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(一財)沖縄県環境科学センター総合環境研究所 所長の小澤宏之氏をはじめ、本学先端理工学部・生物多様性科学研究センターの丸山敦教授、山中裕樹教授が関わる共同研究グループは、2019年以降に地域絶滅した可能性が高いとされていた南西諸島の海棲哺乳類ジュゴンについて、野外で採取された糞のDNA分析や遊泳個体の目撃情報から、現在も琉球列島に生息していることを突き止め、Scientific Reports誌(Springer-Nature社)にて公表しました。

【発表論文】
英文タイトル:Fecal DNA analysis coupled with the sighting records re-expanded a known distribution of dugongs in Ryukyu Islands after half a century
タイトル和訳:糞のDNA分析と目撃情報との組み合わせにより、半世紀ぶりに琉球列島におけるジュゴンの分布を再確認

著者:
小澤宏之(おざわひろゆき):(一財)沖縄県環境科学センター総合環境研究所 所長 ・・・総括・現地調査
吉浜崇浩(よしはまたかひろ):(株)蟹蔵代表取締役 ・・・ドローン撮影・現地調査
宜志富紹吾(ぎしとみしょうご)・渡邊那津季(わたなべなつき):沖縄県環境科学センター ・・・DNA分析
市川光太郎(いちかわこうたろう):京都大学フィールド科学教育研究センター准教授 ・・・現地調査
佐藤圭一(さとうけいいち):(一財)沖縄美ら島財団水族館管理部・事業部統括 ・・・現地調査
渡邊謙太(わたなべけんた):沖縄工業高等専門学校 ・・・現地調査
高野克彦(たかのかつひこ)・落合洋介(おちあいようすけ):日本放送協会(NHK) ・・・現地調査
山中裕樹(やまなかひろき)・丸山敦(まるやまあつし):龍谷大学先端理工学部教授 ・・・DNA分析

掲載誌:国際オンライン専門誌「Scientific Reports」(Springer-Nature社)
DOI:10.1038/s41598-024-58674-8 ※掲載日:2024年4月4日


2019年9月26日、伊良部島の沿岸部でジュゴンと思われる海獣の空撮写真(本論文の第2著者である吉浜崇浩氏がドローン撮影) 出典:https://doi.org/10.1038/s41598-024-58674-8

2019年9月26日、伊良部島の沿岸部でジュゴンと思われる海獣の空撮写真(本論文の第2著者である吉浜崇浩氏がドローン撮影)
出典:https://doi.org/10.1038/s41598-024-58674-8

2019年に沖縄県国頭郡今帰仁村で死亡個体が見つかって以降、南西諸島のジュゴンは地域絶滅した可能性が高いことが論文で報告されていました。このような謎の多いジュゴンの分布状況を知るには、地元の沿岸漁業者などから提供される目撃情報が有効ですが、合わせて海域で採取された糞のDNA分析を行なうことでより正確な情報が得られます。
今回、丸山敦教授、山中裕樹教授らが関わったDNA分析では、ジュゴン固有の配列をもつDNAが、沖縄島東部の久志(くし)で採取された糞、宮古諸島の伊良部島佐和田で採取された糞から、それぞれ検出されました。なお、屋那覇(やなは)島で採取された糞からは、検出されませんでした。

今後はこれらの技術を用いて日本におけるジュゴンの分布などの研究を進め、絶滅が危惧されるジュゴンや餌場となる海草藻場の保全対策に取り組んでいく必要があります。
詳細はプレスリリースを参照してください。

 
今回のジュゴンのDNA検出に関して、丸山敦教授(本学先端理工学部/生物多様性科学研究センター・兼任研究員)のコメントを紹介します。

ジュゴンという愛くるしくて希少な動物が、まだ日本から絶滅していなかったことが、共同研究チームの数年間にわたる協力によって、ようやく明らかになりました。海域全体の保護・保全にとって重要な意味を持つ発見だと思いますし、そのような発見を総合的にサポートできたことを光栄に思っています。


 (一財)沖縄県環境科学センター総合環境研究所所長の小澤宏之、龍谷大学先端理工学部教授の丸山敦らは、2019年以降に地域絶滅した可能性が高いとされていた南西諸島の海棲哺乳類ジュゴンについて、野外で採取された糞のDNA分析や遊泳個体の目撃情報から、現在も琉球列島に生息していることを突き止め、Scientific Reports誌(Springer-Nature社)にて公表しました。
 ジュゴンのDNAが検出された糞は、沖縄島北東部の久志(くし)と宮古諸島の伊良部島佐和田でそれぞれ採取されたものです。論文では2010年以降に得られたジュゴンの目撃情報や喰み跡の分布情報を整理し、糞の分析結果と合わせ、現在も琉球列島の広範囲にジュゴンが生息することを確認しました。なお今回の論文では、宮古諸島での半世紀ぶりの生息確認の内容を含め、琉球諸島のジュゴンの分布や南方(フィリピン等)からの移動に関しての考察を含んでいます。
 謎の多いジュゴンの分布状況を知るには、地元の沿岸漁業者などから提供される目撃情報が有効ですが、合わせて海域で採取された糞の分析を行なうことでより正確な情報が得られます。今後はこれらの技術を用いて日本におけるジュゴンの分布などの研究を進め、絶滅が危惧されるジュゴンや餌場となる海草藻場の保全対策に取り組んでいく必要があります。

■■■ 研究成果の要約 ■■■
※ 論文中に転載可能な地図やドローン写真があります。
▷ 南西諸島に生息する海棲哺乳類ジュゴン(世界的な分布の北限)は、地域絶滅が危惧されているが、個体数が僅かであり現在の生息状況は不明な部分が多かった。
▷ 2019年に今帰仁で死亡個体が見つかって以降、南西諸島のジュゴンは地域絶滅した可能性が高いことが論文で報告されていた。
▷ 沖縄県の海域で見つかる大型草食動物の糞には、アオウミガメのものが多く、外観だけではジュゴンのものだと特定することができない。
▷ 動物の糞には、自身のDNA断片が含まれることがあり、ある種に固有の配列をPCRテストで検出することで、糞の正体を特定することができる。
▶ 今回、ジュゴン固有の配列をもつDNAが、沖縄島東部の久志(くし)で採取された糞、宮古諸島の伊良部島佐和田で採取された糞から、それぞれ検出された。屋那覇(やなは)島で採取された糞からは、検出されなかった。
▷ 固有の配列をもつDNAの検出には、固有配列のみを増幅するPCRテストの後、増幅されたDNAの配列をシーケンス分析で解読することで行われた。
▶ 2010年以降のジュゴンや喰み跡の目撃情報などを整理したところ、ジュゴンが琉球諸島の広い範囲(沖縄島周辺海域、宮古諸島、八重山諸島)に生息している可能性が確認された。
▶ これまでの目撃情報には、母子と思われる個体の遊泳情報も含まれており、琉球諸島で現在もジュゴンが繁殖していることが推察された。

▷ 本研究で確認された沖縄島周辺での分布は、2019年の今帰仁村での死亡個体確認以来の貴重なものである。
▷ 本研究で確認された宮古諸島での分布については、約半世紀ぶりの再確認となる貴重なものである。
▷ ジュゴンの移動能力は高いが、琉球諸島内での移動や、フィリピン集団からの移動の可能性についての詳細は不明である。論文では、フィリピン集団からの琉球諸島への移動の可能性について、これまでの目撃情報などと合わせ考察した。

■■■ 研究の背景 ■■■
ジュゴンは、インド洋、西太平洋、紅海の沿岸部に分布する中型(成獣で250〜900 kg)の海棲哺乳類であり、日本ではかつて沖縄県の八重山地域から沖縄島周辺までの広い範囲に生息していた記録があります。しかし、沖縄県内における生息個体数は、明治時代以降の濫獲などで減少し、現代ではわずかであると推定されています。そのため、環境省や沖縄県のレッドリストでは「絶滅危惧ⅠA類」に指定されるなど、地域絶滅が危惧されています。さらに、2019年3月には沖縄島の今帰仁村で雌成獣が死亡した状態で漂流していたのが見つかり、個体数が極めて少ない沖縄のジュゴン個体群の存続への影響が危惧されました。これ以降の正式な生息情報がなかったため、地域絶滅した可能性が高いと捉える論文もあります。
その一方で、本研究でまとめた通り、環境省、沖縄県、NGOや視域住民などが行ったヒアリング調査ではジュゴンの目撃事例があることが報告されています。また、沖縄島とその周辺、また近年は先島諸島を含め、ドローン調査や潜水調査、漁業者による喰み跡のモニタリング調査、海水からジュゴン由来のDNA断片を検出しようとする環境DNA調査など、分布把握を目的とした多様な調査が2019年以前から現在まで継続的に実施されてきました。今回の公表内容は、これまでに実施されてきた一連の調査を礎としたものとなります。

■■■ 発表論文 ■■■
リンク:https://www.nature.com/articles/s41598-024-58674-8
掲載先:国際オンライン専門誌「Scientific Reports」(Springer-Nature社)
題 目:Fecal DNA analysis coupled with the sighting records re-expanded a known distribution of dugongs in Ryukyu Islands after half a century
著 者:小澤宏之(おざわひろゆき):(一財)沖縄県環境科学センター総合環境研究所 所長 ・・・総括・現地調査
吉浜崇浩(よしはまたかひろ):(株)蟹蔵代表取締役 ・・・ドローン撮影・現地調査
宜志富紹吾(ぎしとみしょうご)・渡邊那津季(わたなべなつき):沖縄県環境科学センター ・・・DNA分析
市川光太郎(いちかわこうたろう):京都大学フィールド科学教育研究センター准教授 ・・・現地調査
佐藤圭一(さとうけいいち):(一財)沖縄美ら島財団水族館管理部・事業部統括 ・・・現地調査
渡邊謙太(わたなべけんた):沖縄工業高等専門学校 ・・・現地調査
高野克彦(たかのかつひこ)・落合洋介(おちあいようすけ):日本放送協会(NHK) ・・・現地調査
山中裕樹(やまなかひろき)・丸山敦(まるやまあつし):龍谷大学先端理工学部教授 ・・・DNA分析

■■■ 研究に関するお問い合わせ先 ■■■
▶沖縄のジュゴンの分布やその調査について
    小澤 宏之 (おざわ ひろゆき)
    一般財団法人沖縄県環境科学センター 総合環境研究所 所長
    〒901-2111 沖縄県浦添市字経塚720番地
    部署直通電話:098-875-5208
    E-mail: ozawa@okikanka.or.jp
    Webサイト:https://www.okikanka.or.jp/

▶DNA分析について
    丸山 敦 (まるやま あつし)
    龍谷大学先端理工学部環境生態工学課程 教授
    〒520-2194 滋賀県大津市瀬田大江町横谷1−5
    研究室直通電話:077-544-7112
    E-mail: maruyama@rins.ryukoku.ac.jp
    Webサイト:https://sites.google.com/view/a-maruyama/


Figure 1. Locations where feces of large herbivores were collected, animals thought to be dugongs were sighted, and dugongs’ feeding trails were confirmed. The worldwide dugong distribution map is based on Marsh & Sobtzick, 20191.


Figure 2. A photograph of a marine animal thought to be a dugong in a coastal area of Irabu Island on September 26 of 2019, taken with UAV by Takahiro Yoshihama, the second author of this paper.


Figure 4. A photograph of a dugong’s feeding trail found in a coastal area of Irabu Island in March 2020.


人間・科学・宗教総合研究センター(人間総研)は、本学の建学の精神に基づき、本学の所有する資源を活かして、本学らしい特色ある研究を推進し、世界に発信することを目的としています。本研究センターにおいては、上記の目的に鑑み、研究プロジェクトを選定し、全学部横断型・複合型・異分野融合型等の学際的研究を推進しています。

2024年3月22日(金)12:30~16:30、 深草キャンパス 和顔館4階会議室3およびzoomにおいて「2023年度 人間・科学・宗教総合研究センター研究交流会」がハイブリッド開催されました。
※本レポートでは、主に活動から得られた知見について、キーワードと共に一部抜粋して紹介します。設立経緯や活動状況の詳細は、各研究センターのHPを参照ください。

犯罪学研究センター(CrimRC)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:津島 昌弘(CrimRCセンター長/社会学部・教授)
◎キーワード:国際的連携・暗数・自己申告調査


「犯罪学」(英:Criminology)とは、犯罪にかかわる事項を科学的に解明し、犯罪対策に資することを目的とする学問です。2016年度に発足したCrimRCは、建学の精神を具現化する事業として、犯罪予防と対人支援を基軸とする龍谷大学ならではの「人にやさしい犯罪学」の創生に向けた研究と国際発信、社会実装活動を展開してきました。
津島教授は報告の冒頭、「日本では先進諸国のように学際的な学問領域として未だ成立していないものの、これまでの活動を通じて国内外でのCrimRCの認知度が高まってきたことは確かである」と述べ、国内外から数多くの研究員の受け入れや交流事業を展開してきたことや、常勤職を得る若手研究者を例年輩出してきたことなど、研究機関としての有機的な連携の実績を紹介しました。

つづいて、2023年度の活動実績や成果を概観したのち、津島教授が代表を務めるISRDユニットの研究について、『犯罪少年と警察との接触~ISRD3日本調査の分析結果』と題して報告しました。報道等でも取り沙汰される警察統計は、必ずしも少年非行の現実を正確に反映しているわけではなく、実際に起きている犯罪の一部、通報により警察が把握している認知件数に過ぎず、暗数が存在することに言及。そこで、津島教授ら研究メンバーは、少年非行の「暗数」問題を解決し、非行の実態を把握するとともに、非行の原因をより深く理解するために、中学生を対象にした自己申告調査(統一化された調査票調査)の結果を比較する国際プロジェクトISRDに、日本代表として参加してきたことを紹介しました。
調査の背景として、「どのような少年が、どういった行為をすることによって、警察と接触することになるのか?」という問いに対して、先行研究などから幾つかの要因が考えられてきました。近畿圏に居住する中学生1,226人に対して行ったISRD3の調査では、性別や違法行為の種類別、リスク志向の有無などから分析を行い、結果として「犯罪少年と警察との接触は、犯行の種類だけではなく、性別など少年の属性によって異なってくる」といった点が明らかになったことを報告。さらに、実際に大きく報道された少年による万引事件を引き合いに出し、「犯罪少年の属性は調査結果とも重なる部分があるが、警察の事件の扱い方については考える余地があるのではないか」と主張しました。さいごに、CrimRCの研究活動は2023年度で終了し、2024年度以降は個々の研究メンバーでの研究を継続していく旨を述べ、報告を終えました。

【→関連ページ】ISRD-JAPANプロジェクト


津島 昌弘(CrimRCセンター長/社会学部・教授)

津島 昌弘(CrimRCセンター長/社会学部・教授)


津島教授 報告資料より「ISRD3の調査手法」

津島教授 報告資料より「ISRD3の調査手法」

生物多様性科学研究センター
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:山中裕樹(生物多様性科学研究センター長/先端理工学部・准教授)
◎キーワード:生物多様性保全・環境DNA分析・産官学連携


山中准教授は報告の冒頭、“生物多様性の減少”が気候変動と並ぶ深刻な危機であること、世界規模でつながる経済活動が生物多様性へ影響を及ぼしていることから、「個人も企業も自治体も、日々の暮らしの向こう側 に思いをはせる必要がある」と強調しました。
2017年度開設の生物多様性科学研究センターは、新規の生態系モニタリング手法である「環境DNA分析」を主軸となる技術に据え、生物多様性保全に向けた各種活動や政策・施策判断に高解像度の生物多様性データ(エビデンス)を提供することで、SDGsの達成に向けた社会貢献を目指してきました。一例として、2021年度より滋賀県との共催でスタートした年に1度の市民参加型の全県一斉調査「びわ湖100地点環境DNA調査」には、一般市民や市民団体や地元企業の有志が調査に参加したほか、この3年間でのべ4社から協賛を得るなど、継続的な調査実施・データの蓄積に加え、資金的にも持続可能な体制確立に向けて活動を展開してきたことを紹介しました。
さらに、2024年度以降のプロジェクトでは、『実質的に機能する“生物多様性保全活動のシステム”の構築』として、資金・モチベーション・労力を循環させる課題解決型のプラットフォームの構築をめざすことを報告。具体的には、地元に根付いた保全活動のサポートや中学高校への出前実験教室等による環境教育、TNFD*対応のサポートにも取り組む予定であることが紹介されました。
また、技術面については、生物の年齢や活動レベル等の“状態”までを知ることができる「環境RNA分析」への期待が高まっていることや、採水〜濾過〜DNA抽出〜連続PCR〜 データ送信までを自動で実施する「全自動でのビッグデータ収集」の可能性について言及し、報告を終えました。

*TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosureの略で、自然環境と企業活動との関わりやリスクについて可視化しようとする試み。
【→関連News】2023.11.28 2023年度 びわ湖の日滋賀県提携 公開講座に山中裕樹センター長が登壇


山中裕樹(生物多様性科学研究センター長/先端理工学部・准教授)

山中裕樹(生物多様性科学研究センター長/先端理工学部・准教授)


山中准教授 報告資料より「びわ湖100地点環境DNA調査」

山中准教授 報告資料より「びわ湖100地点環境DNA調査」

発酵醸造微生物リソース研究センター
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:田邊公一(発酵醸造微生物リソース研究センター長/農学部・教授)
◎キーワード:微生物探索・発酵食品・産学連携


発酵醸造微生物リソース研究センターは、「微生物研究を通して、滋賀県の発酵醸造産業を支援すること」を目的に2021年度に開設。発酵醸造に有用な微生物の収集とデータベースの構築、およびそれらを活用した応用研究の展開や、滋賀県の発酵産業での利活用を目指して研究活動を行っています。
微生物の探索源として鮒ずしや菜の花漬など滋賀県の特産品からも環境サンプルを採取し、微生物の分離培養を行ってきたことを報告。そして、研究メンバーの主な成果として、①滋賀県の土壌から新種の油脂酵母2種を発見したこと、②菜の花漬けを使用した発泡酒『菜の花エール』の開発、③圃場における土壌微小生物DNA解析、④植物ー昆虫の相互作用から土壌微生物とのかかわりを解明、⑤湖南市との養蜂プロジェクトでの「Konan Honey」の開発と地域連携などを紹介。また田邊教授自身の研究では、鮒寿司を自宅で手軽に漬けられる「クラフト鮒寿し作製キット」を開発、実用新案を登録、滋賀県の支援事業を通じて各地で販売プロモーションを行ったことを報告しました。
田邊教授は今後の共同研究の可能性に関して、先の山中准教授による環境DNA分析の報告に照らし、「発酵食品の製造が環境に及ぼすインパクトの把握・評価についても関心がある。これに関連し、鮒寿司の乳酸菌について滋賀県内でサンプルを収集して乳酸菌の特性をみたところ、近江八幡の鮒寿司と他の地域の鮒寿司とでは随分違うことがわかった。近江八幡の環境中の乳酸菌に違いがあるのだとしたら、琵琶湖畔の水の環境DNA分析からも把握することができる可能性がある」と述べ、報告を締めました。

【→関連News】2023.10.02 滋賀県の土壌から新種の油脂酵母2種を発見ー持続可能な油脂生産技術への応用に期待ー
【→関連News】2023.09.06 フナズシ作製キット事業が令和5年度「健康しが」活動創出支援に採択


田邊公一(発酵醸造微生物リソース研究センター長/農学部・教授)

田邊公一(発酵醸造微生物リソース研究センター長/農学部・教授)


田邊教授の報告資料より「微生物探索源の例」

田邊教授の報告資料より「微生物探索源の例」

社会的孤立回復支援研究センター(SIRC)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:黒川 雅代子(SIRCセンター長/短期大学部・教授)
◎キーワード:新型コロナ・社会的孤立・支援・地域貢献


2022年度に発足したSIRCは、with/afterコロナ時代においても顕著な 「社会的孤立」を研究対象とし、個々の孤独から社会的孤立に至るメカニズムの解明や回復のための理論仮説の検証、支援ネットワークの構築などに取り組んできました。
黒川教授の報告では、冒頭、孤立に対する社会的動きについて、孤立・孤独対策推進法(令和5年6月7日交付、内閣官房)の趣旨を参照し、「国が示す“孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会”、“相互に支え合い、人と人との「つながり」が生まれる社会”を目指すという点や、本学が提唱する仏教SDGsとのつながりもあり、まさに時代にそったセンターであったのではないか」と述べました。
SIRCの研究体制は、臨床心理、政策、社会福祉、保育、刑法、刑事政策を専門とする研究メンバーによる8ユニットで構成。「社会的孤立」という現代の社会課題について、さまざまな角度から研究活動を行ってきたことを、2023年度の主な研究活動から報告しました。
臨床心理の研究メンバーが中心の「システムズアプローチ」ユニットでは、不登校やひきこもり、虐待、職場不適応、うつ状態など社会的孤立状態にある本人への直接的支援のみならず、周囲の関係者への支援として間接的アセスメントの方法について検討を重ねてきました。また「関係支援ユニット」と連携し、2023年10月には外部講師を招聘して「不登校・ひきこもりなど社会的孤立への家族支援」講演会・シンポジウムを開催し、地域社会へ貢献してきました。
黒川教授の「グリーフサポート」ユニットでは、新型コロナウイルス感染症で亡くなった遺族支援として定期的に遺族会を実施したほか、法要やシンポジウムを開催。さらに日本の若い世代の「死因トップが自殺」という現状を憂慮し、「京都府自死対策カレッジ会議」に本学の学生団体「龍谷オープンコミュニティ(ROC)」と共に参加したほか、学生の孤立について意識調査も実施しました。
短期大学部こども教育学科の教員5名による「子育て家庭」ユニットでは、子どもと保護者、子育て家庭の社会的孤立に焦点をあて、実態把握ならびにその緩和・解消の具体的な可能性を探索することを目的として、研究会を実施してきました。2024年3月には、研究成果を学生や新任保育者向けのパンフレットとして発行し、WEBでデータを公開しました。
この他にもユニットそれぞれの研究活動や成果を紹介し、多領域の研究をプラットフォーム的に統合してきたSIRCの2年間の活動を総括しました。

【→関連News】2023.12.07 講演会&シンポジウム「不登校・ひきこもりなど社会的孤立への家族支援」開催レポート
【→関連News】2024.03.13 子どもを見守る保育者にむけて、孤立した子育て家庭の「孤育て」に向き合うヒント集を作成


黒川 雅代子(SIRCセンター長/短期大学部・教授)

黒川 雅代子(SIRCセンター長/短期大学部・教授)


黒川教授の報告資料よりユニット構成

黒川教授の報告資料よりユニット構成

刑事司法・誤判救済研究センター(RCWC)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:斎藤司(RCWCセンター長/法学部・教授)
◎キーワード:再審、えん罪、刑事訴訟法、立法


RCWCは、よりよい刑事司法と誤判救済のありかたを探求することを最大の目的として2023年4月に開設。実効的な誤判救済システムの構築とそのための実務の整備、その両者の協働のための基盤の構築を目指して、研究者だけでなく、弁護士を中心とする法律実務家に積極的に関与いただき、研究を推進しています。
斎藤教授の報告では、まず研究の背景として、刑事司法と誤判救済が動きつつある日本の現状を説明。近年の変化の中心は、2009年に導入され、刑事裁判の様相を一変させた「裁判員裁判」と、裁判員裁判で扱う事件および検察官独自捜査事件を対象に2019年6月に義務化された「取り調べの可視化」です。しかしながら、誤判によるえん罪被害者を救済する唯一の制度「再審(裁判のやり直し)」について、刑事訴訟法にはほとんどその規定がないことから、制度的・構造的問題点を抱えていることが指摘されてきました。そして、再審をめぐるこれまでの研究動向について、「再審請求審(やり直しの裁判を始めるかどうかを決める手続)」と「再審公判(再審請求手続の後に控えているやり直しの裁判)」という二段階構成を説明した上で、キーとなる「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に関する主要な見解について分析しました。
そしてRCWCの研究内容について、①解釈論としての再審研究から「立法論としての再審研究」へと舵を切ったこと、②諸外国の立法例や日本の現状を踏まえた指針を定立することを目的として研究に取り組んできたことを報告。具体的には、再審実務を担当する弁護士と協働すべくセンターの研究員に多くの弁護士を迎えて共同の研究会を開催したり、イノセンス・プロジェクト・ジャパンや日本弁護士連合会と連携した催しを行ってきたりしたこと、また、再審制度の国際的な特徴を把握・検討すべく国際的な研究会・学会にも積極的に参加し、発信を行ってきたことを紹介しました。
斎藤教授は「袴田事件の再審公判は2024年中に判決が出る見込みであり、今年3月には再審法改正を早期に実現する超党派の議員連盟が発足するなど、えん罪や再審をめぐる社会の状況は確実に動いている」と述べ、RCWCでは再審法改正のモデル構築や改正すべきポイントの明示などの成果を挙げてきたことに言及し、1年間の研究活動を総括しました。

【→関連News】2023.07.19 客員研究員の安部祥太と、嘱託研究員の鴨志田祐美・李怡修が、誤判・冤罪や再審に関する書籍を執筆
【→関連News】2023.09.15 ワークショップ&リリース「日本の死刑と再審」実施レポート


斎藤司(RCWCセンター長/法学部・教授)によるビデオ報告

斎藤司(RCWCセンター長/法学部・教授)によるビデオ報告


斎藤教授の報告資料より「研究の背景」

斎藤教授の報告資料より「研究の背景」

閉会/挨拶 宮武智弘 研究部長
全研究センターの報告後、閉会挨拶に立った宮武智弘 研究部長(本学先端理工学部・教授)は、「本学には500名以上の研究者が在籍しており、領域が異なると知らないことも多いが、本日の交流会のようにユニークな研究活動を知ることで触発される部分もある。研究活動について本学構成員のなかで相互理解が深まり、研究の面白さや大切さを共有できる雰囲気が学内で広まるよう今後とも発信にも努めていきたい」と述べ、研究交流会は盛会のうちに終了しました。


研究交流会 実施風景

研究交流会 実施風景


人間・科学・宗教総合研究センター(人間総研)は、本学の建学の精神に基づき、本学の所有する資源を活かして、本学らしい特色ある研究を推進し、世界に発信することを目的としています。本研究センターにおいては、上記の目的に鑑み、研究プロジェクトを選定し、全学部横断型・複合型・異分野融合型等の学際的研究を推進しています。

2024年3月22日(金)12:30~16:30、 深草キャンパス 和顔館4階会議室3およびzoomにおいて「2023年度 人間・科学・宗教総合研究センター研究交流会」がハイブリッド開催されました。
開催挨拶に立った宮武智弘 研究部長(本学先端理工学部・教授)は、「今回の研究交流会は人間総研が所管する各研究センターの活動にかかる情報共有を通じて、研究プロジェクト間の相互連携による新たな展開の可能性を探る機会として開催する」と趣旨を述べ、会がスタートしました。


宮武智弘 研究部長(本学先端理工学部・教授)

宮武智弘 研究部長(本学先端理工学部・教授)


研究交流会の様子

研究交流会の様子

当日は10センターの代表者が、活動状況や研究成果、そして本学の学際的研究の進展に向けて還元しうる知見について報告しました。
※本レポートでは、主に活動から得られた知見について、キーワードと共に一部抜粋して紹介します。設立経緯や活動状況の詳細は、各研究センターのHPを参照ください。


古典籍・文化財デジタルアーカイブ研究センター(DARC)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者::三谷真澄(DARCセンター長/文学部・教授)/中田裕子(DARC兼任研究員/農学部・准教授)
◎キーワード:アーカイブ・学際研究・国際連携・モンゴル・文化遺産


DARCは、本学の建学の精神に基づいて収集した古典籍・文化財の資産を有効活用し、超臨場感技術等の最先端の手法を用いて、学術資料の多面的公開のためのデジタルアーカイブの形成を目的としています。研究ユニットは、自然科学系の「デジタルアーカイブと多面的展観手法研究」と、人文科学系の「コンテンツとデジタルヒューマニティーズ研究」の2つから成り、相互交流しながら研究活動を遂行して組織しています。
はじめに報告に立った三谷教授は、DARCの概要について、「学際研究・国際連携・多面的公開」のキーワードを用いて紹介。2023年度の主な取り組みを一覧で示し、特に龍谷ミュージアムにおける特別展や特集展示にはのべ5ヶ月間ほど参画したこと、活動成果については人間総研の2023年度研究紀要(2024年3月刊行)に寄稿したことを報告しました。また直近の活動として、今年3月に大宮キャンパスにおけるパネル発表や国際シンポジウムの開催を挙げ、パネル発表については他のキャンパスでの展開を計画中である旨、紹介しました。
次いで報告に立った中田准教授は、DARCの国際連携プロジェクトの一つである、モンゴル国・カラコルム博物館における「勅賜興元閣碑」の復元プロジェクトに関して報告しました。「勅賜興元閣碑」はモンゴル帝国時代の草原の都・カラコルムに建てられた仏教寺院「興元閣」の再建を記念して刻されたもので、台座である「亀趺」がカラコルム遺跡の前に残るだけでしたが、2019年以来、復元が企図され、DARCの支援のもと2022年にレプリカが完成しました。このようにモンゴル国に現存する他言語碑文の調査・研究を目的とした日本(龍谷大学他)とモンゴルの共同研究「ビチェース・プロジェクト」は、1994年の発足から今年で30年の節目の年を迎えます。中田准教授は、本学の研究メンバーが関わった近年のモンゴルにおける文化財の発見例などを紹介し、「今後もDARC で培ってきた知見・技術を活用し、最新の展⽰⽅法を現地機関とともに開発・研究していく。また、全世界にその技術を提供し、貴重な人類の遺産を後世大切に守り伝えていくことを期待する」と述べ、報告を締めました。

【→関連News】2024.03.01 大宮キャンパス・東黌1階多目的エリアにおいてパネル発表を実施
【→関連News】2024.03.22 特別講演会「古典籍・文化財のデジタルアーカイブが魅せる未来像」を開催


三谷真澄(DARCセンター長/文学部・教授)

三谷真澄(DARCセンター長/文学部・教授)


左:中田裕子(DARC兼任研究員/農学部・准教授)・右:三谷真澄教授

左:中田裕子(DARC兼任研究員/農学部・准教授)・右:三谷真澄教授

地域公共人材・政策開発リサーチセンター(LORC)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:阿部大輔(LORCセンター長/政策学部・教授)
◎キーワード:理論と実践・地域再生政策・まちづくり


LORCは、2003年の設立から18年にわたり、世界的視野から地域課題をとらえ、市民・企業・自治体など多様な主体と連携し、研究と現場の互恵的な還流による持続可能な公共政策の理論・実践のモデルを構築・提示してきました。
報告の冒頭、LORC第6期となる現在の研究事業の目的として「ポスト・コロナ期の地域社会における包摂的・レジリエントな再生戦略の再構築」の概要を紹介し、具体的な研究活動においては①包摂的発展研究ユニット、②グリーンリカバリー研究ユニット、③ウェルビーイング研究ユニットの3ユニットの諸活動において、理論と実践との連携をはかってきたことを紹介しました。
そして、阿部教授が関わる包摂的発展研究ユニットの活動の一例として、スコットランド南西部のグラスコー市における空地の暫定利用による社会的包摂の可能性に関する研究について報告。阿部教授は「考察を通して、未利用地の暫定利用が地区に及ぼす影響は、地区の物理的環境改善に寄与する一面をもつだけでなく、地区のまちづくり活動などの社会的環境の回復・強化にも寄与する一面をもつことがわかった」と述べました。
また、2023年度の活動の一例として、グリーンリカバリー研究ユニットの研究メンバーが知見提供で関わる地域新電力会社を通した地域貢献の実績から「2023年度ソーラーウィーク大賞・優秀賞」を受賞したこと、ウェルビーイング研究ユニットでは本学深草キャンパスに隣接する伏見区西浦町をフィールドに「異文化共生まちづくり」をテーマとしたアクション・リサーチを地域社会と協働して研究してきたことなどを紹介。そして、研究の成果について「多様性の価値を政策的に維持することが“包摂的”、そして“レジリエント”な地域再生戦略に繋がる、というのが本研究事業の一つである」と総括しました。

【→関連News】2023.10.31 龍谷大学が知見提供で関わる地域新電力会社が「2023年度ソーラーウィーク大賞・優秀賞」を受賞


阿部大輔(LORCセンター長/政策学部・教授)によるオンライン報告

阿部大輔(LORCセンター長/政策学部・教授)によるオンライン報告


地域新電力会社「たんたんエナジー株式会社」と福知山市が行う市民出資型オンサイトPPA事業の取り組み

地域新電力会社「たんたんエナジー株式会社」と福知山市が行う市民出資型オンサイトPPA事業の取り組み

里山学研究センター(RCSS)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:村澤真保呂(RCSS兼任研究員/社会学部・教授)
◎キーワード:国際的学術課題・自然共生型社会・生物多様性


RCSSは、瀬田キャンパスに隣接する「龍谷の森」とその周辺をフィールドとして、里山保全活動を介した環境教育の実践と地域自然共生モデルの構築を目指して、2004年に「里山オープン・リサーチ・センター」として開設されて以来、その研究対象を地域の里山から琵琶湖を中心とする地域市民社会へと広げ、現在ではグローバルな自然共生型社会の実現に向けた文理融合型の研究機関として活動してきました。
センター長の代理でビデオ報告を行った村澤教授は、「近年、環境を巡る国際政策における大きなパラダイムシフトが起こっている。生物多様性をめぐる問題が文化や社会の問題と一体であることが明らかになり、文化と自然を一体的に捉える学術的方法論の構築が喫緊の課題となった。加えて、里山という言葉の示す領域が大きく変わってきた。
とりわけ、2018年のIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)の方針転換によって、自然と文化の多様性が評価されるようになったことから、学術的な捉え直しが必要になっている。すなわち、2010年頃より“二次的自然(人間の手の入った自然)”として里山の保全が国際的に注目されるようになってきたが、2020年頃より地球環境のほとんどが“二次的自然”であることが明らかになり、国際社会では“二次的自然”をベースとした政策モデルへと移行し始めていることから、里山研究においても地球環境全体を視野に、文化や宗教、世界観などの自然をとりまく抽象的な部分をも対象にする必要が出てきた」と研究を取りまく現状を説明しました。
そして、2023年度の研究プロジェクトでは新たな状況に応じた研究体制へのアップデートを試み、生物多様性保全をめぐる人々の生活に根ざす文化的価値観と政策・学術の接合について研究を行ってきたことを報告しました。


村澤真保呂(社会学部・教授)によるビデオ報告

村澤真保呂(社会学部・教授)によるビデオ報告


村澤教授 報告資料より「里山研究をめぐる状況の変化」

村澤教授 報告資料より「里山研究をめぐる状況の変化」

グローバルアフェアーズ研究センター(GARC)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:陳慶昌(GARCセンター長/国際学部・教授)/山田直史(GARC嘱託研究員/立命館大学国際関係大学院博士後期課程)
◎キーワード:国際関係・二項対立


紛争問題の解決やその先を研究するGARCは、国際的な研究協力を通じて既存の学問の範囲を超えた学際的な洞察を加え、グローバルな問題に取り組むことを目的に掲げています。コロナ禍の2021年度よりほぼ毎月オンラインのセミナーを開催し、近年は国内外のシンポジウムや研究会に積極的に参加して報告するなど、国内外の研究者との交流・関係強化を継続してきました。また、国際ジャーナルへの論文投稿や独自のワーキングペーパーシリーズの刊行、海外の著名な研究者に引用される出版物の発行など、研究成果を積極的に国際発信してきました。
陳教授の研究報告は『二項対立の暴力をローカルとグローバルレベルで再考する』と題し、国際ジャーナルThird World Quarterlyに2024年に掲載された論文“Political healing in East Asian international relations: what, why and how”(※)の成果について紹介しました。陳教授は「この研究は、東アジアの医学的知見に基づき、東アジアで現在進行中のさまざま政治的紛争を地域社会・共同体の病気として治療しようとするものだ。従来、紛争やそれに伴う暴力は、ウェストファリア的関係性にもとづく二項対立の枠組みを通じて理解されてきたが、東アジアの政治的議論には、異なる考え方や行動を促すための代替的な転換が必要だ。私たちの考えるアプローチでは、東洋医学の思想を政治学に転換した“ポリティカル・ヒーリング”によって、紛争を長期化させている従来の国家中心の国際関係研究のパラダイムを転換することを目指してきた」と説明。そして、研究を通じて明らかになったこととして「社会政治的な身体は、明確に区切られた境界線を持っているわけではない。重要なのは、身体の各部分がどのように調和して機能するかということだ。“ポリティカル・ヒーリング”は、凝り固まった地政学的対立を再考する機会をもたらしうる」と述べ、報告を終えました。
(※)https://doi.org/10.1080/01436597.2024.2322087

次いで報告に立った山田氏は、『日韓「慰安婦問題」におけるロゴスと縁起のあいだ』と題し、GARCの国際関係研究に関連した自身の研究を紹介しました。まず、2015年の日韓合意は当事者である女性たち不在の国家間合意であった点を指摘し、国際関係における関係論の視座と存在論の必要性について説明しました。そして、仏教における現象の理解の仕方である「縁起」をキーワードに、 他者との関係の時間的側面を含む「縁起的関係性」の概念を紹介し、存在論・時間論から日韓「慰安婦問題」を問い直してきたことを報告しました。


陳慶昌(GARCセンター長/国際学部・教授)

陳慶昌(GARCセンター長/国際学部・教授)


山田直史(GARC嘱託研究員/立命館大学国際関係大学院博士後期課程)

山田直史(GARC嘱託研究員/立命館大学国際関係大学院博士後期課程)

革新的材料・プロセス研究センター
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:富﨑欣也(革新的材料・プロセス研究センター長/先端理工学部・教授)
◎キーワード:循環型社会・リサイクル・研究シーズ公開


2006年度開設の革新的材料・プロセス研究センターは、「つかう」視点にたった「ものづくり」に取り組み、私たちのこれからの未来に、省エネルギー・省資源という観点から材料を創出する革新的な設計と製造プロセスを構築する研究を行うと同時に、持続可能な循環型社会に「もどす」視点にたったリユースプロセスの研究にも力を入れています。
富﨑教授は、これまでの材料科学研究の実績を概観した後、現在は「ひと、もの、環境の調和」に立脚した研究を展開していることを紹介。2023年度の活動の一例として、龍谷エクステンションセンターと共催した「REC BIZ-NET研究会」を挙げ、産業界への研究シーズ公開および技術移転を指向してきたことを報告しました。また、研究の具体例として、【革新的リサイクル】金を選択に回収するペプチドを用いて化学的性質の類似している金と白金のうち、希薄な均一水溶液から金だけを安価に回収する方法、【革新的環境浄化】モリンガの種子から抽出した物質による天然凝集剤を用いた湖水・河川水の処理の可能性などについて紹介しました。


富﨑欣也(革新的材料・プロセス研究センター長/先端理工学部・教授)

富﨑欣也(革新的材料・プロセス研究センター長/先端理工学部・教授)


富﨑教授 報告資料より「植物の種由来の凝集剤」

富﨑教授 報告資料より「植物の種由来の凝集剤」


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