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龍谷大学犯罪学研究センターは、2020年4月下旬より、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の拡大によって浮き彫りとなった個人と国家の関係や、ウィズ・コロナ時代における社会の在り方について、犯罪学の視点から考えるフォーラムをWEB上で立ち上げ、情報発信を行ってきました。

【特集ページ】新型コロナ現象について語る犯罪学者のフォーラム
https://sites.google.com/view/crimrc-covid19/

◎10月のオンライン公開研究会では、「新型コロナと社会現象」について、犯罪学者の立場から、話題提供や意見交換を行う研究会をZoom開催します。

※本イベントは「事前申し込み制」でどなたでも参加いただけます。ぜひご自宅や各研究室からふるってご参加ください。
【>>受付終了!お申込みフォーム】 (お申し込み期限:10/20火曜 15:00まで)


第23回CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会(月例)
<新型コロナ現象について語る犯罪学者のオンライン・フォーラム
 〜犯罪学者はCOVID-19に何を思うか〜>

日程:10月20日(火)18:00 - 19:30
開催場所:Zoom

テーマ:「新型コロナと社会現象」
話題提供者:
・竹中 祐二 准教授(北陸学院大学 人間総合学部社会学科・犯罪学研究センター 嘱託研究員)
・石塚 伸一 教授(龍谷大学 法学部・犯罪学研究センター長)

司会:
上田光明 氏(龍谷大学 ATA-net研究センター 博士研究員・犯罪学研究センター 嘱託研究員)

備考:
※Zoom情報は、お申し込みフォームに入力いただいたメールアドレスに「開催当日16:00頃(早期お申し込みの方は前日17:00頃)」にメールで連絡します。Zoom情報を、他に拡散しないようお願いいたします。
また、会の進行上、ホストにより発表者以外をミュートとさせていただく場合や、進行の妨げとなる方に退出いただく場合があります。ご了承ください。

<関連情報>
5/13には当センター長の石塚教授が下記コラムをフォーラムに寄稿しています。ぜひご一読ください。
>>「新型コロナで自殺は増えるのか?〜アノミー型自殺と逃避型自殺〜」


【>>CrimRC活動関連ニュース】
2019.04.06 犯罪学研究センター 中間報告会レポート【前編】
2019.04.06 犯罪学研究センター 中間報告会レポート【後編】
2019.05.30 犯罪学研究センター 中間報告会【記録Movieを公開】
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【CrimRC公開研究会 これまでの開催レポート】
>>第1回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第2回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第3回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第4回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第5回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第6回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第7回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第8回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第9回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第10回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第11回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第12回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第13回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第14回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第15回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第16回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第17回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第18回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第19回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第20回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート
>>第21回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート・前編
>>第21回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート・後編
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龍谷大学 犯罪学研究センター(Criminology Research Center)では、犯罪をめぐる多様な〈知〉の融合と体系化を目的とし、現在13のユニットでの研究活動が行われています。
その一つである「政策評価」ユニット*1では、浜井 浩一 ユニット長(本学法学部教授)のもと、犯罪学(犯罪防止)における科学的エビデンスの構築と共有を目的として、2000年に国際研究プロジェクトとして始まったキャンベル共同計画(Campbell Collaboration: C2)*2に協力しつつ、政策評価研究が行われています。


https://campbellcollaboration.org

https://campbellcollaboration.org


今回、キャンベル計画 日本語版WEBサイトにて「抄録(Plain language summary)」を中心として、計15ファイル(教育8・刑事司法1・社会福祉3・国際開発2・障害1)をライブラリへ追加、更新しました。

■キャンベル計画 日本語版 TOP
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/index.html

■キャンベル共同計画ライブラリ TOP
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/library/index.html


今回、新たに加わった「抄録」は、キャンベル共同計画の数々の成果報告を広く一般に周知するために簡潔にまとめられた英語版のパンフレット(Plain language summary)を日本語に訳したものです。この「抄録」を通して、各調査研究が何を目的とし、どのような結果が得られたのかを端的に理解することができます。
さらに、この「抄録」を端緒として「レビュー」や「プロトコル」などの調査報告書を読み進めていくことで、エビデンスについて考える機会や成果を活用する機会が増える一助となることを期待しています。

<今回の更新内容>

▼「刑事司法」分野
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/library/crimejustice.html
【>>PDF Link】親密なパートナーからの暴力を受けた子どもたちの幸福を促進するための心理社会的介入の有効性に関する限られたエビデンス

▼「社会福祉」分野
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/library/social.html
【>>PDF Link】家族グループの意思決定が従来の児童保護手続きよりも良いか悪いかを示すエビデンスはない
【>>PDF Link】ケアファーミングの効果についてはより多くのエビデンスが必要である
【>>PDF Link】専門職継続開発訓練(CPD)による効果に関するエビデンスはほとんどない


▼「国際開発」分野
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/library/international.html
【>>PDF Link】妊娠中に大量の除虫剤を投与すると貧血は減るが、他の母体や妊娠の結果には影響がない
【>>PDF Link】市民参加は低・中所得国の公共サービスへのアクセスを向上させるが、開発成果に関するエビデンスは限られている


▼「教育」分野
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/library/education.html
【>>PDF Link】対象を絞った学校ベースの介入は、中学1年生から高校3年生までのリスクのある生徒の読解力と数学の達成度を向上させる
【>>PDF Link】言語理解指導は、一般的言語理解力にはわずかな効果があるが、読解力にはほとんど効果がない
【>>PDF Link】シングルトラックの通年教育は、K-12の生徒の平均的な数学と読解力を適度に向上させる
【>>PDF Link】K-12年生の生徒のための適応指導と個別化が学力向上につながる
【>>PDF Link】少人数学級が学力に与える影響は小さい
【>>PDF Link】回復支援高校や大学の回復コミュニティが効果的かどうかを知るためのエビデンスは不十分である
【>>PDF Link】良いデザインの研究が少なすぎるため、K-12の児童・生徒の数学、英語、国語(ELA)、科学の成績に対するティーチ・フォー・アメリカの効果は不明である
【>>PDF Link】軍事作戦への配備は、兵士のメンタルヘルスの機能に負の影響を及ぼす


▼「障害」分野
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/library/disability.html
【>>PDF Link】個別の助成金給付はヘルスケア・社会的ケアに対して正の効果がある


【補注】:

*1犯罪学研究センター「政策評価」ユニット:
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/org/science.html

*2 「キャンベル共同計画(Campbell Collabolation: C2)/英語サイト
社会、行動、教育の分野における介入の効果に関して、人々が正しい情報に基づいた判断を行うための援助することを目的する国際的な非営利団体です。
https://campbellcollaboration.org/


 2020年9月17日(木)に、「2020(令和2)年度9月 学位記、卒業証書・学位記、修了証書授与式」が挙行され、経済学部26名、経済学研究科修士課程1名が卒業、修了されました。

 式典後の集まりにおいては、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から希望者のみの出席、ソーシャルディスタンスを保った座席配置とし、経済学部長、経済学研究科長、経済学研究科教務主任から卒業生、修了生に対し、それぞれお祝いの言葉が贈られました。

 卒業生、修了生の皆さん、ご卒業、ご修了おめでとうございます。経済学部、経済学研究科教職員一同、心よりお祝い申しあげます。また、皆さんのこれからのご活躍を心より願っております。




犯罪学は、あらゆる社会現象を研究の対象としています。今回の「新型コロナ現象」は、個人と国家の関係やわたしたちの社会の在り方自体に、大きな問いを投げかけています。そこで、「新型コロナ現象について語る犯罪学者のフォーラム」を通じて多くの方と「いのちの大切さ」について共に考えたいと思います。

今回は、浜井 浩一教授(本学法学部・犯罪学研究センター 国際部門長)のコラムを紹介します。本稿は、『季刊刑事弁護』104号(現代人文社より2020年10月刊行予定)にに寄稿した『犯罪学者が見た新型コロナパンデミック(下)』の番外編として執筆されたものです。全編は本誌にてご覧ください。
※また本コラムの前編として2020年6月に公開したコラム『新型コロナパンデミックを犯罪学する1』『新型コロナパンデミックを犯罪学する2』とあわせてご覧ください。

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犯罪学と感染症1
パンデミックと犯罪動向


 犯罪も感染症と同様に人から人へと広がっていくという特徴を持っている。そして、一般的な犯罪には加害者と被害者とが存在する。新型コロナウイルス(以下、コロナという)による感染症もウイルスを他者に運んでうつす者と、うつされる者とが存在する。そして、最近の日本社会では、コロナをうつす者を加害者として扱う風潮が蔓延しつつある。このコロナに感染し、他者にうつすリスクを持った者を加害者として扱う風潮については最後に論じたいと思う。
 前回のコラムでも指摘したが、犯罪はある種の社会的疫病であり、その感染メカニズムや因果関係を追求し、犯罪の蔓延を防止するのが犯罪学である。当然、今回のコロナによるパンデミックは、犯罪学にも様々な影響を与えている。社会政策におけるエビデンスを追求している国際プロジェクトである「キャンベル共同計画」の刑事司法グループにおいても、今回のパンデミックに対する都市封鎖(ロックダウン)などの人々に対する行動規制が犯罪発生にどのような変化を与えるのか、罰則による外出等の行動規制と日本のような自粛要請による行動規制の効果の差異などにも強い関心が寄せられている。*1 犯罪学理論の立場からは以下のようなことが考えられる。
 例えば、環境犯罪学は、犯罪(加害)者はどこにでも素材するという前提の下で、加害者や被害者の行動パターンや犯罪が起こりやすい環境を変えることで犯罪の発生を防ごうと考える。コロナ対策も同様に、コロナに感染した人はどこにでも存在するという前提で、他人との間に社会的距離を保つ(social distancing)ことなどを基本とした「新しい生活様式」が提唱されている。(犯罪)被害に遭わないために夜の繁華街などリスクの高い場所にいかないようにすることは、コロナ対策でも同じである。コロナに感染しないためには、人と直接コンタクトをとらないことが最善の方法であり、そうすれば少なくとも身体的暴力やすりなど街頭犯罪が現象するはずである。
 人々の日常行動と犯罪被害との関係に注目している日常活動(routine activity)理論*2を当てはめると、都市封鎖の時期には、人々が外出を控えるため街頭犯罪が減少する一方で、DVなどの家庭内暴力や長時間ネット空間に滞在することでネット詐欺などの被害が増加することが予想される。行動規制の程度は、地域によって異なるため、犯罪被害調査などをうまく活用すれば、今回のパンデミックによって日常活動理論の妥当性を検証することも可能となる。*3
 都市封鎖は、短期的には街頭犯罪を減少させるかもしれない。しかし、社会的目標とそれを達成する手段との不均衡は社会に緊張状態(フラストレーション)を引き起こし、それが犯罪を増加させる原動力となると説明する緊張理論*4を当てはめると、長期的に見ると、都市封鎖による経済活動の停滞によって経済的に弱い立場の者ほど失業等の経済的困難を抱え込むことになり、これが社会や個人の中に緊張状態を生み出し犯罪が増加することになる。今回のパンデミックによる都市封鎖は、これらの犯罪学理論が現実の犯罪をどの程度説明できるのかを検証する貴重な機会になり得る。
 さらには警察などの規制当局に対する信頼の程度と人々の規制遵守のレベルとを比較することで、手続的公正(procedural justice)モデルを検証することもできる。*5 これは社会心理学のモデルであり、法学における適正手続(due process)とは異なる。手続的公正モデルとは、人々が警察などの法執行機関の公正さに信頼を置いているほど、その法執行の正当性が高まり、人々が方を遵守するというものである。これについても、欧州の各国における警察の公正さに対する信頼度と人々の行動規制の遵守の程度を自己申告式の社会調査によって測定し、その結果を比較することで、理論の妥当性を検証することができる。*6 最近、アメリカで警察官によるアフリカ系アメリカ人に対する差別的な対応をきっかけに、世界中で「Black Lives Matter」運動が広がっているが、手続的公正モデルという視点は、今後の警察改革に重要な示唆を与えることには間違いない。
 

アメリカの認知件数の変化
 アメリカのパンデミックやその対応と認知件数との関係については、犯罪学シンクタンクである刑事司法協会(Council on Criminal Justice)がコロナと刑事司法に関する委員会(the National Commision on COVID-19 and Criminal Justice)を立ち上げ、その活動の一環として元アメリカ犯罪学会会長のローゼンフェルド(Richard Rosenfeld)らが「アメリカの都市におけるパンデミック、社会不安と犯罪」*7という報告書にまとめているので、その結果を概観する。*8 この報告書では、2020年の1月から6月までの期間(月別統計)、11罪種について、27都市(平均人口120万人)の警察統計を分析している。
 全体的な傾向としてパンデミックの時期には財産犯と薬物犯の件数が大きく減少している。2月から6月にかけて住居侵入盗(空巣)が20%減少し、3月から6月にかけて窃盗が17%、薬物犯が57%減少し、これらは外出禁止等の措置が採られていた期間と連動している。ローゼンフェルドらは外出制限によって不在住居が減少しただけでなく、商店が閉まることで万引の機会が減少したことが影響したと分析している。窃盗犯の中では、事務所荒らしが例外で、5月末の1週間に200%増加している。調査対象となったすべての都市において同じ傾向が見られ、都市封鎖によって商店等が休業し、無人状態にあったからという理由だけでなく、増加が特定の週に集中していることから、ミネアポリスで発生した警察官による黒人男性フロイド(George Floyd)氏殺害事件に対する抗議活動に伴う器物損壊や略奪などと連動して発生している可能性が指摘されている。また、過去3年間減少傾向であった強盗も3月末から増加に転じ6月にかけて27%増している。
 アメリカにおける暴力犯罪は、前年度までの傾向と比較して、殺人や武器を使ったり障害を負わせたりする重大な暴力事件(Aggravated assaults)が5月末から6月にかけて35%増加している。同じように、殺人についても37%増加している。ローゼンフェルドらは、(手続的公正モデルの観点から)背景にフロイド氏殺害事件による警察に対する信頼失墜があると分析している。特にシカゴ、フィラデルフィア、ミルウォーキーなどで5月下旬から6月にかけて殺人が増加傾向にあった。都市封鎖によって増加が予想されていたDV(家庭内暴力)については13都市において増加傾向が認められるが、DVは前年以前から増加傾向にあり、前年の増加と比較して統計的に有意といえるほどの増加は認められていない。薬物犯罪については、そもそも被害者がいない犯罪であるが、外出規制による路上での密売の機会の減少や警察による職務質問の強化だけでなく、警察活動自体が薬物取締り以外の活動へとシフトされた結果、摘発数が減少した影響も考慮しなくてはならない。

日本の認知件数の変化
 次に日本の認知件数の状況をみてみよう。日本では月別の認知件数は一般公開されていないため本稿では政府統計ポータルサイト「e-Stat」から入手可能な2020年上半期(1月〜6月)の犯罪統計資料*9を使用する。この犯罪統計資料は、罪種別に前年(2019年)同期からの増減も掲載されていることから、ローゼンフェルドらの報告と同様に、罪種別にその増減傾向の変化をみることでパンデミックによる緊急事態宣言や外出等の自粛要請の影響を検討する。(2020年上半期犯罪統計資料によると)日本でもアメリカと同様に、侵入盗・乗り物盗・非侵入盗を中心に窃盗系の犯罪の認知件数が、2019年と2020年の同時期(1月〜6月)とを比較すると、それぞれ12.5%、22.2%、16.2%と大きく減少している。日本の認知件数は2002年以降主要犯罪のほとんどにおいて減少しているが、(犯罪統計の年間資料*10によると)2018年から2019年にかけての1年間の認知件数の減少率が、それぞれ7.9%、10.0%、7.7%であり、今年上半期の減少率のほうが2倍程度大きいことがわかる。アメリカと異なり事務所荒らしについても14.2%減少するなど休業により不在となっている店舗等への侵入盗についても減少傾向が続いている。
 暴行と傷害といった粗暴犯の認知件数についても、(警察に対する信頼が揺らいでいる)アメリカとは異なり、2019年と2020年の同時期(1月〜6月)とで、それぞれ9.7%、10.9%と減少している。2018年から2019年にかけての減少率が、それぞれ3.5%、5.9%であったことと比較すると、窃盗犯と同じように今年の上半期の減少率のほうが大きい。
 凶悪犯罪に分類される殺人と強制性交についても2018年から2019年にかけては、それぞれ3.8%、7.5%増加していたにもかかわらず、2019年と2020年の同時期(1月〜6月)とで比較すると、それぞれ7.4%、3.9%の減少に転じている。強盗については、やや異なる傾向が見られる。減少傾向は2018年から続いているものの、2018年から2019年にかけての1年間に15.4%減少していたものが、2019年と2020年の同時期(1月〜6月)とで2.1%の減少率にとどまっている。今年の上半期、つまりパンデミックの時期には、他のほとんどの犯罪の認知件数が減少している中で、強盗については減少率の低下が顕著であり、その検挙人員を年齢層別にみると、絶対数は多くないものの少年と20代の若年成人の強盗が、前年同期と比較してそれぞれ少年が66人増加して177人、20代が20人増加して243人となっているなど若年者による強盗の増加が強盗認知件数の減少率を低下させている可能性がある。
 アメリカと日本との認知件数の変化を時系列にみるとパンデミックによる都市封鎖、つまり外出等の制限が短期的には犯罪の認知件数の低下につながっている可能性がうかがわれる。ローゼンフェルドらの報告書にもあるが、環境犯罪学(特に日常行動理論)が予想するように、外出する機会が減れば、万引きする機会も、すり等の他人との接触による犯罪被害に長くなれば空巣に入られる機会も減るはずである。日本ではほとんどの主要犯罪において認知件数が減少しているのに対してアメリカでは、殺人や重大な暴力犯罪が増加しているが、これは、ローゼンフェルドらの報告書でも指摘されていたように、アメリカの場合、ミネアポリスで発生したフロイド氏の殺害事件が全米において警察の黒人差別に対する反対運動を引き起こし、それによって警察に対する信頼が失われた影響が大きいと考えられる。
 一方、日本では最近若者による強盗の増加や、特殊詐欺の受け子や出し子として検挙され少年院に収容される少年の増加など、コロナによってアルバイト等の収入源を失った若者が犯罪に加担する傾向が見られ、都市封鎖による経済活動の停滞による影響が出始めている。この現象は、経済的な欲求を満たす手段が不足することでフラストレーションが高まり、欲求を満たすための代替手段として犯罪が選択されるという緊張理論による説明が可能であり、今後、長期的に観察していく必要がある。

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【補注】
*1 https://campbellcollaboration.org/news-and-events/news/campbell-response-to-covid-19-pandemic.html
*2 Cohen, Lawrence E.; Felson, Marcus. "Social Change and Crime Rate Trends: A Routine Activity Approach". American Sociological Review. 44(4): 588-608, 1979.
*3 https://hfg.org/Violence%20and%20the%20Pandemic.pdf
*4 Merton, Robert. "Social Structure and Anomie". American Sociological Review. 3(5): 672-682, 1938.
*5 https://www.vrc.crim.cam.ac.uk/sites/www.vrc.crim.cam.ac.uk/files/pn_policing_the_pandemic.pdf
*6 筆者らの研究によってこの手続的公正モデルは日本のデータには当てはまりにくいことがわかっている。今回のパンデミックでは、日本の緊急事態宣言が、罰則を伴わない要請レベルの行動規制であったにもかかわらず多くの店舗が休業し、人々が外出を自粛しいたことが話題となったが、日本人の規制遵守には手続的公正とは異なる力が作用しているように思われる(津島昌弘=浜井浩一「手続き的公正(プロシーデュアル・ジャスティス)――信頼される刑事司法とは?」 浜井浩一編『犯罪をどう防ぐか』〔岩波書店、2017年、323〜342頁〕)。
*7 https://cdn.ymaws.com/counciloncj.org/resource/collection/D26974EF-0F75-4BDE-ADE7-86DA0741DC49/Impact_Report_-_Crime.pdf
*8 なお、この報告書では、前年度等の上半期データとも比較して「急激な構造変化」(structual breaks)を考慮した時系列分析を実施してパンデミックによって統計的に有意な変化が起こったかどうかを分析している。
*9 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00130001&tstat=000001142707&cycle=0&stat_infid=000031966714&tclass1val=0
*10 2019年および2018年の犯罪統計資料は年間の統計である。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/statistics.html


浜井 浩一教授(本学法学部・犯罪学研究センター 国際部門長)

浜井 浩一教授(本学法学部・犯罪学研究センター 国際部門長)


浜井 浩一(はまい こういち)
本学法学部教授・犯罪学研究センター 国際部門長・「政策評価」ユニット長、矯正・保護総合センター長
<プロフィール>
法務省時代に矯正機関などで勤務。法務総合研究所や国連地域間犯罪司法研究所(UNICRI)の研究員も務め、国内外の犯罪や刑事政策に精通。犯罪統計や科学的根拠に基づいて犯罪学を研究中。
関連記事:
>>【犯罪学Café Talk】浜井 浩一教授(本学法学部 /犯罪学研究センター国際部門長)


【特集ページ】新型コロナ現象について語る犯罪学者のフォーラム
https://sites.google.com/view/crimrc-covid19/


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