する際には、測定した環境変数が生物の分布を上手く説明できるかを統計的に調べます。しかし、測定できなかった環境変数に対してはそもそもそのようなアプローチをとることはできません。そこで、私たちは最先端のデータ解析手法を使って、多くの生物の分布情報から逆に測定できなかった「隠された」環境変数を見つけることにしました。これは、もし測定していない重要な環境変数が多くの生物の分布を決めているのであれば、多くの生物の分布に共通した特徴から隠された変数を見つけられるだろう、と考えられるからです。実際、このような隠された変数が存在することを想定して解析すると、沿岸魚類の分布をより上手く説明できるようになります。
このようなデータ解析によって見つけられた、2つの隠された変数を調べたところ、日本の沿岸魚類には5つの地理的境界線(注3)があることが分かりました(図2)。日本の沿岸魚類は境界線(B1~B5)を挟んで地域の生物の組成が変化します。例えば、屋久島近くに引かれる境界線(B1)は以前の研究では大隅線として報告されており、太くて流れの早い黒潮を横断できないために、近縁種が分かれて分布していることが知られています。また、それ以外の境界線(B2~B5)についても黒潮や親潮によって輸送されてきた魚類によって生物組成の変化が生じていると考えられました。総じて、日本周辺に流れる海流は、魚類を輸送したり、移動を妨げたり、生息しやすい環境を与えたり、異なる複数の働きによって日本沿岸の魚類相を形成していることが推察されました。
今後の展開
環境DNA技術は近年急速に発展しており、地域の生物相をモニタリングするツールとして注目されています。例えば、日本国内では環境DNAを利用した生物多様性観測網としてANEMONE(https://anemone.bio/)が始動しました。国際的にも「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ネイチャーポジティブ目標が採択されており、環境DNA技術に基づくモニタリングはますます重要になると考えられます。環境DNA調査と先端的なデータ解析手法を組み合わせることで、地域の生物多様性に関する理解を深め、将来の生物分布の予測に役立てることができると期待されます。
図1. 調査が行われた地点(左図)と各調査地で検出された種数(右図)。多い地点では一度の調査で118種もの魚種を検出しました。右図は箱ひげ図と呼ばれています。箱が四分位点を、中央の太線が中央値を表します。太線の位置によって各地域の種数を直感的に比較することができます。また、箱の大きさによって各地域内で種数がどのくらいばらついているかを調べることができます。
図2. 環境DNA調査から沿岸魚類の分布に影響していると推定された「隠された」変数。左図の変数1は主に暖流によって、右図の変数2は寒流によって魚類相が変化していると考えられます。赤い太線は生物の組成(生物相)が大きく変化する地理的境界線を表します。
【謝辞】
本研究は、科学技術振興機構(JST)「戦略的創造研究推進事業 CRESTプログラム(JPMJCR13A2)」および日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業(JP19H05641, JP20H03311, JP21H03651, JP21K15171)」の支援を受けて実施されました。また、本研究は文部科学省による「世界トップレベル研究拠点プログラム」に認定されたWPI-AIMEC(末尾注)の活動の一部として行っています。『東北大学2025年度オープンアクセス推進のためのAPC支援事業』 の支援を受け、本論文はオープンアクセスとなっています。
【用語説明】
注1. 環境DNAとは、生物から水や土壌、空気といった環境中に放出されたDNAのことで
す。環境中から環境DNAを集めて分析することで、少ない調査労力で環境中に存在
する多くの生物を網羅的に調査することができます。
注2. 複合種とは、本研究の文脈では属内の複数の種の集合のことをさします。DNAが類
似している近縁の種は、短い環境DNAから区別できず、複合種として扱われること
があります。
注3. 地理的境界線とは、生物群集の組成(生物相)が大きく変化する、海洋や陸地に引
かれる境界線のことをさします。
【論文情報】
タイトル:Large-scale environmental DNA survey reveals niche axes of a regional coastal fish community
著者:Yutaka Osada*, Masaki Miya*, Hitoshi Araki, Hideyuki Doi, Akihide Kasai, Reiji Masuda, Toshifumi Minamoto, Satoquo Seino, Teruhiko Takahara, Satoshi Yamamoto, Hiroki Yamanaka, Mitsuhiro Aizu-Hirano, Keiichi Fukaya, Takehiko Fukuchi, Ryo O. Gotoh, Masakazu Hori, Midori Iida, Tomohito Imaizumi, Tadashi Kajita, Takashi Kanbe, Tanaka Kenta, Yumi Kobayashi, Tomohiko Matsuura, Hiroki Mizumoto, Hiroyuki Motomura, Hiroaki Murakami, Kenji Nohara, Shin-ichiro Oka, Tetsuya Sado, Hiroshi Senou, Koichi Shibukawa, Tomoki Sunobe, Hiroshi Takahashi, Koji Takayama, Katsuhiko Tanaka, Hisashi Yamakawa, Satoru Yokoyama, Seokjin Yoon, Michio Kondoh*
*責任著者:
東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
准教授 長田 穣
元・千葉県立中央博物館
主席研究員 宮 正樹(現・早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 客員上級研究員)
東北大学生命科学研究科/変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
教授 近藤 倫生
掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-025-31307-4
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-025-31307-4
【WPI-AIMEC(エイメック)とは】(https://wpi-aimec.jp/)
東北大学と海洋研究開発機構(JAMSTEC)が2024年に共同で設立した「変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)」は、気候変動や人間活動がもたらす環境の変化に対する海洋生態系の反応を解明し、その将来予測を目指す国際的な研究拠点です。
物理学・生態学・数理科学を融合させるアプローチのもと、地域から全地球までの海洋生態系の解析と予測に挑みます。得られた知見をもとに社会と対話し、持続可能な海洋と地球、人間社会の未来へ貢献していきます。
※WPI(世界トップレベル研究拠点プログラム):
文部科学省による平成19 年度開始の拠点形成事業で、研究力と国際研究環境を有する「世界から目に見える研究拠点」の形成を目的としています。
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学・海洋研究開発機構
変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
准教授 長田 穣
TEL: 022-795-6696
Email: yutaka.osada.e5@tohoku.ac.jp
公益財団法人かずさDNA研究所
遺伝子構造解析グループ
研究員 山川 央
TEL: 0438-52-3919
Email: yamakawa@kazusa.or.jp
(報道に関すること)
東北大学・海洋研究開発機構
変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
研究推進企画部
特任准教授 飯田 綱規
TEL: 022-795-5620
Email: aimec-comm@grp.tohoku.ac.jp
千葉県立中央博物館 管理部企画調整課
TEL: 043-265-3111
Email: kouhou_cbm@mz.pref.chiba.lg.jp
北海道大学 社会共創部広報課
TEL: 011-706-2610
Email: jp-press@general.hokudai.ac.jp
京都大学 広報室 国際広報班
TEL: 075-753-5729 FAX:075-753-2094
Email: comms@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp
神戸大学 総務部広報課
TEL: 078-803-5106
Email: ppr-kouhoushitsu@office.kobe-u.ac.jp
九州大学 広報課
TEL: 092-802-2130
Email: koho@jimu.kyushu-u.ac.jp
島根大学 企画部企画広報課 広報グループ
TEL: 0852-32-6603
Email: gad-koho@office.shimane-u.ac.jp
龍谷大学 研究部(生物多様性科学研究センター)
TEL: 077-543-7746
Email: ryukoku.biodiv@gmail.com
URL: https://biodiversity.ryukoku.ac.jp/
鹿児島大学 広報センター
TEL: 099-285-7035
Email: sbunsho@kuas.kagoshima-u.ac.jp
公益財団法人かずさDNA研究所
広報・教育支援グループ
TEL: 0438-52-3930
Email: kdri-kouhou@kazusa.or.jp
龍谷大学は、2023年12月15日に、本学のDX(デジタルトランスフォーメーション)への連携・共創を推進する目的で、ソフトバンクと包括連携協定を締結し、2024年度からは、連携事業の一環として「ハッカソン」を実施してきました。
第2回目となる2025年度は、龍谷大学・ソフトバンク・大津市との連携事業として「スマートシティ ハッカソン」を実施しました。
この度、「スマートシティ ハッカソン」の様子がわかる、参加学生へのインタビュー動画を公開いたしました。
参加学生が、熱心に議論している様子やソフトバンク本社で発表する堂々とした姿をご覧いただけます。
ぜひ、アクセスしてみてください。
【本件のポイント】
【本件の概要】
龍谷大学では、福祉・保健・教育などの現場で直面する問題について、悩みや解決策を話し合い、専門的スキルの向上を目指すことを目的に、龍谷大学福祉フォーラム「専門セミナー」を開催しています。
今回のセミナーでは、「宗教2世の支援」をテーマとし、子ども期から親・祖父母等の所属する宗教集団の影響を受けたことにより、人生・生活において困難を抱える当事者の声に耳を傾けます。支援現場では、本人が宗教や家庭の状況を語りづらいこと、家族・所属集団との関係を断ち切りにくいこと、虐待・心理的支配・貧困・孤立などの課題が複合化しやすいことなどが課題となっています。本セミナーでは主な論点として、学校や児童福祉施設、また成人後のさまざまな支援の場における、当事者との向き合い方、当事者の苦しみを背景として留意すべきこと、支援現場間での望ましい連携などを取り扱います。
当日は、当事者の立場で宗教2世支援の活動に関わる黒田官介氏による基調講演に加え、宗教組織からの離脱の苦悩や、その後の社会的孤立に向き合ってきた当事者と、その証言者の語りを通じて、宗教組織から離れた後の支援の必要性とあり方について共有する機会とします。
【龍谷大学福祉フォーラム 第32回専門セミナー】
日 時:2026年3月8日(日)13:00~16:00
会 場:キャンパスプラザ京都
※詳細は申込締切後、申込者にメールにてお知らせします。
テ ー マ:宗教2世を支援する-これまでとこれからに寄り添う-
講 師:<コーディネーター>
ほほこ 氏・阿久 氏(宗教2世)、猪瀬 優理 氏(龍谷大学社会学部 教授)
<登壇者>
基調講演:黒田 官介 氏 証言者:牧村 すず 氏、風中 仁 氏、勝 氏
受 講 料 :2,000円(税込)※龍谷大学生・教職員は無料
申込方法:最下段のチラシをご覧ください。 ※申込締切:3月5日(木)
備 考:本セミナーは特定の宗教団体の是非を論じるものではありません。
問い合わせ先:龍谷大学 龍谷エクステンションセンター(REC)
Tel 077-543-7743 rec@ad.ryukoku.ac.jp https://rec.seta.ryukoku.ac.jp/index.php
2月12日(木)に、龍谷大学先端理工学部と滋賀県立彦根工業高等学校、滋賀県立八幡工業高等学校、滋賀県立瀬田工業高等学校、滋賀県立国際情報高等学校、京都市立京都工学院高等学校との高大連携事業の一環として、オンライン特別講義を実施しました。
上記高等学校と先端理工学部は、生涯にわたって学習する意欲と態度を育成するとともに、基礎となる知識や技術・技能、学び方等を確実に身に付けることに重視した教育の在り方や、高等学校での教育と大学での教育に関する教育接続等を共に考え、実践し、技術者教育の発展に寄与することを目的として、高大連携協定を結んでいます。
今回は、知能情報メディア課程の藤田和弘教授が「データサイエンス・AI、大規模言語モデルによる対話型AI」をテーマに講義を行いました。急速に進展する生成AI分野における最新動向や、教育現場・社会での活用方法、プログラミングを用いた具体例、高校生がAIとどのように関わっていけばよいかといった内容を、幅広い視点から解説しました。
普段とは異なる切り口の学びに、「理解が深まった」「さらに勉強してみたい」といった反応が寄せられ、講義終了後には大きな拍手が送られました。参加した生徒にとって、AI 技術への興味を高める貴重な機会となりました。